第13話 片想いの片想い
「…ん…?君…祐一君!」
「え?あぁ…ごめん。ちょっとぼーっとしちゃて…ほっぺ、大丈夫?さっき、叩かれてたよね?」
「あ、うん。私は大丈夫。でも…あの子達…いやな感じ。祐一君のこと何も知らないくせに」
花弥は、憎しみに溢れた目で、走り去った三人の残像を睨んだ。
「ねぇ、祐一君、なんか痩せたよね?くまもひどいよ?どうしたの?」
この時、花弥は初めて祐一変化に気が付いた。
「花弥ちゃん」
「ん?どうかした?」
上手く動かない口に鞭を打って、平静を装って続けた。
「花弥ちゃん、…僕はどんな想いをさせられようと、笑って許してあげられるような人間に…僕はなりたいな…あ…ある程度の話だけどさ…」
「!」
その言葉に、花弥は一瞬で心が痛みだした。
思い返せば、この半年、祐一に出会ってから、良いことばかり続くし、自分が嫌な目にあえばいいと思った人には、まるで誰かがそれを自分の代わりに、残酷に言えば、刑を執行してくれている…と言う気さえしていた。
それを気持ちよく、喜んでしまうほどの時もあった。
そんな花弥に、今の祐一は言葉は心に刺さった。
「そう…だよね…」
「理不尽な事とかもあるし、みんなみんなが出来る事じゃないけど、僕も実行できているわけじゃないから、偉そうに言えないけど、僕は、どんな時も笑ってる花弥ちゃんが好きだよ」
「祐一君…」
・・・・・・・・・。
「帰ろっか…」
「今の子達にまた何かされたら困るし。駅まで送るよ」
フラッとしながら、祐一は花弥の手を取り、歩き出した。
(!)
花弥は思わず手を離しそうになった。
花弥の手をつかんだ祐一の手は、氷水の中にずっと手を浸していたんじゃないか?と思える程冷たかった。
「祐一君、もうここで良いよ。祐一君の乗る駅、ここでしょ?私もう二つ先だから」
「うん。じゃあここで。気を付けてね、花弥ちゃん」
「うん。じゃあね。ありがとう…」
そう言うと、二人は別々に歩き出した。
「祐一君…」
祐一と離れて、しばらく振り返り、祐一後ろ姿を目で追いながら、花弥は、胸は苦しく、心は痛く、手は冷たく、まるで、氷の海に落とされたような感覚に包まれていた。
そして、ある人物の事を思い浮かべていた。
「
花弥の、片想いの相手だ―…。
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