第三話[ハナヒメ]

「私は【ハナヒメ】回復担当よ!ボスとの戦いの前にみんなに伝えたい事があるわ。階層ボスは、貴方達が考えてるほど優しいもので無いの。過半数がボスを目の前にして恐怖で動けなくなるわ。無駄に人を集めるより、少数精鋭の方がいいと思うの。」


ハナヒメと名乗った女性は、心配そうにペルンダを見ながら話した。


「それは、19階層のボスの放った【威圧】の事だね。」


 ハナヒメが頷く。


「威圧とは、ステータスが一定以上無いと、動けなくなるスキルの事です。19階層のボス戦の時、半数の討伐隊が動けなくて死んだわ。動けなくなるかも知れない人に背中は、預けられないわ。」


「お前は戦わねぇだろ。」

「回復担当は後ろにいるだけだろ。」

「怖いならお留守番してろよ。」

 

 観衆からハナヒメにブーイングが贈られる。ペルンダは、再び手を叩き観衆を静かにさせる。


「どうやって選ぶ?」


「ステータスを見せ合って。」


「ちょっと良いか?」


 一人のガタイの良いお兄さんが手を挙げた。男はステージに上がる。


「失礼、オレはナインだ。お嬢さんが言っているのはステータスを見せ合って、少数精鋭にするべきって事で良いんだよな?」


「うっうん。」


「お嬢さんは知らないかもだけど、探求者にとってスキルは生命線だ。同じパーティにも、教える事はしねぇ。俺たちが何が出来て、何が出来ないか。それが全てわかるのがステータスだ。それを無闇に公開するのは間違っている。」



「でっでも.......」


 ナインの大きな体にビビりながらも反論をしようとするハナヒメ。確かにステータスを公開したら、作戦を組みやすいだろう。けれどナインの言い分も分かる。討伐した後、ステータス公開した探求者が何かしら問題になる事は間違い無いだろう。闇討ちとかな。



「周りを見てくれ。探求者は、助けるだけが仕事じゃねぇーんだ。どこで恨みを買って居てもおかしく無いんだよ。」


「……ううっ。」


 ハナヒメが席に戻るとナインも席に戻った。


「よし。それじゃぁ初めて良いかな。ボスの情報だが、先程帰ってきた情報員が調べてくれた。それによると、ボスの名前は、[フリーズンバ・マ・トドガロス]それと[ガロス]と言う取り巻きがいる。 18層ボスは、氷で剣を作り襲ってくる。」


 観衆達がざわめき始める。


「わかった事はこれで全てだ。攻略会議はこれにて終了する。最後にアイテムの報酬だが、ゲットした人の物とする。素材は皆で均等に売って分ける。問題はあるか?」


 観衆達が上下に頷いた。問題がないと判断したペルンダは、終わりの合図をする。


「明日、朝11時に出発する。では解散。」


 観衆達が席を立ち上がり、各々動き出した。ペルンダに話しかける人。すぐに帰る人。ナインに謝る人。パーティを組んだフードの女の子は直ぐに帰る人だった。


 明日の立ち回りを聞く為、俺は、女の子を追っかける。アリーナ出る時ペルンダが俺のことを見ているような気がしたのは、気のせいだろうか?


>>>>>>>>>>>>>



「よく食べるんだな。」


 フードを被りながら皿に盛り付けられた料理を食べるティーファ。俺たちは今、酒場にいた。


「腹が減っては戦えない。」


 フォークを止めず、モグモグと口の中に料理が運ばれる。次々出される料理を平らげるのであった。食べ過ぎて喉に詰まらせたティーファに水を渡す。


「ありがとう、食べないの?」


不思議そうに見つめるティーファ。 店に入ったので取り敢えず頼んだ、唐揚げ定食に指を刺した。だめだよ。あげないよ。


「食べるよ。」


俺は唐揚げを口の中に運ぶと、またティーファが食べ始めた。


「明日の作戦はどうする?」


「私が突っ込む。貴方が守る。」


「………。」



 ティーファは、どうやら脳筋スタイルっぽいな。作戦と呼べるほどの物ではないが、シンプルで良いか。複雑に考えても、本番で失敗すると思うし。しかし、これだけは譲れない。


「俺が突っ込む。」


「私。」


「俺。」


「わ・た・し!!」


 どうしても突っ込みたいみたいだ。でもそれは俺も同じ気持ちなんだ。俺だって戦いたい。んー。


「順番って事でどうか?」


「わかった。私からね。」


 そうして作戦を決めて俺たちは、解散した。

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