1-2 魂のふれあい

「えへへへーっ」


 裸のまま寝台に寝転んで、ランは両手を天に伸ばした。風呂で散々いちゃついた後、明日の追加宿泊を予約して部屋に戻ったせいか、なんだか楽しそうだ。


「どうした、ラン」

「モーブに指輪、もらっちゃったあ……」


 壁のランプに向かい、左手の角度をいろいろ変えて、指輪の輝きを楽しんでいる。


「ドロップ品で悪かったな」

「ううん。これ、貴重な指輪なんでしょ。お店で買ったものより、ずっと嬉しいよ」

「いくらお金を積んでも手に入る品じゃ、ないものね」


 腕枕で俺に抱き着きながら、マルグレーテも同意する。


「これでもう私、モーブのお嫁さんだね」

「まあ、そうだな」


 俺の気持ちとしては、そのとおり。ランとマルグレーテは、俺の嫁だ。


「モーブが私の命を救ってくれたじゃない。村がガーゴイルに襲われたとき」

「ああ」

「あの日からずっと私、モーブのお嫁さんになりたかったんだあ」

「ありがとうな、ラン」


 命を助けた。それはたしかだ。でもあれだよなー、あのときも思ったがラン、デレるの早いよな。原作ゲームだとパーティー仲間のブレイズにデレるの、学園編後半からだし。


「それで実際、今はお嫁さんだからね」

「ああ、そうだな」

「……なんだかモーブ、盛り上がってないね」


 頭を起こして、不思議そうに俺を見る。


「そんなことないよ。ただ……」

「ただ?」

「いや、なんでもない」


 いかん。ちょっと口が滑った。


「なに……」


 見つめられた。


「ちゃんと言って」


 真面目な瞳だ。もうごまかせそうもない。


 こっそりと、俺は溜息をついた。


「婚姻ってのは、指輪とかの形だけじゃないんだよ」

「どういうこと」

「それはその……ひとつになるというか……」

「ご主人様とお嫁さんがひとつになるんだね」

「まあ……そうだ。愛し合うと、心が満たされるんだ」

「心が満たされると、気持ちいいんでしょ」

「そういうことになるな」


 あからさまだなー、ラン。まあ意味は知らないわけだが。


「ならしようよ、ひとつになって気持ち良くなること」

「いや、今のはあくまで可能性というか……」


 説明、難しいな。


「今しても多分、気持ちいいのは俺だけだ。ランはおそらく痛いだけ」

「でもモーブは気持ちいいんでしょう」


 俺の目を、探るように覗き込んでくる。


「それは……きっとそうかも……」

「ならいいよ。モーブが気持ちいいのなら、私はそれだけで幸せだもん」

「そうは言ってもなあ……」

「さあ、しよ」


 困った。やむなく俺も体を起こす。ちらと見ると、マルグレーテは頷いていた。なんだこれ、してやれってことかな……。


 考えてみれば俺としても、昔からずっとしたかった。メインヒロインだけに攻略が他より難しいのは当然だろうが、少なくとも今回の転生に関しては、なぜか出会って早々俺にデレた。


 とはいえ、デレたところからが長かった。ゲーム的な言い方をするなら、フラグの縛りだ。そういう気分に俺がなる前にランいつも、無邪気な寝顔ですやすや眠っちゃうからなー。あれ絶対、フラグの強制効果だよな。


 だが今となってはもう、ランのR18フラグが解放されているのは、まず確実。そういう意味では、いい機会かもしれない。


 何と言っても、この世界にいきなり転送されて不安だった俺を、ランは転生初日から支えてくれた。心の支えになったのは、ランだった。彼女を守ろうと、俺は頑張った。それだけに俺もものすごくランが好きだ。したいかと言われれば、魂の底からランと一体になりたい。ただ……。


「そう言われてするというのも、なんだか萎えるけど……」


 思ったより、男心って繊細だな。自分でも驚いたわ。


「なにをするの、モーブ」

「なにって……俺の体が、ランの体に入っていくのさ」

「へえーっ」

「それが男と女の恋愛なんだよ、ラン」

「モーブが入ってくるのね」

「ああ」

「なにが入ってくるの」

「えーと……」


 なんだ。性教育の時間かこれ。


「まあいいや」


 口で説明するのは、恥ずかしすぎる。実践あるのみだわ。


「横になれ、ラン。どこまでできるかわからんが、ふたりで試してみよう」

「うん。……お願いしまーす」


 明るく言われたけどなあ……。なんか違う。


 ランの上に跨った。


「マルグレーテ、お前は見るな」


 恥ずかしいわ。ランプに照らされて丸見えだし。


「はい」


 広い寝台の端に移ると、素直に向こう側を向く。


「ラン……」


 とりあえず、キスを与える。瞳を閉じたまま、ランはうっとりと俺の舌を受けている。ここまでは、最近割とよくある行為。問題はここからだ……。


「あっ……」


 首筋から耳の後ろにかけて唇で辿ってやると、ランの体が震えた。さっきの風呂で、ランの弱点がわかったからな。


「ん……んんっ」


 そこを重点的に刺激していると、息遣いが荒くなってきた。ときどき、体がぴくりと震える。


「モーブ……好き」


 うっとりした声だ。


「怖くなったら言えよ。止めるから」

「うん。……でも大丈夫。モーブになら、なにされてもいいもん」


 そのまま顔をずらし、今度は両胸を執拗に攻め立てる。指と唇で同時に刺激し、時には口に含んで強く吸って。繰り返しているうちに、ランの喘ぎ声に熱が籠もってきた。次第に敏感になり、胸の先をそっと摘むだけで喘ぎ声が漏れ、いやいやと首を振る。


「モ……モーブ、ごめん」


 泣きそうな声だ。


「どうした。怖いか」

「私、おしっこ漏れた」

「ああ……」


 少しだけ体を起こして、ランの下半身を見た。俺に跨られた形のまま両腿をしっかり閉じて、こすりあわせるようにしている。


「大丈夫。それ多分おしっこじゃない」

「でも――」

「今日はもう止めようか」

「モーブに身を任せればいいのよ、ランちゃん」


 我慢できなくなったのか、マルグレーテはいつの間にかこちらを向いていた。


「モーブが全部、いいようにしてくれるわ。だから怖がらなくても大丈夫。愛されていいのよ」

「マルグレーテちゃん……」


 ランの右手が伸びて、マルグレーテの手に絡んだ。


「手を握ってて」

「ええ。……大丈夫。わたくしがついているわ」

「そうだよね――んっ」


 唇を塞いでやった。


「舌出せ、ラン」

「うん……」


 恥ずかしそうに少しだけ出してきたので、吸ってやった。


「……ああ」


 俺のキスを受けながら、よがるようにランの体が動いた。


「これから入っていくからな」

「うん……」


 ランの腿を軽く開かせ、間に身を置いた。もちろん俺はもう準備万端だ。見ると、ランの体の中央部は、たしかに漏らしたようになっている。天真爛漫で子供のように無邪気なランが、我知らず、こんなにも大人の反応をするなんて……。なんだか興奮してきて、俺はもう止まれそうもない。


「かわいいぞ、ラン」


 腿を持って、ぐっと開かせた。


「なにをするの……モーブ」

「じっとしてろ」

「うん」

「力を抜くんだ」

「わかった」

「いくぞ」

「……」


 もう返事はなかった。柔らかく陥没している部分に、先をあてがう。


「なんか……入ってくる」


 ランの口が自然と開いた。


「あ……いやっ!」


 キツい。それでも強い抵抗を斬るように押しのけ、熱い部分に強引に侵入すると、ランの体は激しく硬直した。

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