第5話 偶然?必然?
一方、花弥は、同中の
「ねぇ、花弥、
凛が、自己紹介の時の“嫌いなものは元カレです”と言う紹介で、初めて二人が別れた事を知り、花弥に真相を訪ねた。
「あ…うん。なんか高校違うとだめだとか、よくわかんない理由でフラれた」
「冷たいね、三島」
寛子が花弥に同情した。
「ありがとう。二人とも。でももう平気だから。気にしな…い…で…」
語尾が途切れ途切れになった花弥が見た先に二人が目をやると、真正面に、花弥の元カレの
「花弥…」
「慎吾君…」
しばらく、呆然としていた花弥だったが、すぐに、隣の女の子に気が付いた。
「えー!この子が慎吾の元カノ?へー、なんか子供っぽい人だね」
「え?」
そう言ったのは、慎吾の横にどんと構えた奇麗な人だった。
「慎吾君…この人もしかして…」
“言わないで”そう言いたげに、でも、真実を知りたくもある…そんな表情で花弥は慎吾に尋ねた。
「あぁ…、俺の今の彼女。
背の高い慎吾に合わせるかのように、ローファー高さを抜いても、高身長。
奥二重の花弥とは違い、くっきりした二重。
まつげも長いし、髪だって長いし、本当に、同じ人が選んだのか?と言いたくなるほど、花弥とその子は全く違う大部だった。
その事実を受け止められないままで戸惑う花弥をケラケラ笑いながら、
「花弥さんだっけ?実はー、あたしたち中学から付き合ってたんだよねぇ。残念!!あはははは!」
「!?」
『もう白旗を上げるから、これ以上は言わないで』
『どっか行って』
『いなくなって』
『二度と会いたくない』
花弥がその場に顔を覆い、しゃがんで泣き出してしまった。
それでも、茉莉は容赦なく続ける。
「ずっと相談されてたんだよねぇ。うまく別れ話思いつかないって。あなたは知らなかっただろうけど、あなたは知らなかっただろうけど、あなたが慎吾に好きでいてもらえてた時間は本当に少しだから。後の方は、面倒くさがってたよ、慎吾」
その瞬間、花弥の中で黒い雫が心の中、落ちて、そして、ものすごいスピードで熱くなって、頭が破裂するかのような怒りが襲ってきた。
こんな風に泣きじゃくる花弥を、置き去りして、二人はさよならも言わず花弥の真横を通り過ぎた。
「花弥…?大丈夫?」
「花弥」
寛子も凛も、これほど酷く笑われ、傷ついた花弥をどう慰めればいいのか分からず、しどろもどろになってしまった。
「…のに…」
小さな声で、花弥が何かつぶやいた。
「傷だらけに…なればいいのに。あんな女…」
「花弥…」
寛子と凛が心配そうに声をかけようとしたその直後…、
「キャー――――――――――――――!!!!」
三人の後ろで、悲鳴と爆音が響いた。
慌てて振り返ると、エアバックの出た軽自動車の下に、茉莉が目を覆いたくなるほどの姿で、茉莉が車の下で巻き込まれていた。
「茉莉!茉莉!」
しきりに名前を呼ぶ慎吾をよそに、茉莉はピクリとも動かなかった。
「きゅ、救急車呼ばなきゃ!」
我に返った花弥がスマホで救急車を呼んだ。
「ん?なんだ?」
「あ?どうした?裕」
「あ、いや、なんか左の背中にむずがゆくて…」
そう言いかけて、また背中の異変に気が付いた。
グッと重くなったのだ。
左の肩甲骨のあたりだけが。
(まさか!)
祐一は、朝、片方だけしかなかった羽根が、もう片方にも生えたのではないかと、焦った。
(僕…マジで死ぬのかな?)
「ちょっと公衆トイレ行ってくる!守、待ってて」
「おう…」
祐一の慌てぶりに、少々違和感はかんじたが、守はそのまま祐一の鞄を預かり、公園のベンチに腰掛けた。
必死の駆け足でトイレに入り、鏡で自分の後ろ姿見て、祐一は頭から血の気が引いていくのが解った。
祐一の左の背中には、黒い羽根が、一本、生えていたのだ。
「ウワ――――――――――――――――――!!!」
鏡に映ったそれを見た瞬間それを見た瞬間、裕一は腰を抜かし、トイレの床にへたり込んだ。
その声に驚いた守が、
「裕?どうし…」
トイレを覗き込もうとしたと同時に、出て来た祐一の顔色を見て、守は、
「なんだ?その顔…こっちまで青あざめるわ」
「あ…いや…なぁ、守、僕の背中に何もないよな?」
「は?後ろ向けよ」
言われるがまま祐一は背中を守に向けた。
「…」
じーっと確認しているのか、驚いているのか、無言の守に祐一はひたすら守の答えを待った。
「…別になんもないけど?」
「…だよな…」
「お前…早く帰れ。マジで顔色悪いから」
「あ…あぁ、悪ぃ。じゃあな…」
そうして、祐一が家に着くと、祐一は酷い疲労感に襲われた。
「何なんだよ…この羽根…右が白い羽根で、左が黒い羽根って意味不明…」
その正体に気づくのは、まだもう少し先になる。
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