第三話「大人の常識」

只今、HRが一通り終わって一時限目の国語が始まる前の小休憩中です。周りの生徒たちのほとんどは金持ちお嬢さまにあやかろうとこまろに集っていた。他方であひ・ほまコンビはまた新鮮なコント劇を繰り広げようとしているのであった。


「あひちゃんの自己紹介、もう完璧だったよ。ップププ〜!スリーサイズもグッド(笑)」


「ホントにほまれちゃん!よかった。徹夜してまで真面目に考えたんだよ//」


「えっ?(ボケなし徹夜であのスペックってマジ?)」


どうやら彼女にとってあの自己紹介は一点の曇りもない天衣無縫なものだったらしい。徹夜してなかったらどんな仕上がりになってか気になるな…


(あ〜ひ〜る〜の〜う〜た〜が〜♪き〜こ〜え〜て〜く〜る〜よ♪ぐわ、ぐわ、ぐw)


「あっ、はいもしもし・・・どちらさまでしょうか?」


ほまれのスマホに着信があったらしい。通話をしながら周りをキョロキョロして、何だか様子が怯えてるようで変な感じに見えるが…ってかなんだその着信音はw

しばらくキョロキョロした後、焦点が一点に定まった。こまろお嬢の方に。


「こ、こまろちゃん。なんで私の連絡先知ってんの?」


「あらあら、使用機器さえ分かってしまえばシステム解析、データベースへのハッキングなんて私にとっては容易いことですの。それよりもほまれさんにご相談がありまして…廊下の方へよろしいかしら?」


いやいや、なんか大したことじゃないように流されてますけど、ヤバいことしてますからね。それ犯罪ですからね。ってほまれさんも思っていることでしょう。まあ、彼女の場合は訴えられても謎の力で揉み消せるんだろうけどw





「で、ご相談ってなんぞや?・・・それよりも!…いや、な、何でもないです。」


お嬢さまパワーで個人情報をパクられたほまれは言われるがままにこまろが指定した場所(廊下)に赴いていた。リークの件に関して言及するとこれ以上何されるか分からない、何より相手が恐ろしい存在だと思ったのか追及は避けたみたいです。


「ほまれさん、あひりさんとは入学初日から仲が良いらしいですわよね。あひりさんがどんなお方かワタクシ大変興味がございまして、ほまれさんの知っている範囲でいいですの。教えて頂けませんか?」


「あひちゃんの事?うーんそうだね・・・可愛くて、ノリよくて、イジり甲斐があるとこかな。プンスカしてるあひちゃん最高に愛おしいし(笑)」


「あのあひりさんを『イジり甲斐がある』ですって〜!?」


こまろさんめちゃくちゃアメージングだったのか、声が廊下中に響き渡ってますよ。お嬢にとってあの天然っ娘を辱めることは大変な功績であり至難の業という認識なのだろうかね。


「ご、ご教示くださいませ!一体どうしたらあの娘を赤っ恥にして私の前で跪かせ、憤怒と悲哀に満ちた表情で赦しを乞わせることが出来るのかを!!」


お嬢、本性が丸裸になってますよ。

逃がさんとばかりに両手を握られ、キラキラとした星形の瞳で興味津々に言い寄られては流石のほまれさんも困惑。


「ご教示と言われても・・・そんなの特にないけど。」


ほまれに言われたその一言で純粋無垢だった彼女の表情がガッカリモードになり、いつもの状態にリセットされた。こまろは自分のスマホを取り出し、つまらなそうにポチポチいじり始めた。


「そうですか…ならいいですわ。ほまれさんのこの可愛らしいお写真を私だけの秘密にしておこうと思っていましたけど、クラスの皆様にも知ってもらった方がいいですわよね〜。仕方ないですわよね〜。」


こまろはそう言うと自身のスマホ画面をほまれに見せつけた。そこにはなんと!




 ・自宅でベットの布団を蹴り飛ばしておへそを丸出しでグースカ寝ているマヌケなほまれさん。

 ・姿見でこれ似合うかしら?みたいな感じでフリフリメイド服を照れ顔で試着しているデレデレなほまれさん。

 ・ママこれ買って買ってぇ〜〜。びえ〜〜〜〜〜ん!!という表情で泣き顔しながらおもちゃを指さしてる幼少のほまれさん。

 ・サングラスかけながらシュガースティックのお菓子をくわえて、連れとスリーピースしてズッ友!とかデコペンで書いてあるツッパリなほまれさん。etc…




ヤバい。ほまれさん顔面真っ赤なトマトで蒸発しそうになっておられる…ってか、どういう経路で入手したのよ、それ。マジで恐ろしいぞこの貴族は。


「ま、ま、ま、待って待って。どうしてそれを!?あ、アンタまじでナニモンヨ!!」


「お答えしていただけないんですよね〜。えーと画像貼付、SNSの1ーAグループ全員に公開で投稿っt」


「分かった分かった!!何を知りたいか分からないけど、何でも答えますから〜!!」


こまろが投稿ボタンを押す指があと数ミリ寸前で止まった。完全にほまれを手玉に取り、コントロールしている。最早、お嬢の紐で操られたマリオネット。まな板の上の鯉である。それを彼女も確信したのか『ニヤリ』としたイヤらしい悪魔の表情を浮かべておられる。


(こ、これだわ。何という快感ですの!なす術もなく恐怖に戦き、思考が錯綜し、行き場のない感情を堪えるも隠しきれず、それが表情として顕になる。ワタクシのしもべとしてひれ伏し、おもちゃのように手のひらで踊らされ続ける…たまらないですわ!

あっ、そうですわ!ほまれさんを辱めながら支配して、強敵あひりさん攻略の養分になっていただこうかしらね。・・・ウフフ、面白くなってきましたわ。)


こまろさんが何を考えているか外からは分かりませんが、何か良からぬ思考をしているのだけは分かりますわ。見た目はエレガントなお嬢さま、中身は下衆な小娘なのだろうw


「あらら、こんなにも可愛らしいお写真を皆様に公開出来ないのも寂しいですわねぇ〜。ほまれさんから待ったをかけられたなら仕方ないですわよね。ではでは、お聞きいたしましょうかしらねぇ〜?(ゲス顔ニヤニヤ)」


(こ、コイツ、私を完全におちょくってやがるな。金持ち令嬢だからって『謎パワー』使って好き勝手しやがって。絶対仕返しして赤っ恥かかせてy・・・待てよ。この娘を一度でもいいから辱められれば、あのお嬢さまズラしてる天狗の鼻をへし折ることができるのでは?

人々からも笑われて尊敬されなくなればヤツは権力を失い、存在意義を無くすはず。下剋上成功となる!なぜかあひちゃんが苦手っぽいみたいだから同盟組めばこちらが有利になるはず。・・・イヒヒ。やってやろうじゃんよ!)


なんかこちらもやられている側のはずなのにニヤニヤしているんですが・・・新学期始まったばかりですから楽しい学校生活が送れるといいですね〜(他人事)


「えーと、そしたらあひちゃんの秘密を3つ教えるよ!

・一つ、実は愛してやまない彼氏がいる。

・二つ、実は人には言えないものすごいことを遂行しようと陰謀している。

・そして三つ、実は未来から来たアヒル型ロボット

こまろちゃん。これはあひちゃんと密接に関わった私しか知らないマル秘情報だから流出厳禁ね。」


「ほ、本当なのですの。その情報は!?」


「本当だよ。私を信じて!(全部ウソに決まってんだろ、ヴァーカ!)」


・・・この二人、高校一年生にして早くも社会人スキル『本音と建前』を会得している素晴らしい生徒ですことw

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