第5話 [やっと見つけた居場所]
新たに強化されたスキルを試しに、ファンブルボアを探す。しばらくして3匹のファンブルボアを発見した。
「変身っと。エルナ。俺が2匹を受け持つから、もう片方を頼む。試したい事があるんだ。」
「わかりました。」
エルナはコクコク頷く。スキル《激痛》は、単体向けだ。複数人相手をするのは難しいだろう。
変身については、30cmの体の大きさなら出来ることも増える。変身にはタイムリミットがあるが、そんなに時間がかからないだろう。ファンブルボア相手ならなんとかなる。
「酸弾!」(アシッドボム)
アリに変身した時に使えるスキル。
小さな酸の塊を発生させ、目標を攻撃する魔法だ。
威力は低いが、低コストで当たれば相手の皮膚を溶かす攻撃を放つことができる。使い勝手が良い。
アシッドボムはファンブルボアを溶かし、一撃で葬った。
「ベータ・アルファ・ガンマ、後は任せた。」
アリ達はファンブルボアを囲むように陣を取り、一斉に攻撃を仕掛ける。相手の抵抗も虚しくクビを噛みつかれ、倒れてしまった。
「エルナ。そっちは終わったか?」
エルナの隣には、倒れたファンブルボアがいた。
「終わりました。二匹も瞬殺できるなんて、すごいです。アルト様。」
キラキラした目で俺を見る。
「アリ達がいたからな。みんなのおかげさ。」
モンスターの死骸をアイテムボックスに入れて、俺たち二人はギルドに帰還する事にした。
ギルバートに依頼の報告を終え、金貨4枚を貰い二人で分ける。「こんなにもらえません。」なんて言ってたが、俺にも男のメンツがある。
女性に貢がせてるなんて噂がたったら、溜まった者じゃ無い。なかば強引にエルナに金貨2枚を渡しす。
「今日はありがとうございました。」
エルナが頭を下げる。
「なぁエルナ。今ソロなんだろ?」
「はい。ソロで活動してます。」
俺もこのままソロでやっていても、いつかは限界が来るだろう。信頼できる仲間は多い方がいい。
「これからもそばに居てくれないか?」
「………そっ。それって。」
エルナは目を丸くする。
「今は大丈夫だけど。ダンジョンのボスに一人じゃ対処しきれないこともあると思う。
エルナが良かったら、これからも一緒にパーティを組みたいんだ。」
俺がそう言った瞬間、エルナはガッカリした様子だった。短くため息を吐いて、俺に目線を向ける。
嫌だったのかな?。断られても悲しく無いよ。全然悲しくないよ。……たぶん。
「もちろん、こちらこそよろしくお願いします。」
「無理してパーティ組まなくてもいいんだよ?」
「アルト様が誘ってくれなければ、私から言おうと思ってました。」
「本当?」
「本当です。アルト様を断る訳ないじゃ無いですか!」
俺の腕を掴むエルナ。とにかく、信頼できる仲間ができた事を喜ぼう。
「エルナ……。」
これからの予定を話し合っている時。俺たちの席に近づいてくる人物がいた。
真っ赤に長いショートヘア。紅茶のような透き通った目に。大剣を持つ女性。
「ユイ団長!!」
「勝手に僕が居ない時に、パーティ抜けるなんて酷いじゃ無いか。戻ってこないか?」
エルナの元パーティリーダーか。今更、俺から引き抜こうなんて許さんぞ。
「申し訳ございません。もう別のパーティに入ったので、戻る気はありません。」
エルナは、ユイの誘いを断った。
「おいおい、勝手に抜けておいて、その態度は無いだろ。」
「私は、抜けたんじゃ無く。追放されたんです。」
「そう言うなって……。マカモもカセヌも反省してる。後で謝るように言っておく。戻っておいで?」
「結構です。」
エルナはそう言うと、俺の腕を引っ張りギルドを出ようとする。
「わかった。その男もパーティに入れてやる。
僕らはB級パーティだ。特別な依頼も受けられる。給料もあがる。いい条件だろ?」
俺、元Aランクパーティなんだけど。B級パーティってこんなに弱そうなんだ。覇気も感じられないし。
「悪いけど、興味ない。バイバイ」
俺達は、ギルドを出る。すると、ユイが追っかけてきた。
「僕は、貴族だぞ! 権力を振り回すのは好きじゃ無いんだけどな。パーティに入らなきゃこの街から追い出すぞ!」
貴族だと……。貴族って事は、国王の犬って事だよな。よし決めた。
「ふーん。それで?だからなに?権力を振り回すのが好きじゃ無いとか言って、思い通りにならなければ、思いっきり振り回してるじゃん。パーティ内の管理もできてないのに、街を管理してるとか街の人可哀想。無能は、無能らしくお母さんにでも甘えとけよ。カスが!!」
俺は国王が大っ嫌いなのだ。
権力を振り回す奴らは、全員消えてしまえ。
ユイは両眼をウルウルさせながら、悔しそうに歯を食いしばる。
「……そこまで言わなくたっていいじゃ無いか!
僕だって、倒れてる時に何か起きたら対処できる訳ないじゃ無いか!気付いたらエルナがいなくなってたの!パーティはバラバラだし、頑張ってもうまくいかないしエルナは楽しそうだしずるい!!」
ユイそう言って、俺を殴ろうとするが、拳を受け止めた。
「なんか、ごめんな。」
この後、ユイがが大事件を起こすのだが
それはまだ先のお話。
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