第15話

 チェントロの町を背にして、ゴブリンの大群とアルト達は向き合った。

「自分から行くよ、アルト君」

「ミキさん!!」

 ミキはそう言うとゴブリンの大群の中に走って行った。

 ミキの両手に握られたダガーが、性格にゴブリン達の急所を突いていく。


「僕達も行こう!!」

「ウン」

「ぷるん!!」

 アルトとすらすけ、すらみもゴブリン達の中に入り、戦いを始めた。

「すらすけ、強化!!」


「ぷるん]

 すらすけが氷の矢を放つ。

 ゴブリン達の頭や肩に、氷の矢が突き刺さりゴブリン達は倒れた。

「すらみ、僕を強化して!!」

「アルト、ソクド、アガレ!! チカラ、タカマレ!!」

 アルトは炎の剣を大きく振った。すると、剣から炎が巻き上がり、ゴブリン達をなぎ払った。


「ミキさん、大丈夫ですか!?」

「心配なら要らないよ、アルト君」

 ミキは既に倒したゴブリン達を横目に、アルト達と合流して残っていたゴブリンを一掃した。

「アルト君、戦えるじゃないか」

「ミキさん、僕はすらみがいて、すらすけがいるから戦えるんです」

「……君は何のために戦っているんだい?」


「えっと……目の前に困ってる人が居たら助けたいだけです」

「そうか。シンプルだね」

 ミキはそう言うと、ふうとため息をついた。

「はじめは父さんを助けるためにエリクサーを求めて旅立ったんですけどね」

 アルトが言うと、ミキは目を見開いた。

「エリクサー? アルト君はこれが欲しいのかい?」

 ミキはリュックからエリクサーを取り出した。


「え!? ミキさん、持っているんですか?」

「ああ。馬鹿なスライムマスターの置き土産さ」

 ミキは視線を地面に落とした。

「アルト君……スライムマスターを辞めるなら、これをあげるよ?」

 アルトは一瞬戸惑ったが、静かに首を振った。

「それなら、いりません。すらすけとすらみがいれば、僕も自分でエリクサーを手に入れられると思います」


 ミキは苦笑した。

「そんなにスライム達が好きなのかい?」

「初めて出来た仲間ですから。ね、すらすけ、すらみ」

 アルトの言葉に、すらすけとすらみは体を揺らした。

「ぷるん」

「アルト……ウン……」


「分かった。それなら、エリクサーをあげよう。父親を助けてくると良い」

「ミキさん、何故急に優しくしてくれるんですか?」

「……気まぐれさ」

 アルトはエリクサーを受け取った。


「自分の父親は出来損ないのスライムマスターで、町を破壊する原因を作ったからね……」

「え!?」

 ミキは続けて言った。

「自分はその責任を取るために、モンスター達を凶暴化させているダークキングというドラゴンを倒すことが目標なんだ」

「……ダークキング……初めて聞きました」

 すらみが言葉を挟んだ。

「ムカシハ、モンスター、オトナシカッタ」


「ミキさん、僕も父さんを直したら、ダークキングを倒すために戦います」

 アルトが言うと、ミキは冷めた目でアルトを見つめた。

「アルトくん……無茶だよ……」

 アルトはミキの目を見つめて言った。

「ミキさん、一緒に行きませんか?」

「自分はつるむのが嫌いでね。一人で行くよ」

「……ミキさん」

 ミキは一人で北の方に歩いて行った。


「アルト、イエ、カエル?」

「うん。父さんを直したら、ダークキングを倒しに行こう」

「ウン」

「ぷるん」


 アルト達は新しい旅の目標を見つけ、心を新たにした。

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無能で弱すぎるとパーティーを追い出された僕は、スライムマスターのスキルを手に入れ、はぐれスライムと共に頂点を目指します 茜カナコ @akanekanako

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