第2話 地球脱出船建築開始

 2200年の今日、第一回目の移住用宇宙船部品の地球の静止軌道に打ち上げがされた。一番コアな部分が打ち上げられたのだが、1機のロケットでは、運べる部品点数に限りがあり、運び終わるまでに途方もない時を要してしまう為、一日に5回ロケットを打ち上げる非常に信じられないミッションとなった。早朝5時に初号機打ち上げが完了、その2時間後の7時に2機目と3機目を同時に打ち上げ。4機目と5機目に関しては種子島からではなく、急遽ロケット打ち上げ施設を作った沖縄からの打ち上げを決行するが、制御は種子島からの遠隔になる。

4機目と5機目の打ち上げは、3機目が成層圏通過後の8時10分から開始された。非常に過密スケジュールであり、管制センターの通常人員では到底制御も出来ない為、今回のミッションに先立ち、種子島宇宙センターには、増築された管制センターと、打ち上げ台も2基新たに据えられ、最高3機のロケットを実務上同時打ち上げが可能になって居るのだ。

 

 今回の5機目のロケットには、高性能な人工知能を搭載したトラえボン、トラミミちゃんという人型ロボットが先行して搭載されている。

各部品を宇宙服が不要な人型ロボットによる初の組み立て実験でも有るのだ。今回のミッションは人類初の試みがとても沢山行われているので、どこで問題が発生するか全く予想が立たない為、緊急時には宇宙ステーションに滞在している宇宙飛行士がバックアップする体制も整えている。

静止軌道上に建築をされるのだが、その関係から宇宙ステーションと今回の組み立て船の距離は150キロの距離に設定されている。

150キロも離れていたら地球人の感覚だと結構な距離が取られていると思うかも知れないが、宇宙で150キロの距離は、地上での2メートルにも満たない距離感である事を付け加えておく。


 今回の打ち上げで運ばれたのは、骨組みを半分組み立てた状態で打ち上げているので、プラモデルを組み立てる様に、順番にボルトでそれを固定する作業を5機目のロケットで打ち上げられたトラえボン、トラミミちゃんの人型ロボット2機により着々と進められている。人工知能とプログラミングされている情報を頼りに、学習をしながら、組み立てが進められれ、翌日には5機のロケットで運ばれた部品が全てくみ上げられてしまった。人型ロボットの動力源は電気である。発電は太陽光発電装置をロボットに組み込んでいるので、光を受けられる時に発電蓄電をする仕組みになっている。建築当初は5日に1回5機のロケットが打ち上げられ、どんどんと建築が進行した。3か月経過した時に、ロケットが爆発炎上してしまい、一時計画がストップしてしまうアクシデントが起きる。この事故の影響により、一日5機のロケットを打ち上げる異常な運用に非難の声が集まり、1日に一か所1機を限度に打ち上げるペースにダウンする事が決められてしまった。幸いな事に、今では種子島だけでなく、沖縄に打ち上げ施設が作られているので、1日に最高2機までは打ち上げが可能だ。

しかし、今回の宇宙船のサイズは全長170キロメートルというとても大きな建築物になるので、静止軌道を建築中に地球から離す調整が必要になる。地球から離さないと引力と推進力のバランスが崩壊し落下する為。これは組み立ての途中にドッキングする部品運搬船をそのまま利用する事が決定。操作に関しては遠隔で種子島から操作されるが、人工知能を持った人型ロボットも学習の為、エンジンの始動、停止のタイミングを宇宙船に乗船し実体験させることが確定している。あらかじめプログラミングされている知識と、実際に行なわれる操作を観て、人の繊細な判断を学習により会得させるのが目的だ。

地上からの指令が途切れてしまった場合のバックアップで、人型ロボットが操縦する機会は皆無だろう。 宇宙開発で絶対はあり得ない為、この様に何十ものバックアップ機能を用意しているのだ。

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