第四話「名前は一生モノ」
国語の授業で『出藍のほまれ』を『出産のほまれ』と読んだり、『湯湯婆(湯たんぽ)』を『ゆばーば』と自信満々で読んだりしてるあひりさん。それを聞いてゲラゲラ笑いこけて、国語教師に注意されているほまれさん。それを見てクスクスとニヤけているこまろさん。そのニヤけ面を見て何だか楽しそう!と微笑むあひりさん。笑顔が循環する授業でしたねぇ〜w
一時限目終了の小休憩には桃・柿・栗のトリオが集まって何やら話をしていた。
「こまろちゃんって名前が3つあるんだよね?栗宮ちゃんとかモンブランちゃんとかこまろちゃんとか色々呼び方選べるのなんかいいな〜!」
「まあ確かにね。ミドルネームがあるってなんかカッコイイっちゃカッコイイ。」
栗宮お嬢さまの名前についてのお話をされているらしいです。大昔の時代は大変な功績を成した者にのみ与えられていた称号・名誉という扱いだったって聞くし、今はそれが皆に等しく与えられますから価値あるものですよ。それに一生モノですからね。
「別に正式なミドルネームがあるわけではありませんわ。元は栗宮こまろですけれど、ワタクシの大好きなモンブランを加えれば、より一層華があると思いまして。そう名乗らせていただいているだけですわ。」
「えっ!?ナンダソレ…」
つまるところ勝手に改名して勝手に名乗っているだけの勝手なお嬢さまだったってことか?流石に彼女らの活躍を見守っている私も桃咲氏と柿木氏の『ナンダソレ』リアクションに同感しますわ。ってか何気に命名した親disってんじゃね〜ぞ小娘が〜!親に謝れや〜、貴様〜!!そしてさっきのマジメな語り撤回させろ!
※
「あひりさんとほまれさんもお好みものを名前につけてみたらいかがかしら?きっと華やかになると思いますわよ。」
「私のミドルネームか〜。何がいいのかな〜?」
「はいは〜い。あひちゃんの名前は私が決めま〜す。ズバリ!・・・桃咲・アヒージョ・あひり!!」
「だから、私はアヒルじゃないってぇ〜!!(プンスカプンスカ)」
「いや、アヒージョは食べ物なんだが…」
また初日に見たようなやりとり始まった。飽きないね〜この二人は…っておや?またもや思考の海に沈んでいく表情をしているのが一名。
「・・・何、これは…(あのあひりさんがほまれさんに辱められているですって!?ワタクシが練るに練って導き出した攻略法でようやく勝算が掴めそうな強敵をあんないとも簡単に!?ほまれさんはすでにワタクシのしもべ。下級身分のくせに生意気ではありませんこと!…あってはなりませんわ、そんなこと。)」
「それじゃ、今度は私がほまれちゃんの名前をつけ・・・」
「ほまれさんのお名前はワタクシがつけさせていただきますわね、ね!(分かってんだろうな?お前は私のしもべ。あんま調子乗るなよ!的なオーラ)」
こまろさんからなんか闇の威圧感を感じるんですが…
「あ、まあ…どうぞ…(こいつ、私にまた脅しかけてんな。抵抗できないの分かってていい気になりやがって。今にその天狗鼻へし折ってやるからな!)」
蛇に睨まれた蛙状態でほまれさんも何かを察したのかウンウンと頷くことしかできなかったようですね。まあ蛙サイドからも叛逆の野望的なオーラを感じ取れるんですけれどもね…
「ウフフ、それではほまれさんは今日から『柿木・https://homaretyankawaii.com/picture・ほまれ』でいきましょう!素敵なお名前でしょ〜!(ゲス顔ニヤニヤ)」
「ちょ、それまさかおま…ヤメロ〜!・・・じゃなくて、やめて下さいませ〜こまろサマ〜…」
「えいちてぃてぃぴー?って何?」
「あひちゃん!世の中には知らない方がいいこともあるのよ!だから大丈夫。解らなくてもいいんだよ。」
最早、ただの晒しでミドルネームですらないんですがそれ…
一応URL検索してみたら何も出てこなかったから、お嬢のフェイクっぽいね。ほまれさんも凄い形相でスマホ検索してるけど、その事実を知って安堵の表情を浮かべた後にゲス顔令嬢に鋭い睨みを効かしているし。平和ですねw
※
「ほまれちゃんとこまろちゃんだけ名前付けしてズルいよ〜。こまろちゃんの名前は私が考えるからね!」
「ワタクシはすでに最高の名前がありますから大丈夫ですのよ。」
「あ、そっか。・・・じゃ、じゃあニックネームを考えるよ。名前が3つだと長いしね。」
「あら、それは素敵だと思いますわ。ぜひ、お頼みしますわ。」
私も名付け仲間に入れてと言わんばかりにどうしても名付け親になりたい天然っ娘。しばらく手を額に当てたり、推理してる探偵みたいに顎に手を当てたり、首を傾げながら手をこまねいたりと結構真剣に思慮中。
「うーん、ええーと……はっ!よし、決まったよ!モンブランとこまろを略して、『モブこまろ!』。呼びやすくてすごく可愛い名前じゃない?『モブこまろ』って。私頑張った。えへへ//」
「も、モブ・・・」
「あひちゃんナイス〜!!悪役令嬢がざま〜ねぇ〜なぁw(小声)」
あひりさ〜ん、その名前はこまろさんにはクリティカルヒットだったらしいですよ。魂が抜けたようにまんまる白目で上の空を眺めて呆然と立ち尽くすモブキャラ(笑)
(何、モブって・・・栗宮家は代々、偉大な功績を残してきた勲章持ちのおじいさま・おばあさまの血を継ぐ大財閥一族なのよ。それに恥じぬようにとワタクシも幼少から学業・スポーツ・ビジネスをトップレベルまで引き上げて多くのコネクション・名声を獲得してきているのですよ。
その高貴なワタクシ『栗宮・モンブラン・こまろ』はどう考えても世界を救い、神をも超越した力を持つ唯一無二の英雄で、人々から賞賛され続ける主人公がふさわしいのですわ!
それなのに、あの娘にとってワタクシは主人公キャラはおろか主要キャラですらない石ころ程度だという認識なの?
…まさか、ご自身が物語の主人公だとお思いと?←【注:桃咲あひりは実際この物語の主人公です】
・・・ウフフ。ワタクシにも矜持がありますわ。やはり桃咲あひりさん、あなたはワタクシ…いや、栗宮一族に対する不敬という大罪を赤っ恥で跪いて贖ってもらいますわよ。覚悟なさい!!)
何だかモブキャラが更なるパワーを得たように一瞬感じたんですが…気のせいですかね?
「こまろちゃんどう?『モブこまろ』気に入ってくれた?」
「えっ!?・・・いや、あひりさんのお気持ちはものすごく嬉しいのですが、ワタクシは『こまろちゃん』って言っていただける方がもっと嬉しいです…ね。はい。」
強敵認定されている天然っ娘に純粋無垢で眩しいまでの興味津々ニコニコ顔で言い寄られては、流石の悪役令嬢も人の心を感じ取ったのかタジタジな対応になってしまったようだ。こまろさん、あひりさんがホント苦手っぽいね。頑張れ!
※
「そ、そうなんだ。いいと思ったんだけどな〜。じゃ、じゃあ別のニックネーム考えr…」
「ああ〜、と、ところであひりさんって未来から来たアヒル型ロボットなんですよね?彼氏さん持ちで何か人には言えないことあるとか?ほまれさんから伺いましたけど。」
「(ギクっ!!こ、コイツ〜)あ、あ〜私ちょっと用事思い出したわ〜、じゃあね〜…」
明らかにバレバレなウソつくからほら〜!また、お嬢に楯突いたと思われてなんかされても知りませんからね。
「…あれ、おかしいなあ。私、ほまれちゃんにも話してないと思うんだけど?…絵本のお話のことでしょ?」
「はい?え、絵本?」
その場からズラかろうしてたほまれと絶対ウソだと知って話を吹っかけたであろうこまろは二人とも拍子抜けしている様子。
「うん。私が小学生の時に描いた絵本なんだけど、近未来から来た鳥型のロボットが愛するメスどりのために戦う物語なの。でも、その鳥型のロボットは正体をまわりに知られてはいけないから、多くを語らないダンディさんなの。それがさ、凄くカッコイイんだよ!私もう好き過ぎて彼氏にしちゃってるぐらいだもん//」
「ナンジャソレ…」
お調子者のあからさまなウソ秘密3選が書籍化されてたみたいですよ。喜べw
ってか、なんやねんその絵本。しかも自作してその作者自身がどっぷりハマっているのがなんとも…あひり先生、私あなたを尊敬します!!
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