第3話

「どんまい、お兄ちゃんを振るなんて見る目がなかっただけだよ」

妹に慰められるなんて情けない兄だ。

だけど正直気持ちが和らいだ。

「ありがとう真依。でもメイクをしていない俺なんてブサイクだし、いいとこないよ」


「そんな事ないよ。だから自信を持って」

「はぁ」

妹の顔を見て俺はため息を吐いてしまった。

「なんでため息を吐いたの」


「俺は男だから、経済力を得ることが出来れば何とかなるけど、女は容姿が重要視されるから、俺と似ているお前がって考えると不憫で」

可哀想な真依、俺と同じようなブサイクの顔に生まれて来なければ


「お兄ちゃん、心配してくれてありがとう。でも大丈夫。お父さんとお母さん、そしてお兄ちゃんがいる普通の家庭に生まれて今でも私は充分幸せ、2人とも今は家にいないけど、たとえ少し見た目が悪くても、不幸なんて思ったことはないわ」


なんていい子なんだ、こいつにいい男と巡り会えますように。

神様お願いします。

「それに今の時代メイクもあるし、整形もある、顔なんていくらでも変えられるから」


「そうだな。それじゃあ今度、俺がやっているメイクの仕方を教えてやろう」

「いえ、結構です。私は自分の顔をあまり変えないありのままの姿に近いメイクで充分だから」


なぜ嫌がる。真依は自分の顔を美女に変えたくないのか?

「どうしてだよ」

「考えてみてよお兄ちゃん。もしたとえ彼女が出来たとして、その人がお兄ちゃんの好みの人だったとする」


俺は妹の言われた通り頭の中で意識をしてみる。

「だけどその人の顔はメイクで、本当はお兄ちゃんの好みに合わない、どこかの40人以上いるアイドルグループの内の1人ようなブサイクな顔だったら」

「嫌だな」


「でしょ。だから私は自分の顔を少し盛るだけのメイクをしているのよ。好きな人が出来てもメイクで振られないように」

「そうか。そういうことなら仕方がないな。いい人が現れるのを俺は願っているよ」


「ありがとうお兄ちゃん」

俺は自室に戻って宿題をするのだった。



…………………



雅人が部屋に行ったあとの事だ。

「お兄ちゃんを振るなんて馬鹿な女ね」

真依は部屋に行かずにリビングへと向かった。


「でも仕方がないわね。だってお兄ちゃんは悪い魔女に魔法をかけられて普通の美的センスを持っていないのだから」


リビングには真依が作ったカレーが置いてあった。

「冷めちゃったしあたため治さないと」

そう言って雅人が手をつけていないカレーを鍋に戻して温め直した。


充分にカレーが温まり火を止める。

「お兄ちゃんは私のもの。適当な女に取られてたまるものですか」

真依は超絶的な程のブラコンだった。

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