第十一話「お金じゃ買えないもの」

死者蘇生した幽霊が自身の負けと罪を認めて謝罪した後、あひりとともに学校へと向っている。

お詫びの品は学校まで持って行って欲しいという幽霊の要望で、天然っ娘はウキウキしながら両手でそれを持って一緒に登校中。


「何が入っているか楽しみだなあ〜。」


「まだ開けてはいけませんわよ!お楽しみは時間をかければかけるほど、より一層、楽しめるのですわ。…ウフフ。」


あれだけコテンパンにやられといてまだ桃咲あひりに挑むその執念、もう尊敬しますわ。


「そういえば、こまろちゃん私の話聞いてよ!今日の朝、なぜかいつもより目覚めが早くてね。それとクローゼットの中も私の物じゃないキワドイ服ばっかで、朝食に飲んだコーヒーもいつもと味が違ったの。なんか変な日だよね、今日。」


「ま、まあ…そんな変わった日があるからこそ刺激があって楽しめるのではないかしら?ワタクシはそういうの大好きですわよ。」


「そっか〜、そうだよね。変わった日を楽しむ…うん、いいかも!」


それっぽい事言ってあひりを丸め込んでんじゃね〜ぞ!天然っ娘打倒作戦の失敗から目を背けるなw!

その後も二人は他愛もない話をしながら学校へと歩を進めるのであった。





(キーンコーンカーンコーン♪)


あひりとこまろが1ーAの教室に着いたちょうどのタイミングで5時限目の授業が終わったらしい。本日は6時限目までみっちり授業があるので、今からその間の小休憩時間ね。


「おっ!あひちゃん、こまろちゃん。学校来るの遅れるって聞いてたから寂しかったぜ〜、全く。・・・んでさ、なんかネットニュース見たけど、二人とも無事?オバケになってないよね?」


「私は大丈夫だったけど、こまろちゃんはあの世に行ってから、こっちに帰ってきたんだよ。…ねっ?」


「えっ!?・・・これ、成仏してないの?(こまろを指差し)」


「あひりさん、その話はややこしくなるからもうこれっきりにしましょうね。そしてほまれさん、ちょっとお話をしなければいけn…」


「ああ〜、ごめんなさいごめんなさい!触れてはいけない事だとは思いませんでしたすいませんでした〜!!」


ほまれさんも主(あるじ)こまろのご機嫌取りが大変そうですね。


「それより、見て見てほまれちゃん!こまろちゃんからプレゼント貰ったんだよ。」


「へぇ〜、プレゼントか〜。いいね・・・(って待てよ!こやつからの贈り物とか絶対なんか怪しいだろ。ってか、あのネットニュースの事故ももしや、あやつが元凶なのでは?)」


鋭いぞ。正解だ、お調子者よ!しかし、桃咲あひりは彼女の想像を超える存在で仕掛ける攻撃全てが失敗に終わっているのが現状だぜ。今回もその彼女が見せてくれることを私は天から見守っているぞ。


「でもね、これを開けていいのは放課後になってからじゃないとダメらしいから、それまでは私のロッカーにでも入れとくよ。」


「・・・それ、ますます怪しいんですけど…時限爆弾でも入ってんじゃね?」


「えっ!ば、爆弾!…ちょっとこれ警察の人に届けに行ってくるね。」


「あ、いや、だから…待て〜、アヒルゥ〜〜〜〜!!」


「あらあら、愉快な方達ですね。ウフフ。」


そのやりとりはもうすでに物語の前半の方でも見ましたよ。またもやアヒルの捕獲に苦悩をするほまれさん、お疲れ様です。





ほまれの頑張りで逃げるアヒルを元の場所に引き戻すことに成功。ほまれさんはゼーハー言っていますが、逃走者はケロッとしている様子ね。


「あっ、そうだった。・・・(ガサゴソ)見て!じゃじゃ〜ん!!私もスマホ買ってもらったんだよ〜!」


「あら〜、あひりさんもついにスマホデビューですか。いいですわね〜。では、ワタクシが初期設定の方を…」


「こまろちゃん大丈夫だよ。お店の人とお母さんにやってもらったから。」


「・・・チッ!」


「おい…今お嬢さまらしからぬ舌打ちが聞こえたんですけど・・・」


デジタルに疎い桃咲家の娘の元に、ついにスマホがやってきましたか!…いや、でも使い方分かるんすかね?


「スマホさーん、今日の天気は〜?」


「いや、スマホに話しかけるんかい!!それじゃ、機械に話しかけてるお年寄りみたいじゃん!」


「あら、ほまれさんご存知ないの?最近のスマホは音声認識できますのよ。」


(ピコーン♪キョウノテンキハハレデス!)


「えっ!?(し、知らなかった〜)」


ほまれさんよりあひりさんの方が詳しかったみたいですw

まあ、たまたまな気もしますがね…


「それとね、ちょっと前に面白いナポリを入れてみたの。…ええっと、どれだったっけ?」


「アプリのことですわね、ワタクシも他人の電話番号を入手するアプリとかアカウントを乗っ取るアプリとかスパイが入手した機密情報を知るアプリとかいろいろ入れてありますわ。」


「そうそう、サプリとも言うんだよね。昨日もちょっと勉強してたから私も知ってるよ。」


「いや、アプリとしか言わね〜し!それにこまろちゃんのはもうアプリとかじゃないだろ…」


今回は珍しくほまれさんがツッコミ役に回ってますね。お調子者の座もこの二人に奪われるんじゃないですか〜?…まあ、だからと言って三人ともボケ役だったら収集のつかないカオスな状態にはなるんですけどね。





「あっ、あったあったコレだ!『金額査定アプリ』」


「あ〜、それ私も落としてるやつだ。カメラで写真を撮ったものの金額を表示してくれるやつだよね。結構、査定精度高くて人気のやつ。」


「へ〜、そのような面白いものがあるのですね。・・・(パシャ!)ほまれさんの査定金額は1000円らしいですわよ。」


「勝手に人を査定すな〜!・・・しかも私の価値がお札一枚分って…」


気を落とさないでほまれさん!人の価値はお金では計れないから。…と励ましてみるw


「(パシャ!)・・・お返しだ!さてさて、こまろちゃんの査定金額は・・・えっ?これいくつ?0いくつアルノ?…なんか後ろの方には正確な計測は不能ですとか書いてあるんだけど。」


どうやらこまろさんの査定金額は数字が振り切れておかしくなっているようです。このアプリ、わりと正確な査定しているのでは?…って言うとほまれが可哀想だから心の中だけで抑えておこう。


「ねえねえ、この机と椅子を査定してみたんだけど、1組で5000万円って出たんだけどおかしいよね?」


「へ〜、このアプリすごいですわね。ワタクシの寄贈したブルジョア社製デスクとチェアは一組5000万円ですわよ。」


「は?ご、5000万円!!・・・ちょっと待て、確か自己紹介の時に1000組寄贈したって言ってたよな。5000万×1000組は・・・(プシュ〜)」


ほまれさん空気の抜けた風船みたいになってしまいました。頑張れ、世の中お金が全てじゃないぞ!お金があれば夢を買えるし、高級なもの食べられるし、流行り物揃えられるし、旅行行きまくれるし、愛人作れるし、名誉・権力を得るコネクションできるし、人の下でこき使われなくて済むし、様々なことに挑戦できる機会が多くできるってだけだぞ!希望を持って生きろw


「ウフフ、どうせならあひりさんもこのワタクシが査定してあげますのよ!(パシャ!)」


「えっ、私っていくらになるのかな?ちょっと気になる。」


(ご自身の査定金額に絶望して、ほまれさんみたいに魂の抜けた抜け殻みたいしてあげますわよ!)


さてさて、気になるあひりさんの査定金額は?・・・



『彼女は誠実で実直な素晴らしい人格者です。欲に飲まれることなく、また弱きを助ける優しさも兼ね備えています。お金で彼女の人柄を計ろうなんてナンセンスです。彼女はお金以上の価値ある存在です。このアプリで彼女を金額査定しようなんて人は非常に卑しく、自身のその横柄・傲慢さを今一度改めるべきです!』



「・・・何なんですの、これは…」


「で、こまろちゃんどうだったの?見せてよ!」


「あ、すいませんあひりさん。間違って消してしまいましたわ。あらら、今度はアプリの方もお手が滑ってアンインストールしちゃいましたわ。もう見られることはないでしょうね。」


「え〜、ガッカリ。見たかったな〜。」


またもや、あひりさんにしてやられた栗宮お嬢。果たして彼女が天然っ娘に赤っ恥をかかせられる日は来るのだろうか?

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