今日を殺す
レジャーパーソン
死ねない獣
今日も13時に
死に場所を求め
今日も歩く
見渡せば賑やかな街
店が立ち並ぶ街路
せめて最後の瞬間は注目されたい
みんなに見られながら死にたい
華やかに死ねたらいいな
そんな事を呟きながら歩く
するとスマホの通知が鳴る
どうやら自殺のニュースらしい
そこに写っているものは
自殺する人を止めること無く
1枚の板越しにその人を見る大勢の民衆
野次馬となった人達は面白がって見ている
そしてその板に映るのは
光無き真っ黒の瞳をした
少年だった
そしてその少年は15mもある大きな
ビルの屋上から飛び降りる
真っ逆さまになり
頭から落ちる
冷えた地面に
ミチミチと音を立てながら
潰れていく頭
そして体
その一瞬にして少年は死んだ
それでも撮影をやめない民衆達
なんて恐ろしい絵なのだろうか
これ程までに醜いのか
周りの人達は
その自殺を面白がって見ているではないか
板越しに見る自殺が
そんなに面白いのか
私は震えてしまった
この恐ろしい人達を見て
その恐さに耐えられなくなり
気が付けば15mもあるビルの屋上にいた
周りの人達は板を構えて私を見ている
私はその人達に手を振り
そこから飛び降りた
私は今日も13時に
死に場所を求め歩いている
昨日の記憶なんてものは無い
今日見た景色だけを
私は知っている
そして
この話の結末も知っている
この話は
死にきれぬ少年が
ただビルの屋上から飛び降りる話だ
本屋に置いてある本を手に取り
私は言った
さよなら後生
初めまして今日
初めてじゃない事は知っているのに
初めてに感じる私は
一体今まで何を見てきたのだろう
知っている景色は変わらない
獣達が街を歩き
話をし
取引をする
ただ彼らがいるのは
板の中に存在していた
知能を持った獣達は
板を片手に
死にゆく者を
笑っていた
獣達を嘲笑う
13歳の少年の
逃避行だ
今日を殺す レジャーパーソン @rejya-pa-son
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