第15話 [てへぺろりんこ?]

「マイナス45レベル。レベルがマイナスの時はデフレ(バットステータス)が常時付くのか。確かに少しだけ体が動かしにくい。」


  俺は腕をグルグル回す。いつもよりスピードが出なく。感覚としては、1/3くらいまで落ちている感覚だった。


「まぁ気にしても仕方ないか、追加されたアリ達の確認でもしよう。」


 俺は、手のひらに親農業アリの卵を出して孵化を待つ。卵はすぐに割れ、緑色の15センチのアリが出てきた。


「キュゥ?」


 親農業アリは俺を見つめて指示を待っている様子だった。4本足で立つアリ。2本の腕は、他のアリと比べて太かった。農業に適した体と言うことだろう。


「名前は……えぇーと……。」


 親農業アリの名前を考える。緑色だから……グリーンなんてどうだろうか。安直すぎるかな?



「お前に名を授ける。『グリーン』今日からお前はグリーンだ。」


 

 グリーンと名付けられた親農業アリは、嬉しそうに跳ね上がり。敬礼のポーズを取った。よかった。喜んで貰えたようだ。


 「呼び出したばかりだけど、テイマーボックスの中に入って貰ってもいいか?」


 グリーンは頭を下げて。腕輪の中に吸い込まれていった。土地を持った時農場でも始めよう。



「次は鑑定アリだ。この個体には、親がついていない。増やす事は出来なそうだ。」


 俺は先程と同じように卵を出した。産まれてきた鑑定アリは、紫色で10センチくらいの大きさだった。


 「キィー!!」


「………あれ?鑑定アリは、鳴き声が違うぞ。」


「キィー!!」



元気よく鳴く鑑定アリの頭を軽く撫でる。鑑定アリは、他のアリとは違い。大きく丸い目。まるでデフォルメされたイラストから出てきたような、可愛らしい見た目をしていた。


「お前の名前は………『キィ』だ。」


「キィー!!」


 キィーって鳴くからキィだ。キィは、嬉しいそうに飛び上がり敬礼をする。敬礼はアルファ達もやってたな。アリ達ブームなのだろうか?


「キィ。この2本の剣を鑑定してくれないか?」



 マッドマンプリンスが持っていた青く輝く剣と白く輝く剣を、キィの前に出した。強力な酸に溶かされなかった剣だ。名刀なのは間違えないだろう。


「キィー!!」


 キィは目から広がるビームを出して、2本の剣をスキャンする。5秒ほど時間が経ち、俺の目の前にスクリーンが現れた。 



________________________


【名前】名刀・夜月の剣。


  青く輝く剣。太古の昔、月の剣・月読命(ツクヨミ)によって月のカケラを使い作られた。

スキル[破壊不能耐性]をもち、壊れる事のない剣



【名前】名刀・太陽の剣。


  白く輝く剣。太古の昔、月の剣・月読命によって、太陽の神・天照大御神(あまてらすおおみかみ)の髪の毛と月のカケラを使い作られた。

スキル[破壊不能耐性]をもち、壊れる事のない剣


________________________


 神を斬って力を得たとされる剣は、神が作っていた。一体何があったんだ?考え込んでいる俺にキィが心配そうな目を向ける。


「キィー?」


「ごめんごめん。キィがいる事忘れてた。」


「キィー……。」


 キィを持ち上げ、テイマーボックスにしまう。エルナとユイも待ってるだろうし、向かいに行きますか!


 俺はゆっくり歩きながら、エルナ達を探すのだった。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


「おぉーーい!エルナ〜」


「お帰りなさいませ、アルト様。」


「おかえり、アルト」


「……ただいまって、オイ!!なんだそれは!?」


 エルナとユイは、テーブルを囲みケーキを美味しそうに食べていた。


「アルト様も食べますか?ほら、あ〜ん」


「食べるかぁぁあ。あほ!」


「ーーーハッ!!」


 エルナは何かに気づいたらしく声を上げる。イチゴタルトからパウンドケーキに入れ替えフォークに刺し、俺に向けた。


「あ〜ん?」


「あ〜んじゃねぇーよ!なにをひらめたんだよ!俺が!!戦ってる間!!なんでケーキ食べてるんだよぉぉぉお!!」


「………てへぺろりんこ?」


 エルナが舌を出してウインクする。なんだろうすごいムカつくわ。


「まぁ、そんなにかっかすんなや。アルトもケーキ食べようよ。」


 ユイが俺の肩を叩き声をかける。お前も同罪だからな。席についてバウンドケーキを食べる。あっ、美味しい。


「お前らなんでお茶会なんて開いてるんだ?」


「暇だったから。」

「ユイさんに美味しいケーキ食べようぜって誘われたからです。」


「あー!エルナせこい。私のせいにした。」

「事実です。」


 エルナさん。ユイのポンコツが移ってしまったのですね……。はぁ、とため息をついてケーキを口に運ぶ。


「今後の事だが、最難関ダンジョンには入らずエンドでレベルを上げたい。」


「どうしてですか?」


「マイナスレベルになった。最難関ダンジョンには、万全で行きたい。エンドでも追手は来ないと思うし、ダメか?」


「問題ありません。」

「な〜〜し!」


「しかしレベルがマイナスになる事なんてあるんだなぁ。」


 ユイが不思議そうに俺を見る。そのユイを呆れた様子でエルナが見ていた。


「スキルには、成長すると【奥義】を覚えます。【奥義】とは、レベルを使い発動させ強力な技を放ち、レベル足らない状態で発動するとマイナスになります。大体50レベル前後で覚えるとされて、またレベルがマイナス時は【奥義】は使えなくなり、デフレにかかります。」


「へぇーそうなんだぁ〜」


「ユイさん。冒険者初回サポートで習ったじゃ無いですか。」


「そうだったっけ?」


「そうです!!」


「………てへぺろりんこ?」


 エルナがユイの頭を強く叩いたのであった。


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