第六話「90年代型ギャルロイド」

〜昨日の放課後と同時刻の桃咲家にて〜


(ピンポーン♪)


「ちわーす!桃咲あひり様宛に宅配便で〜す♪」


「はいは〜い!あら、あひり宛?あの娘何を頼んだのかしら?宅配お疲れ様です。ありがとうございます。」


何やらあひりが注文したと思われるかなり大きめの段ボールがおうちに届いたらしい。…あれ?たしか桃咲家はデジタルに疎い家庭だからインターネットは通っていないはずだが?どっかの店先でこんなデカブツを彼女が注文してたとは想像し難いし。それでお母さまも疑問に思っておられるのであろう。


「何が入っているんでしょうかね、これ?凄く重いし、大きくて運べないわ。とりあえず玄関に置いたままにしときましょう。勝手に開けるとまたSFっぽい絵本の時みたいに怒られそうですし。」


大きいだけでなく重量も結構あるようだ。宅配の若い兄ちゃんが玄関まで運んでそこに置いてくれたから、助かりましたわね。・・・ん?『SFっぽい絵本』ってもしや…アレのことか?(笑)

当時の娘さんも親に知られたくない秘密みたいのがあったのかな?知らんけど・・・


(ピンポーン♪)


「あら、またお客様?はいは〜い!・・・ええっと、どちら様?」


またお客様が訪問してきたらしいです。見た感じ小学生女児のようだが・・・帰るおうち間違えたのかな?


「ワタクシ、そちらにお送りした『トランスフォーム型アンドロイド』を開発・製造している最高名誉技術士のものです。少々お話の時間よろしいでしょうか?」


「と、とらんす?あんどろ?」


「はい。あっ!そちらの段ボールに入っている製品です。まだ未開封なんですね。」


「勝手に開けるとうちの娘が怒るからね・・・なんだかよく分からないけど、玄関で立ち話もなんだからどうぞ上がって。」


・・・ええーと、帰るおうち間違えた小学生女児が何とかアンドロイドを製造していて、なんか凄い技術士らしくて、あひりさんがお店先で注文したこのデカブツがその何とかアンドロイドで・・・ってダメだ、私もよく分からんくなってきたわ〜。

あひりのお母さんはそのロリ技術士から名刺を渡されて、リビングでお話し中。


「ワタクシたち技術士が開発している『トランスフォーム型アンドロイド』の目的は、富と権力を貧しい人たちにも分配してより多くの人々に生きる幸せを分かち合うことです。最高名誉であるワタクシは運よく恵まれた財閥家系で不自由なく育ちました。それ故に『トランスフォーム型アンドロイド』の開発にかける想いは一入です。

ですが、ワタクシたちの目的に反してその高機能さを悪用することも可能なのが現実です。使用者によって薬にも毒にもなるのです。ワタクシたち技術士はそれを看過できません。」


「・・・う、うん。要するにどういうことが言いたいのかしら?」


「もし、この製品を使用してなにか人的被害を受けたのであれば、ワタクシたち技術士に報告していただきたいのです。人が作ったモノは人を幸せにするモノでないといけませんから。」


「う、うちの娘よりしっかりしてるわね・・・分かりました。」


すごく高次元を生きてるませた女児っすね・・・

その話だけをしてロリ技術士は礼節よく桃咲家を去っていった。…にしても、訪問者色々で変な日だことw





「ただいま〜…って何この大きい荷物!?」


現実の時間帯に戻って参りました。海賊船ごっこか競艇ごっこかよく分からん遊び後のご帰宅です。ドアを開けて玄関入ってすぐの目の前に謎の段ボールが聳え立っていたら驚きますよね。


「おかえりあひり。あなた宛にトライアングル型オンボロイドでしたっけ?何か届いているよ。もう、こんな大きいの頼んで〜。」


「えっ、私こんなの頼んでないけど…ん?でも私宛になってるね。うーん、覚えてないけど、頼んだのかな?私。」


「なんかそれを作った人も家に来たのよ。あひり宛で間違いないと思うよお母さん。とにかく、玄関にずっと置いとくと邪魔になるから早いところ片付けてね。」


「う、うん…」


やはり、あひりさんが頼んだものではないらしいですね。ってか、デジタルに疎い天然一人っ娘がそんなよく分からんもの注文するわけねーだろって。絶対どっかの悪役令嬢さまの仕業だと分かりますよ!


「・・・ど〜しよう、これ。とりあえず開けて見ようかな?…もうそうするしかないもんね。(ガサゴソ)」


意を決したのかなんとかロイドの開封作業に取り掛かり始めた。解体した段ボールやらプチプチやらを先に片付けて、超分厚い取扱説明書らしきものも退かし終わると、透明なスキンで中の骨組みが見える人型のロボットが現れた。


「す、すごい…肌が透明だけど、これロボットだ。…電池はどこから入れるんだろう?」


お嬢さん、それだけデカいロボットだと電池じゃ電力不足で動かないと思うんですが…こういうのは大抵コンセントから充電でしょ。電気代バカにならないと思うけど。


「あっ、あった!『ここに永久電池をはめて、この上の電源ボタンを押す』って書いてある。」


・・・すいません、電池で動くロボットだったらしいです。私の常識が間違っていました。謝罪致します。


「これをこうして・・・よし!電源ボタン押していいんだよね?ちょっと緊張するけど…えい!!」


(ピコーン!システムキドウ!)


あひりが電源を入れるとロボットが音を立てて光り始めた。しばらくすると光が治まり、背筋を伸ばすように滑らかに動いた。そして今、ロボットの視線はあひりの方を向いている。


「こ、こんにちわ、ロボットさん…」


「お、ちーす!桃咲あひりさんだっけ?はぁ〜やっと起きれたよ。つかバリせめぇ〜し、あの段ボール。ウチも初期設定は女の子なんやからもっと丁重に扱えって話よね。ま、でもこれでようやく人間社会を経験できるってことだな。マジ、テンション上がる〜♪」


「・・・・」


ず、随分と流暢でギャルみたいなロボットですね…

あの誰とでも親和性のあるあひりさんでさえ、ドン引きしてリアクションに困ってますよ。


「つかこの骨組み丸見えの見た目じゃ恥ずいな。桃咲あひりさん、なんか参考にできるテクスチャない?」


「て、てくすちゃ?」


「うん、写真でも絵でも何でもいいから。」


「そしたら、私の部屋に一旦行こうよ。写真とか絵が飾ってあるから。」


「りょ!」


ギャルロボットと天然っ娘はとりあえずあひりの部屋に行くことにしたようね。まあ、玄関にずっといるとお母さんに見つかって、この面倒臭そうな状況を説明しないといけないですからね。家でも学校でもテンションアゲアゲキャラがいるから、彼女が安息できることを願います。





「お〜、きゃわわなお部屋!ウチ、桃咲あひりさんチに来て良かったわ〜♪」


「そ、そう?・・・なんかちょっと嬉しいな//」


「おっ!これ絵本?…フムフム、なかなかオモロイし〜。ねぇ、試しにこの鳥型ロボットをテクスチャにしていい?」


「それ、私が小学生の時に描いた絵本だよ。何をするのか分からないけれど、さっき褒めてくれたしいいよ。」


あひりさんから許可をいただいた陽気なアンドロイドは手に持っていたSFっぽい絵本に向けて目からビームを照射し始めた。しばらくすると、透明だった肌(スキン)が絵本に描かれている鳥型ロボットと同じものになっていくではないか!ビーム照射が終わると絵本のキャラ通りの姿に変わっていた。どうやら、このロボットはスキャンしたものの情報をテクスチャとして肌に反映させることが出来るらしい。


「す、すご〜い、ダンディバードだ!カッコイイ!」


「ドヤ、精巧じゃろ?変えられるのは見た目だけじゃないゾ〜。文章化されたキャラ設定も一緒に取り込んでるから設定を変えれば、性別も性格も変えられるゾ〜!」


そう言うとダンディバードは内部で設定を変更したのか一瞬止まった後、再び動き出した。


「君が私を生み出してくれた桃咲あひり君だね。君のおかげで私の愛鳥メスドリを悪の組織から救い、守ることができた。君の世界と私の世界は違うから今こうやって出会えたタイミングで言わして欲しい。ありがとう!!」


「だ、ダンディバード〜。やっぱカッコイイよ!これからも頑張ってね。応援してるから!」


・・・なんなんだよ、これは。全くw


「話は変わるが桃咲あひり君、キャラ設定機能はどうする?私のままでいくか、それとも先ほどのギャル子でいくか?」


「うーん。ギャル子ちゃんでいくよ。ダンディバードは大好きだけど、やっぱりあっちの世界で人々のために活躍して欲しいし、それにギャル子ちゃんと話せないのなんか寂しいし。」


「そうか…分かった。私も君の活躍を期待している。では、さらばだ!」


「・・・・た、だいま〜!ね、凄かろ凄かろ?ウチ作った最高名誉技術士、マジやばくね?」


うんうん凄い凄い。私もそのなんとかアンドロイド真面目に欲しいわ。ぶっちゃけ最初にデカい段ボール見た時はただの粗大ゴミだと思ってましたから。・・・あっ、つい口が滑っちゃってすいませんw

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