3-3 恋愛フラグ管理

「やっぱり、聞いてみるものね」


 居酒屋二階の俺の部屋。粗末な寝台に横たわったマルグレーテは、俺の胸に頭を乗せた。


「神狐様の言っていたとおりだった」

「そうだな、マルグレーテ」


 村人は土地神の守護者だと、狐は言ってたんだよな。だから必ずや土地の異変を感知すると。


「でも……」


 反対側から俺に抱き着いているランが、頭をもたげた。


「その流れ者の人と、この土地の異変が関係あるかわからないよ」

「そうだな、ラン」


 だからこそ調べてみないとな。


「でもお宿の料理、おいしかったよね」


 ごろんと上を向くと、形のいい胸が丸見えになった。ここは屋敷じゃない。監視する奴などいるはずもないので、マルグレーテもランも普通に俺の部屋に来て、いつもどおり裸で添い寝している。


「木の子中心だったから、村のご飯、思い出しちゃった。……私達の村には生えてない木の子だったよね」

「この一帯の名産よ」


 俺の胸に、マルグレーテがちゅっと口を着けた。


「昔はたくさん採れてね。近在の行商人とかが、列をなして買っていったのよ」

「へえ……」

「それより、その男が火口のほうから来たってのが気になる」


 俺の胸を吸うマルグレーテの頭を撫でてやった。くすぐったいんだけど俺、もうなんだか慣れてきたわ。


「なんで……ちゅっ」

「例の触手野郎さ。あの本体は地面の下に潜んでいる。ここの火口ってのは塞がってなくて、地下に広がってるんだろ。……なんだか嫌な感じじゃないか」

「そうね……ちゅっちゅっ」


 マルグレーテ、夢中になってるな。俺の話も半分くらいしか聞いてないだろ、これ。焦らすような唇がくすぐったくって、俺もなんだか我慢できなくなってきたし。


「ほら」


 俺は起き直った。


「どうしたの、モーブ」

「ふたりとも、仰向けになれ」

「こ、こうかしら」


 マルグレーテは、ランの隣に移った。恥ずかしそうに、俺を見上げている。


「じっとしてろよ」


 体を屈めると、俺はマルグレーテにキスをした。


「ん……んっ」


 瞳を閉じて大人しく、マルグレーテはなすがままになっている。いつものように、俺の舌をねだって、舌で優しく応えてくれたり、吸ったりして。


「……ん」


 唇を離すと、マルグレーテは目を開けた。


「……もっと」

「よし」


 もう一度キスしてやった。吐息を漏らしながらマルグレーテは、うっとりと俺のキスを受けている。


「ラン」

「……うん」


 唇を近づけると、ランは瞳を閉じた。


「ん……っ」


 俺の唇を受ける。


 あら――。


 驚いたことに、ランが口をそっと開いた。初めてのことだ。いつもは口と口が触れ合うような、子供のキスしかしないのに。マルグレーテのキスを見て、なにか思うところがあったのかもしれない。


 なら……。


 舌を侵入させてみた。ランの口の中は温かく、柔らかい。マルグレーテより温かいんじゃないか、これ。俺の舌が触れると、驚いたように舌を引いた。……が、俺が何度もアプローチすると、諦めたかのように大人しくなった。俺の舌がからかうように動くままにさせている。


「んっ……」


 吐息が漏れた。おずおずと、俺の舌に応えてくる。


「ラン、かわいいぞ」

「モーブ……好き」

「動くなよ」


 俺は、体を下にずらした。目の前にきれいな胸がある。宿のランプに照らされて。ランの呼吸に合わせ、生き物のようにかわいらしく動いている。


 今日は、ふたりとの恋愛フラグがどこまで進んでいるのか、調べるつもりだ。俺が落ち込んだときランは、胸を吸わせてくれたことがある。だから大丈夫だろうと踏んでいた。それに俺がこうして胸をじっと見つめていても、嫌がったり逃げたりはしていない。多分、大丈夫だろう。


 胸の先に、そっと口を着けた。


「あっ……」


 ぴくりと動いたが、逃げたりはしない。口に含んだ胸の先を舌で撫でたり吸ったりしても、嫌がってはいない。むしろ逆だ。俺の頭を抱え、そっと撫でてくれている。


 いい子だな、ラン……。


 存分にランの胸に溺れると、俺は頭を起こした。


「マルグレーテ」

「……」


 もう一度キスしてやる。待ちかねていたかのように、マルグレーテは俺の舌を吸ってくれた。


「かわいいぞ、マルグレーテ」

「モーブ……」


 体をずらした。ランよりは少し小さいとはいうものの、マルグレーテの胸はきれいだ。小さい分、芯が固い。この間の風呂で、俺はそれを確かめていた。


 あのときは「洗う」体でアプローチしたから、「お父様の言いつけ」ラインをクリアした。しかし今晩は違う。もう明白に、男と女として胸にアプローチしている。だから拒まれるかもと思ったが、今のところそれはない。


 ここは、父親の重圧がある屋敷とは違う。それにランの胸が吸われるのを横で見て、覚悟をしていたのかもしれない。マルグレーテはじっとしている。


 いや、それどころじゃないかもしれない。まだ触れてもいないのに、マルグレーテの胸の先は、痛そうなほど膨らんでいるから……。


「ああっあっ」


 俺の唇がわずかに触れただけで、マルグレーテは体をのけぞらした。


「いやっ」


 構わず、胸の先を口に含む。


「だめ……モーブ」


 そうは言うものの、拒まれていはいない。手でシーツを握り締めたまま、我慢するかのように首をいやいやと振った。


「だめなのに……」


 胸の先を舌で撫でてやると、泣くような声を上げた。なんだろこれ、ランより感度がいいってことなのかな。前世童貞で終わった俺にはわからん。


 えーい、いいや。吸っちゃえ。


「ん……んんっ」


 また体をのけぞらした。俺の頭をぎゅっと抱くと、自分の胸に押し付ける。


「モーブ……」


 無我夢中でマルグレーテが俺の名前を口にした瞬間、俺達三人の上に、例の赤い光が生じて消えた。




●次話、「ブレイズパーティーの凋落」

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