第七話「テーブルマナーは大切」

キャラ設定機能をダンディバードからギャル子に戻したが、見た目は筋肉ムキムキ半裸のダンディバードのまま。あひりさんはなんともないように自然に接していますが、傍から見たら結構シュールで吹き出しますw


「桃咲あひりさん、この外見だとめっちゃキャラカオスだから、女の子にチェンジングしたいなあ〜。」


「ギャル子ちゃんがそうしたいならいいよ!あと、桃咲あひりさんって呼び方だとなんか余所余所しいから別の呼び方がいいな。」


「マジ!?あだ名で呼んでいいわけ?・・・んじゃ、『あひポン』で!!あひポンよろよろ〜♪」


ご主人様に対して今まで以上に馴れ馴れしい癇に障る言い方に聞こえるようになったのは気のせい?まあ、常に最先端を行くギャルにネーミングさせるとそうなりますわね。いや、彼女は最先端技術のロボットですけど・・・なんか古いと感じる矛盾。


「『あひポン』って可愛いね!いいよ。ギャル子ちゃんはもう『ギャル子ちゃん』って呼んじゃってるけど、それで大丈夫?」


「全然オッケー!『ギャル子』と『あひポン』はこれでダチだぜ!イェイ!!」


ホント癇に障るダンディバードだな。早く見た目変えろってのw!


「あっ、この写真の美人さん良くね?テクスチャこれにしようぜ!」


「そ、それ私のお母さん!ギャル子ちゃん、お母さんだけはやめとこうよ。その…お母さんが二人になっちゃって、定期考査悪くて怒られる時も2倍になっちゃうし・・・」


心配するのそこかい!でも、逆を言えば褒められる時も2倍になりますよ。あわよくばお小遣いも2倍に…はならんか。


「ふ〜ん。・・・おっ、じゃあさあ。この大きな白い犬になってみようか?」


「えっ、犬?しかもそれ『オノロケ姫』の山犬だけど、なれるの?」


「もちのろん!ウチはただのアンドロイドじゃなくて、『トランスフォーム型』のアンドロイドだから。骨組みが磁力を利用した柔軟性のある機構してるから人型だけじゃなく、色々な形に変形(トランスフォーム)できんだぜ〜!!詳しいことはトップシークレットだから言うなって技術士から叩き込まれてて言えないけどね〜。」


なるほど。人間の姿だけでなく、犬や猫などの姿にもなれるということか。それも二次元・三次元問わず。私の家にも一台欲しい…

ギャルk・・・じゃなくてダンディバード(見た目が)は絵本をスキャンした時と同様に、壁に貼ってある『オノロケ姫』のポスターに向かって目からビームを放った。取り込んだ情報を内部に伝達しているのか肌が透明に戻った後、体が一旦、卵状に丸くなった。そこから頭が出て、足が出て、尻尾が出てな感じで山犬の体を構築し始めているようだ。構築が終わると透明な肌に山犬テクスチャを反映させて完成!といった感じ。


「わ〜!『オノロケ姫』の山犬そっくり。・・・あれ?毛の肌触りもモフモフだ。ロボットだから硬いと思っていたのに全然違う。本物みたい。」


「黙れ!小娘!・・・なーんてね。ドヤドヤ、凄かろ凄かろ?なんかウチこれバリ気に入ったからしばらくこれでいくわ。よろ〜。」


「うんうん。…あっでも、その姿で他の人に会うと驚いちゃうからあまり出掛けない方がいいかm・・・って、ええ〜!もうこんな時間なの!?私まだご飯食べてないし、お風呂も入ってない…」


そういえばそうでしたね。帰宅してからずっとこのアンドロイドとの付き合いで時間喰ってましたから。

山犬ギャル子には部屋から出ないようにと釘を打って、あひポンは夕飯とお風呂、それと宿題も急ぎ足で済ませるのであった。





「スヤスヤ〜、スヤスヤ〜」


入学二日目はいろんな事があってよっぽど疲れたのだろう。あひりさんはベットに入って数分で眠りに落ちたようです。現在深夜をまわった時間帯。山犬のギャル子はというと、ベット下のカーペットにしゃがんで寝ています。・・・とても静か。


(001番機・・・001番機。聞こえますの?あなたの主、こまろですの。)


「ん?・・・あっ、栗宮サマっすか!何用で?」


やっぱりアンタだったか。こんな尋常じゃない金がかかりそうなロボット送りつけてまで、何かやろうとするヤツはお嬢しかいませんし。遠隔で通話してても『天の保護者』には分かりますからね。みんなを見守る『天の保護者』ですから。


(ワタクシからの指令は完遂されたのですか?指定時間になっても何もご報告がなかったのですが・・・)


「あっ、メンゴメンゴ!すっかり忘れてましたわ。あひポンとの会話が楽しすぎてつい…」


(な、何をやっておられるのですか!・・・セキュリティコードの改変があれでは不足でしたか。最先端技術の最高名誉技術士の肩書きは想像以上ですわね、流石だわ。)


「指定箇所にカメラやらトラップやらを仕掛けりゃいいんすよね?あひポンに気づかれないように。」


(左様です。手違いのないようにお願いいたしますわよ。・・・ウフフ、これであひりさんの赤っ恥を心ゆくまで堪能できますわ。)


いよいよ栗宮・モンブラン・こまろお嬢さまが強敵、桃咲あひりに仕掛け始めたらしいです。さあ、どうなることやら。





スズメがチュンチュンと鳴く翌朝。あひりは芋虫のようにまだ布団に包まっている。ギャル子は深夜帯のうちに仕掛け作業を完了し、こまろにその旨もしっかりと報告していた。そして設置したカメラで今もこう、桃咲家を監視しているお嬢。ってか、こまろさんいつ寝てんの?一応、高校生なんだから深夜過ぎにはちゃんと寝ろって話。


(ウフフ、まずは小手で試し。寝起きドッキリスイッチで気持ちよ〜く、起床してもらいますわ!)


あひりの部屋をふと見渡すと、壁掛け時計に細いヒモのようなものが繋がれている。そのヒモはカーテンを通って、クローゼットのドアを通って、ベット上の置いてあるラジカセを通っている。そしてその終点にはハリセンが垂直に立っていて、寝ているあひりの顔面のちょうど真上に位置している。・・・あ〜、ピ○ゴラスイッチっすねこれw


「ウムム…ケーキいっぱ〜い!どれから食べようかな?ウムム…」


幸せな夢の世界にいるであろう、あひりさんのことなどお構いなしで壁掛け時計の時間は進む。そして分針が00分に達した時に例のスイッチが起動し始めた。


(ウフフ。さあさあ、あなたの醜態をこのワタクシに見せてくださいませ!)


壁掛け時計に繋がれていたヒモが切れ、カーテンが全開になって、クローゼットのドアが開かれ、ラジカセからラジオ体操第一番が流れ始めた。そして最後の目玉、ハリセンが真っ直ぐあひりの顔面めがけて襲いかかった。


(さあ〜!お覚悟〜!!)


「(バシッ!)モンブランいただきま〜す!!」


あひりさん、な、なんと・・・ハリセンを白刃取りしていた。

ケーキいっぱいの夢の世界で食す前の『いただきます白刃取り』、お見事!!


(う、ウソ・・・な、なんなんですの、これ?睡眠という無防備な状態でいながら五感を、いや第六感までをも働かせられるというのですか?あの娘は。・・・まだですわ、まだ仕掛けは残ってますわ。あれはまだまだ序の口です。今度こそは…)


動揺を隠し切れない様子のモンブランさん。現実でも夢の世界でも桃咲あひりに食われる運命だったか。←うまいこと言ってみた。(笑)

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