第五話[アリ]

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


 地面が揺れる。体から光を放ちどんどん膨らんでいく。光が収まるとそこには、黒く輝く10メートルの体。6本の足。2本の射角が生えたアリが現れる。


「キョォォォォォォォォオオオオオ!!」


 俺は雄叫びをあげる。目線が高い。足元には小さく見えるトドガロスがいた。



 お忘れの人もいるだろう。ここで改めて言わせてもらおう。アリは硬い皮膚を持ち、自分より重たい物を持ち上げる筋力を兼ね備えている。アリは、サイズ以外完成された生き物なのだ。そして、サイズを克服した俺は、最強だ!


 トドガロスが俺に向かって、氷の剣を飛ばしてくるが特にダメージを喰らう事が無かった。俺は大顎でトドガロスを捕まえた。


グシャリ。


 トドガロスが血飛沫を上げる。光となって弾けた。みんなから 少し遅れて歓声が上がる。


「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ」

「おぉぉぉぉぉおおおおお」

「うぉぉぉおおおおおおおお」


 両手を振り上げ喜び、泣いてる人もいた。俺は変身を解除して膝をつく。流石に疲れた。帰って横になりたい。


『レベルが《80》になりました。


スキル《アリンコ》の能力が追加されました。


「トドガロスって経験値いっぱい持ってたんだな。」


ステータスを確認する。


________________________


[名前]シャルロット・アルト

[年齢]15歳

[性別]男

[レベル]80


[スキル]《アリンコ》

『変身』……10メートルの羽付きアリになることができる。


『蟻人化』……変身した能力を引き継ぎ、蟻人になれる。


『フェロモン』…強いフェロモンを放ち、相手に幻影を見せる事ができる。new



『産卵』……働きアリを【5匹】まで産むことができる。


『ジョブチェンジ』……アリのジョブを変更できる。

[親爆弾アリ]………自爆することができる。

            一匹まで変更可能。

 [親毒アリ]………体に強烈な毒を持つ。

            一匹まで変更可能。

 [親軍隊アリ]……アリを沢山産む。

            一匹まで変更可能。


 [鑑定アリ] ……鑑定ができるアリ。


 [親農場アリ]……どこにでも農場を作る。

            一匹まで変更可能。


[変身時可能スキル]


『酸弾』…… 胃液を吐き出し弾にして

               放つ事ができる。


『速射酸弾』…… 酸弾を連射する。


『酸貫神槍』……強力な酸の槍を放つ。


[蟻人化]


『酸性雨』………強力な酸性の雨を降らせる


【奥義】〈捕食〉……100レベル使い相手を捕食する。

________________________


「フェロ……モン?なんだそれ?」


 試す相手もいないので調べるのは諦めよう。俺はステータス画面を閉じて、目の前に落ちてある宝箱をあける。中には一枚の羽が入っていた。


「キィ。鑑定頼む」


「キィ!!」


 キィがテイマーボックスから出て、羽をスキャンする。


【転移の羽】

 一度訪れた場所ならどこにでも転移できるようになる。


 よし!これで集合場所に移動できる。転移の羽をアイテムボックスに入れた。


「お疲れ。」


「見事な戦いだった。君の力だけで勝てたようなものだ。」


後ろを振り返るとティーファとナインが笑顔を向けて話しかけてきた。面と向かって言われるのは恥ずかしいな。謙遜しとくか。


「そんなことは……。」


 俺が喋ろうとするとティーファ達の後ろから拍手が聞こえてきた。皆楽しそうだ。


「お前凄いな!」

「カッコよかった。」

「弟子になりてぇー」


 皆が俺に拍手を送る。彼らは、勝利の喜びに浸っているようだ。その中で1人不機嫌な女性がいた。


「どうして、どうしてモンスターの姿になれるのですか?貴方は人間なんですか?人間化けたモンスターですか?」


 はぁ?こいつ何言ってるの?どう見ても人間だろ?


「スキルでアリになれる。」


「アリってなんですか!私はあんな巨大な生物見た事がありません。モンスターじゃないなら、なんでペルンダさんを助けてくれなかったのですか?貴方が最初からアリの姿になってトドガロスを倒していたら、ペルンダさんは死にませんでした。」


「辞めろ。ハナヒメ!!」


 ナインがハナヒメを止める。俺が早く倒していれば、ペルンダは死ななかった。流石に暴論すぎる。

戦闘に出れば、誰だって死ぬかもしれない。そのリスクを背負って俺たちは戦ってるんだ。


「でも……。」


「あれは誰も悪くない。油断したペルンダが悪いんだ」


 ハナヒメが泣き崩れる。みんなが静まり返る。ナインは、ハナヒメの頭を撫でる。


 そろそろ帰るか……。歓声のムードからお通夜のムードに変わる。俺は転移の羽を取り出して、人から見えない所に移動する。


「アルト、待って。」


「どうした。ティーファ。」


「私も一緒に地上に行く。」


「なっ!なんで知ってるんだ?」


「お母さんから聞いた。」


 どうやらあの親切なおばちゃんは、ティーファのお母さんだったらしい。辺りを見回して誰もいない方を確認する。良かった。他の人には、バレてないみたいだ。


「俺は、このダンジョンを制覇するつもりだ。終わった連れて行ってやるよ。」


 ティーファがにこりと笑う。


「いやだ!私も行く!」


「断る。」


「連れて行ってくれなきゃ。みんなに地上から来た事ばらす。」


「勝手にしろ。」


 むぅーとほっぺを膨らませるティーファを背に、転移の羽を使い一階層の入り口に戻るのであった。


>>>>>>>>>>>


「アルト遅かったね。」

「アルト様おかえりなさいませ。」


 目を開くと、そこにはユイとエルナがお茶会をしていた。無事でよかった。エルナとユイの元気そうな顔を見て、安心したのか眠気が襲ってくる。


「………ただいま。」


 俺は、はぁとため息を吐いて横になり、そのまま眠りにつくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る