第27話 悪魔の伝言
本日2話投稿の2話目です。
レビューコメント頂きました方へ
返信機能がない為、大変失礼ながら前書きにてお礼申し上げます。
ハッピーうれピーよろピくねー
★★★★★★
見渡す限りの草原。
少し先には赤い花が咲いているのであろう、色合いが違っている。
付近に人工物も無く、まさに大自然といった風景。
そこで、バティン達は遅めの昼食を取っていた。
「そういえば、バティンさんって普通に食事するんですね」
「なんだ娘。どういう意味だ?」
リグの実を齧りながらバティンはクレアに聞き返す。
「悪魔の食事って人の魂とかそういうのだと思ってました」
「強ち間違いではない。そもそも悪魔は食事を必要とせぬ、魔力によって生命を維持するのでな」
「はぇ〜そうなんですね」
「それは私も知らなかったな。私もクレア殿のように人の魂や負の感情をエネルギーとしていると思っていた」
「そういう悪魔もいるがな、大抵の悪魔は魔力が糧である」
バティンは次のリグの実に手を伸ばす。
本日4つ目である。
「えっと…じゃあ何でバティンさんは食事取るんですか?」
「食事を取れぬ訳でもない。それに人間界の食事は美味な物が多く、我は興味が尽きぬ」
クレアは新しいバティンの情報を感心しながら聞いていた。
人にも色々な人がいる様に、悪魔にも色々いるんだなぁ。と納得した。
そんな朗らかな会話をしながらゆっくりとレプラを待っていると、一頭の馬に乗った人影がこちらに近付いてくる。レプラである。
それを見て、レミエルの顔色が変わる。
「バティン殿」
「恐らく用があるのは我であろう。ならば、我が出るのが道理よ」
クレアに聞こえないように小声で話す2人。
すぐに馬に乗ったレプラが3人の元に到着した。
「すまない、待たせた」
「良い。エルフよ、先に2人をこの先まで案内してやれ。我は後から行く」
「え? バティンさん、何か用事があるんですか?」
「娘よ。お前には気配りが足らぬぞ」
そう言われたクレアは首を捻って考える。
そして、思い当たった時に顔を赤くしてしまった。
「す、すみません…! じゃ、じゃあ先に行ってますね」
「すぐに追いつく故、行くが良い」
クレアは小走りでバティンから離れる。その時「悪魔もトイレするんだ…」と呟いていたので上手く誤魔化せたようだった。
レミエルがクレアを抱えて飛び、レプラが馬で走り去った後、バティンはその場で佇んでいた。
3人の姿が見えなくなった頃、ようやく動き出す。
「頃合いか」
バティン達を追っていた影、彼らは暗殺集団に属する者だった。
コロセスの国では知らぬ者など居ないという暗殺集団『
その名の通り、幽鬼の様に現れ消えていく幻影のような存在。
彼らは、流石に空を飛ぶバティンを追うのは難しかった為、レプラを追って来たのであった。
エルフの感知さえ潜り抜ける程の手練れ。
だが、バティンには(レミエルもだが)気取られていた。それが彼らの誤算。
「そこの2人。我に何用だ?」
彼らは答えない。
まさか気付かれているとは思わなかったので驚きから答えられないというのと、ブラフの可能性を考慮している。
よしんば追われているのに気付いたとしても、絶対に場所までは察知出来ていない。そう2人は思っていた。
「答えぬか、では……」
影達は身構える、何をする気だ?
バティンの動きから目を逸らさずにいると。
「無理にでも聞き出すとしよう」
背後から聞こえた声に心臓が止まりそうになる。
馬鹿な! あそこにいたはず…!?
影が先程までバティンの立っていた場所を見ると、そこには緑色の草が風に揺れているだけだった。
「向こうにいた奴から事情は抜き出した。用は済んだので既に始末したぞ。貴様には伝言役になってもらおう」
汗が止まらない。心臓の鼓動が煩い。呼吸が上手く出来ない。手足は痺れて動かない。
明確な死を感じ取っていた。
「それは隠伏の魔道具のようだな。心配せずともしっかりと効力は発揮しておる」
影は気配を極限まで無くす修行を積んだ。その上で姿を視覚から消すことの出来る魔道具を付けている。
そのため場所までは割れていないと思っていたのだが、この悪魔は何故分かったのか。
「何故察知出来たかを説明する気も時間も無い。さて、先程言うたように貴様は我の伝言を持って貴様の組織の上役に報告してもらおう」
影は心を読んだかのように言葉を放つバティンに更なる恐怖を抱くが、続く言葉に安堵する。
伝言を持ち帰る、すなわち自分はまだ生きて行けるのだと。だが、そんな希望はすぐに絶望に変わる。
「伝言は『こちらから仕掛ける事は無い。無駄な事はせず大人しくしていろ』である。分かったか?」
影は涙と鼻水を垂れ流しながらバティンの言葉に何度も頷く。
早く、一刻も早く、この場から離れたい一心であった。
「それと貴様には伝言を伝えた後に死ぬ呪いをかけた。なに、一瞬であるから痛みは感じぬだろう。だが、伝言を伝えずに逃げると死よりも辛いぞ? 猶予は1日である。では行け」
影はバティンの言葉に絶望する。
死ぬ呪い?死よりも辛い?なんで…?生きて帰れるんじゃ…?
影は夢遊のようにフラフラと立ち上がり歩き出す。
手を出す相手を間違えた。だがその考えは既に遅かった。
―――
「それで、1人死んでお前は伝言を持って帰ってきたと」
「は、はい!」
アペプ侯爵の屋敷の中。
バティン達を追わせていた部下が戻ってきたので事情を聞いていた。
どうやったかは分からないが、こちらの情報は知られた様子。
「高い気配察知能力と、透明化の魔道具を見破る目か……侯爵、どうやらそこらに居る様な悪魔とは訳が違うらしい」
「な、何だと!? こっちは高い金を払ってるんだ! 貴様らは依頼は100%の成功率では無かったのか!?」
「落ち着いて貰いたいな。我々の予想よりも上だったというだけのこと。他にも手はある」
「ほ、本当だろうな!? 失敗したら承知せんぞっ!!」
唾を飛ばして激昂するアペプ侯爵を暗殺者の上役は冷めた目で見る。
(ふん、クズが……しかしコイツらでも察知されたとなると……直接的な暗殺は難しいな。ならば周りから崩すか……)
「まぁいい。それで、持ち帰った悪魔の伝言とやらを報告してもらおうか」
「は、はい…奴が言うには『こちらから仕掛ける事は無い。無駄な事はせず大人しくしていろ』と……ギュゥェ!!」
言い終わると、部下が苦しみ出す。
不自然に身体が膨れ上がったと思ったら、文字通り爆発した。
血と臓物を撒き散らし、飛び散った部下。しかし、返り血を浴びても上役の男は動じない。
「ふむ、後始末も完璧か……。これは警告でしょうな、これ以上関わるならお前らもこうなる。と」
「ヒィィィィ!!!」
任務に失敗したら死ぬ。それは暗殺を生業にしている者なら当然だ。だが、このような悲惨な死に方は珍しくもあり恐ろしい。
(今回の獲物は一筋縄ではいかんな)
悪魔と暗殺者の抗争が始まった瞬間であった。
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