第十四話「体も心も清らかに」
珍生物タオルクラゲによる、墨スミブラック攻撃で見事にやられてしまったほまれさんは何やらニヤニヤして洗面器を三つ準備している。それを一つずつあひりの前に運んでいき、横一列で床に並べ始めた。何をしようとしているのかは分かりませんが、どうせしょうもない事をしようとしているのだけは分かりますわ。ご主人様(こまろ)不在で久々の天然っ娘との二人だけの空間ですものねぇ〜。主(こまろ)と僕(ほまれ)は犬猿の仲といえど、あひりに仕掛ける内容は『ショボい』で酷似しているのがまた何ともw・・・
それと、どうでも良いけど墨スミブラック攻撃するならイカかタコの方が良くね?何でクラゲにしたんだ?…っていう天からのクレーム。
「ふむ、説明しよう。ここに洗面器があるじゃろ?この中から一つ選んで、勢いよく頭からかぶるのじゃ。ただ〜し!どれかの中身はヒエヒエのお水である。さあ、桃咲あひりん。選ぶがいい!」
「だから私はアヒルじゃ・・・えっ?あ、あひりん?・・・うん、悪くないかも。あひりんって呼び方//」
アヒルはダメであひりんは良いという…あひりさんはよっぽど、アヒルが嫌いなのか。いや、それなら何でダンディバードとかいうよく分からん鳥男に憧れてるねんw
この天然小娘の基準が私には分かりませんっすわ。
「うーん。・・・よし決めた。この真ん中の洗面器にするよ!」
「ホントにそれでいいんだな?先に言っておくが、ヒエヒエお水を選んでしまった場合は残りの洗面器の中から再度選ばないといけないからな。アタリを引くまでやるのがこのゲームの掟。覚悟はいいかい?」
「なんか運試しみたいだね。もう悩んでもしょうがないし、真ん中のでいいよ。」
肝が据わっているあひりさんね。…しかし、このゲームはほまれさん考案者で洗面器の中身もほまれさんが用意しているわけだから、どう考えても怪しいっすよね〜。純真無垢な天然っ娘は一切の違和感も覚えていないのが何とも悲しいが、まあなんだ…これが社会というものだ。受け入れろw
「ツメターーーーーーイ!!・・・もうまたハズレじゃん!(プンスカ)」
「アハハハ。あひちゃんプンスカ最高!(ま、最後に残った洗面器も水なんですけどねw)…クスクス。」
(ムカムカ〜!・・・どうやら、ワタクシの宿敵あひりさんに出過ぎたマネをする不届き者がいるみたいですわね。少々、躾が必要でしょうね。)
温泉の底に2回沈んだと思ったらヒエヒエお水を2回浴びたりと、とても水浴びが大好きなアヒルさんなことで。お調子者も当たりのないガチャを連続で引かせる悪い大人みたいなことやってるし。そんな人はいつか天罰が下るであろうよ。・・・いや、私は『天』の保護者ではあるんだけど、こんな微笑ましい娘たちにきびきびの制裁みたいなことは出来ませんのであしからず。
※
「さあさあ、最後の洗面器を頭からかぶるのだ!敗北者よ。(イヒヒ、最後に最高のプンスカを私に見せてくれ〜!)」
「まさか、ほまれちゃん。この洗面器の中も水だとかないよね?…もうこれで最後だからそんなこと無いとは思うけどさ…」
いくら天然っ娘といえど、辱めに何度も遭わされていれば流石に人を疑う学習はしているようです。真っ直ぐな心を持つあひりさんには心の穢れた悪いヤツ(柿○ほまれとか栗○こまろとか)に惑わされることなく、成長して欲しい所ですね。
ノリノリのお調子者に催促されながらも、渋々洗面器を頭からザブン!とかぶる桃咲さん。
「や、やった〜お湯だった!!私の運が悪かっただけだったんだね。ほまれちゃん、疑ってごめんね。」
「えっ、は?お、お湯?(どゆこと?)」
「それとさ、あっちの方にも大量の洗面器と大きいタライが三つ置いてあって、私さっき気づいたんだけど、あれもほまれちゃんが用意してたやつ?」
「えっ?・・・いや、アレ知らないんだけど…ナニアレ?・・・」
「お二人とも面白そうなゲームをやられていますわね。先ほどから少々興味がございまして、観戦させていただきましたわ。」
どうやら、ほまれさんの計画に異常が生じたようです。そしてなぜかタイミングよく登場するこまろさん。そのこまろさんを見て、何かを察したのか顔面に翳りが現れ、抜き足差し足で逃げ腰になっているほまれさん。お水がお湯になったカラクリと突然大量の洗面器+大タライが現れた謎現象を知りたくは無いのですか?ほまれさ〜ん!
「と、とりあえずこのゲームはここでおわr・・・」
「あらあら、まだ洗面器はありますわよ。たしか次はほまれさんの番ですわよね?まさか、ご自身がお決めになったルールをお忘れで?(ゲス顔ニヤニヤ)」
「あ…いや…そ、そうだったね〜うんうん…忘れてなんかいる訳無いじゃん…アハハ…(ち、チッキショー!ハメられたわ。アンタ、アレ全部中身は水だろうがよ!!分かってんだぞこっちは!)」
何だかほまれさんの心の声がこの私にも聞こえてきた気がしましたが…まあ、貴方がアヒルさんにやったことがそのまま返ってきているだけなんですけどね。要は自業自得。倍返しになっている点は若干の同情はしますがねw
「ほまれちゃん頑張って!私は運が悪かったからお湯を当てられたの最後だったけど、ほまれちゃんなら一発でお湯が当てられるかもよ!!」
「あ、う、うん。(その可能性はどう考えてもゼロなんですけど・・・ってか、何だかあひちゃんの言葉も凄く皮肉に聞こえるようになってきたわ…)」
「ほまれさん。アレだけ大量に洗面器があるのですから、手早くやっていかないと終わりませんし、のぼせちゃいますわよ。(躊躇って時間稼ぎしてないで、さっさと水をかぶりなさい。しもべ!)」
「あ、あ〜痛たぁ〜。何だか急に両腕に激痛がぁ〜。こ、これじゃあ洗面器は持てないなぁ〜。そういうことでこのゲームは中止d…」
「あらあら。それならば、この私がほまれさんが選んだ洗面器をかけて差し上げますわ。」
「あれれ〜、今度は急に両腕の激痛が消えたぁ〜。悪いけど、もう自分で出来そうだから大丈夫だわ〜(く、クソが〜〜〜〜!!)」
自分で決めたルールのゲームに自分が苦しめられるとは…これいかに。先ほどまで元気よく水浴びしていたアヒルさんも応援しているんだから、もう懺悔の時間ですよ!往生なさいw
※
「ほまれちゃん。あれだけ大量に洗面器を用意しておきながら、当たりのお湯が一つしかないなんて、酷くない?」
「あひりさんの仰る通りですわ。全く…品性の欠片もありませんわね。」
「…アンタら、少しは凍死寸前の私に気を使ったらドウd(へっ…クチュン!)…私が死んだら妖怪温泉ババアになって温泉の底に引き摺り込んでやるカラn!(へっ…クチュン!)」
全てほまれさんのせいにされてて、ワラワラw
まあ、元凶はこのゲーム考えた人だし。その元凶が全ての災いを被ってくれたから、もう許してやれ。それに、これ以上水を浴び過ぎると妖怪ババア通り越して妖怪仙人になりかねないからw
…いや、だって自分でババアとか言っちゃてるしさ〜w
こんなとこもう居られるか!と言いたげなロリババアは現在、退場する出口をお探しになられております。
「…あれ?温泉の出入り口の扉、たしかここら辺だったと思うんだけど…えっ、いずこへ?」
「ウフフ。お二人がワタクシの温泉施設を楽しんでおられるので、出入り口をウォータースライダーあみだくじ方式に変更しておきましたのよ。」
「何それ〜?こまろちゃん。何だか楽しそう//」
「余計な事すな〜!!鬼畜令嬢が〜!!(へっ、クチュン!)」
おい!もう、ここ温泉施設じゃなくてただのレジャーランドじゃねーかよ。いっそのこと観覧車とかメリーゴーランドとかお化け屋敷も作っちまいなよ。そして、楽しそうだから私もそこに混ぜさせてくれ。頼む!
「どうせ、どこ選んでも結果は決まっているんだろ?私の立場はさ。もうどこでもいいわ!」
「ほまれちゃん、潔くてカッコいいよ〜!楽しんできてね〜!!」
ほまれさん、この物語の自身のポジションを受け入れたのか、あるいは開き直ったのか分からんが自暴自棄でさっさとウォータースライダーを滑り降りていった。
そんな悲観するな。日頃の行いが良ければ、いつかはいい事あるはずだ…たぶん。
そして、肝が据わったしもべに少々驚いたのか、彼女が滑り降りたスライダーの後ろから見送っているこまろさん。
「驚きましたわ。自ら即決して全てハズレのスライダーを滑っていくなんて。まだまだ使えるレベルではないですけれど、ワタクシのしもべとして少しは成長したみたいですわね。」
「・・・ええっと。ダンディバード、ダンディバード…ってあれ?どこに置いてたっけ・・・って、アワワワ〜!!」
アヒル型浮き具を探していたあひりさんは床に転がっていた石鹸を踏んでしまい、すってんころりん。勢いよく放たれた石鹸弾は洗面器に激突。フリスビーのように宙を舞った洗面器はその勢いを維持したまま、こまろお嬢様の後頭部にクリーンヒット〜!!
頭からスケルトンの如く、スライダーを滑っていきましたとさ。
「痛たた〜、…ってあった!ダンディバード。・・・よし!こまろちゃん。次は私がすべr…」
(し〜〜〜〜〜〜ん・・・)
「えっ、こまろちゃん。どこ行っちゃったの?・・・みんな、置いてかないでよ〜!!」
自身の犯した罪に1ミリも気づいていない桃咲さん。泣きそうな顔になりながらしばらくフラフラした後、スライダー近くの壁に手をやる。
「・・・ん、あれ?この壁…回る?・・・あれ?ここ出口じゃん。」
どうやら、あひりさんが触れた壁はどんでん返しになっていたらしく、その隠された裏側がこまろゲームの当たり、つまり出口だったようです。お嬢はあひりとほまれをスライダーで滑らした後、この壁で自分だけ脱出する予定だったらしいっすね〜。やっぱり穢れのない心を持ったものが最後は救われるのですよ。天に身を置いている私には分かる!うんうん。
スライダーで奈落の底を滑っていったお二方がどうなったかは…まあ、知らんでもいいっしょw(てきと〜!)
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