第6話 [Bランク決闘]
「決闘だ!!弱い奴に、エルナは任せておかない」
「決闘?」
「僕が勝てばエルナを返してもらう。」
ユイは、好戦的な目で俺を見る。
Bランクのリーダーだ。自分がどれくらいの強くなったか気になるし受けてもいいと思う。
俺はエルナに確認をとる。
「構いませんよ。ユイ団長に勝ち目が万が一も無いと思いますし。」
俺とエルナとユイ、そしてギルバートの四人は、ギルドの地下にある練習場に集まった。
「ルールの確認だ。なんでもあり、敗北条件は相手の降参。又は戦闘不能になる事。殺しは、禁止だ。」
アルトはアリに変身するように、ユイが大剣を前に突き出すように構える。
「それでは試合開始っ!」
「―――!?」
開始の合図と共に地面に穴を掘って潜り、ユイの視界から消えた。次の瞬間、背後から弱酸性のボムがユイを襲う。アルトによるアシッドボム弱酸性バージョンだ。ユイの服が溶けていく。ドンドン溶けていく服を抑えるユイに、俺は更にアシッドボムを打ち込こんだ。
「変態ッ!最低ッ!」
ユイは動く事が出来ずその場に座り込む。
「……アルト様。流石に鬼畜です。」
エルナは自身の上着をユイに向かって投げた。服を着てユイが怒鳴り出した。
「この変態鬼畜野郎!!人前で脱がせて楽しむなんて、」
「誤解だよ!これ以外弱い技がないの!!」
アルトは顔にユイへの侵害の意を貼り付ける。
「お前……殺す!!」
ユイは大剣を振り上げ突進してくる。そのスピードは遅くお世辞にもBランクリーダーの攻撃とは思えなかった。アルトは大剣と衝突する。
「キャーーーッ!!アルト様ッ!!」
エルナの声が練習場に響く。
わざと大剣を受けたアルトは、無傷。ユイの大剣は折れてしまった。
アリという生物は、攻守トップレベルのほぼ完成された生物なのだ。皮膚は硬く。自身より重い物体を持つ事ができる。唯一の弱点は、サイズが小さい事。それを克服したアルトはまさに、完成された生物なのである。
アルトはユイにタックルを喰らわす。
「ずるい……。いいスキルが手に入っただけで、調子に乗って。」
「調子には乗ってないけど、いいスキルだと思うよ。」
ユイは、折れた大剣を構える。ボロボロになっても崩れない精神に賞賛を送る。折れて30センチほどしかないの大剣。ユイは俺に斬りかかる。
「僕から、もう何も奪わせない!!」
大剣は俺に届く事は無く、その場で倒れてしまった。
「勝者…… アルト!」
ギルバートの高らかな宣言。
(なんだったんだ。あの執念。鬼気迫る物を感じた。)
「流石です!アルト様!」
エルナがウキウキで近づいてくる。
「エルナ。ユイって奴はどんな奴なんだ?」
「ユイ団長は、正義感が強く意見を曲げない人です。正義感が強くて貴族の中でも嫌われていた、と聞きました。」
賄賂や隠蔽が多く存在する貴族の中では、正義感など無い方がいい。
「あいつもあいつで苦労してんだな。」
俺は はぁ、とため息を吐いて練習場を出た。
-------ギルド・医療室
同じくため息を吐く女性が一人。ユイだ。
アルトとの決闘に敗れ、医療室に運ばれていた。
「なんであんな無茶するの!アルトさんは元Aランクパーティよ。あなたが戦って勝てる訳ないじゃ無い。」
紫色の長いストレート。目は黒く、口元にはホクロがあり白衣を着ているセクシー女性。
ギルド職員・医療担当 マジョリー・ミーシャ先生である。
「エルナ取られた……。」
「エルナさんはあなたの物じゃありません。大事ならちゃんと守って上げなきゃ。ユイさんのパーティを抜けたのも、他のメンバーが追い出したのが原因ですし。」
ミーシャは、ユイに呆れた顔を向ける。
「わかってるよ〜。でも気絶してる間に居なくなってたんだって。対処不可能だよ………。」
「それでも、リーダーの責任です。」
「えぇぇ。」
よく倒れてやってくるミーシャにとってはユイは妹のようで。
ユイもミーシャの事を姉のように思っていた。
「ほらっ、元気出して。ユイの好きなマカロン奢ってあげるわ。」
「やったぁ!」
ユイとミーシャは、レストランに向かうのであった。
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それでは長くなりましたが、最後までご読みいただきありがとうございました。
ばいばい!
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