第10話 [王子現る]
「死んで後悔しろ。」
兵士達が剣を振り上げ、アルトに襲い掛かる。が、護衛の攻撃はアルトを通り抜け、剣は空を斬る。アルトのいた場所には大きなアリが現れた。
「後悔するのはお前達だ。」
一国の王子の護衛とのバトル。この国で優秀と判断された兵士達だろう。腕試しだ。緊迫した状態に俺は喜びを隠せなかった。ハズレスキルと呼ばれた俺のスキルで、お前らをぶっ倒す!!
「アルファ。現れよ!」
30センチのアルファと10センチの爆弾アリが3体が俺の後ろに現れる。
「腕を吹き飛ばせ!!」
「「「「キュ!!」」」」」
急に現れたアルファ達に戸惑う兵士達の腕に爆弾アリ達が纏わりつく。
バコンッ!!!
爆弾アリ達が爆発した。3人の兵士達の腕がなくなり、立つことも出来なくなった。アルファが吹き飛んだ足を食べると、お腹が大きく膨らみ六つの卵をお尻から出した。卵は直ぐに割れ、10センチのアリが現れる。
「バッ、、化け物だぁぁ!!」
「こんなの人が勝てるわけねぇ!!」
「逃げろぉぉお!!」
4人の兵士が、震える足で逃げ出した。クスナと呼ばれた兵士は、カメハ王子を自身の後ろへ退避させた。
「そんな、馬鹿な……。この国の精鋭部隊だぞ。」
「どうやら私たちは、怒らせてはいけない者を怒らせてしまった様ですね。」
生まれて初めて死を間近に感じたカメハは、酷く震えていた。上手く立つ事も出来ず、その場で座り込む。潰す前にちょっと探りを入れてみるか。
「それで王子様、どうして此処にきたのですか?」
アルトは爆弾アリで王子を囲み、笑いながら問いかけた。クスナは爆弾アリに剣を振り下ろすが、爆発され剣が粉々になる。
「今ならば不問にしてやる。そのアリを僕から遠ざけよ!」
「おいおい、いつまで命令できる立場だと勘違いしてるんだよ。」
王様の足元に、酸弾(アシッドボム)を放つ。床の木材が溶けて嫌な匂いを漂わせた。本気で放てば、店丸ごと溶かす威力があるが、そんな事をこの店でしてしまう訳には行かない。エルナのお気に入りだからな。威力を調整できるこのスキルを俺は重宝している。
「次は当てるぞ。」
王子の表情が恐怖で染まる。
「………。」
「カメハ王子お逃げください。私がこの場所を引き受けます!」
身を盾に王子を守る兵士。なんでこんなクズ王子を慕っているのか疑問が浮かぶ。他の兵士はもう逃げたぞ。この兵士は王子に弱みでも握られているのか?
「悪いけど、君たちは教えてくれるまで、逃がさないよ。」
「き、貴様……!」
クレハは、俺を強く睨む。
「ベータおいで。」
白く大きな体を持つアリが現れる。爆弾アリより体は細いが、初めて見た人物は白く輝くアリに不気味さを感じるだろう。
「ちなみに俺が嘘と判断したら殺すから。」
「なっ…… 理不尽だ!」
殺す気は無いが、いい脅しにはなるだろう。カメハはブルブルとクレハにしがみ付いていた。
「……冒険者ギルドのエルナに会いにきたのだ」
ボソリと呟くようにカメハは答える。
「ほぉー。エルナね、聞いた事あるよ。」
ここは知らないフリをしていた方が情報が引き出せそうだ。
「国王がエルナと言う女性を兵器として運営しようとしてる。その女性のスキル《痛撃》は、触れた相手に激痛を与える。」
「うんうん。それで?」
「《痛撃》はスキル保有者の血にも何倍もの効果が与えられるのだ。その血を触れただけで、肺が潰れる。そして、その血を兵器として運用し国王は、世界を統一しようとしている。」
「それで、お前は何しにきたの?」
話が大きすぎてついていけないや。それと、エルナそんなに危険なスキルだったの!もっと早く教えて欲しかったなぁ。話さなかったのも何か理由があるのだろう。エルナの方を見ると優雅にケーキを食べていた。エルナ……
「この国の女性は、私の物だ!女性の血を兵器にするなんて、国王でも許されん!この世の女性は幸せでは無ければいけない!男はどうでもいいがな!」
何と言うか、ツッコミどころが多すぎるな……
そんなに悪いやつでも無いのか?女好きなのは、間違えはなさそうだ。
「ハァ、ちなみにその冒険者はエルナは、お前が結婚を申し込んだ人だぞ。」
エルナが「なんで言うんですか」って顔で俺を睨む。エルナは更に新しくケーキを頼み食べていた。俺ばっかり苦労するのは良くない。一蓮托生ってやつだ。
「な、何だと!? 僕のお嫁さんにっ!」
「お断りします。」
断りと同時にクレハとカメハ王子に、弱酸弾を叩き込む。カメハ達の服が溶けて、大事な部分を手で隠す。
「次に俺達にちょっかいを出して見ろ。国ごと全て潰してやる。」
効果があるかわからないが一応釘を刺しておく。
カメハ達コクコクと頷いた。
戦いとも言えない戦闘が終わり、カメハ達が逃げ出した。
「かっけぇぇぇーー!」
「ナイト様よ!」
「私も狙っちゃおっかしら」
お客さんから歓声が沸き上がる。
「動いたら小腹すいちゃった。何か食べに行かないか?」
「私もお腹減りました。」
エルナは、ずっと食べていただろ。俺達は店を出てデートを再開するのであった。
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