ep.15 秘密、ですよ。 1/3
迂闊だった。
目を覚ましたとき、スマホが示す日付6/25、日曜日だった。
学校に行って、授業を受けなくていいというのは、うれしいのだが
これだと学園でのイベントが起こせない。
なぜ、タイムリープを起こしたのかというと。
一週間前の6/18(日)にさかのぼる。
といっても、俺の記憶としてはついさっきのことだ。
回想するとこうだ。
その前日に昼寝をしたためか、眠りが浅く、朝からシャワーを浴びようと浴室に向かったのだが。
そこで、日向由依と2度目の遭遇をすることになる。
最初に目についたのは、後ろ姿で、水を弾く白い肌。華奢な身体の通りちいさく可愛らしいお尻だった。
そして、振り返りさまに顔をだした、相変わらず小ぶりな乳房とその先端の桜色。
なつ海に言われたようなロリコンではないが、それでも少しいいなと思ったのは事実だ。
その表情は、完全にかたまっていた。
一瞬、止まった時を動かすように、俺はおはようと声をかけた。
「あ、はい、えっと、おはようございます」
由依は口をパクパクさせながらも、そう小さな声で返事をする。
このまま何事もなく、扉を閉めて自室に戻ろうとしたのだが。
パタン。
閉じたとき、後ろに気配を感じた。
この家には3人なのだから、それが誰なのかはすぐにわかった。
「歯、くいしばろっか? 兄さん」
どこぞのヤのつく人のような言葉とともに、妹の必殺コンボがさく裂した。
以上が顛末だ。
結果、それがトリガーとして俺は一週間後に飛ばされてしまったようだ。
言い訳しようにも、もうすでに一週間後になっていることから俺はそのことを少しの間、忘れることにする。
『かーずき! 今日は何月何日でしょーか。わッかるッかな?』
なんだこの軽い文章は。
さすがに、2週間も同じ文面を送るのに飽きてきたのだろう。
本作のモブキャラ、佐藤沙織は相も変わらず、俺のために日課をこなしてくれる。
それがゲーム性以上のつながりだといいのだが。
『スマホで見た。6/25だな。俺は6/18の朝からリープしてきた』
『あー、そっかそっか。久しぶりのリープだったんじゃないの。でもなんで朝から? なつ海ちゃんとなんかあったの?』
聞かないでくれ。
軽くその質問にはぐらかし、俺は今日の予定を確認する。
カレンダーアプリの6/25には、イベントを示す星マークを残していた。
6/24の俺からのようだった。
日向由依とのデート。
10時に駅前集合。
それだけかよ。
思わず自分自身へツッコミをいれてしまう。
しかし、なぜ由依とのデートなんだ? 待ち合わせなどせずとも家から一緒に行けばいいのに。
なつ海は一緒じゃないのか。
由依とふたり、となるとルートへの影響も気がかりではあるが、そんなのは24日の俺も承知の上だろう。俺は俺自身を信じることにして、待ち合わせに向かうことにした。
それでも、なんだか後ろめたい気もする。
誰にだろうか。
結城さやかにだろうか、それとも佐藤沙織になのだろうか。
「あれ兄さんも今日お出かけ? 由依も今日は朝早くから準備して出かけちゃったんだー」
「あ、ああ、ちょっと予定があってな。って何やってんの。なつ海」
「んー、勉強。たまにはやっておかないとねー」
意外なことに、日曜の朝からなつ海が参考書を開いていた。
実は、なつ海はゲームばかりしているわりに頭がいい。
そこそこの優秀な成績で、県内そこそこのレベルの高校であれば十分に受かる実力があるからこそ、中学3年のこの時期でもゲームばかりしていた。
そんな、なつ海が勉強をしている姿は新鮮だった。
どういう風の吹き回しだと、思ったがせっかくのやる気を削ぐわけにもいけないと思い触れずにいた。
「お、おお。えらいな」
「そうでしょー、えへへ」
慣れないことをしていると自覚しているのか、やけに素直だった。
いつものような、悪態をつかれることもなく
俺はスムーズに家を出た。
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