第二話「ANGEL? or DEVIL?」
ジリジリジリ~ン♪_ジリジリジリ~ン♪_ジリジリジリ~ン♪
目覚まし時計の音が桃咲家の一人娘の部屋から鳴り響く・・・いや、かれこれ2,3分は鳴り続けていて止まる気配がない…
「・・・ん~もう食べられないよお母さん」
幸せそうな夢の世界に入っているところ申し訳ないのだが、目覚まし時計は振動で小刻みに移動。落下。そしてあひりの顔面を上手く捉えた。
「っんゲ!!・・・痛たたたぁ~!!・・・ん、あれ?もう朝じゃん!!」
流石に目を覚ましたか。とても目覚めのいい朝を迎えられたようでなによりです。
目覚まし時計の角部分の跡を真っ赤に刻まれたあひりさんは眠そうな表情で顔を洗い、ボサボサの爆発頭を整え、可愛い制服を着て朝食を食べにリビングへ向かった。
「おはよう。お母さん」
「あら、おはよう。あひり」
お母さんが先に朝食を作って待っていたようだ。本日の朝食はサンドイッチとポテトサラダ、そしてあひり専用激甘コーヒーだ。・・・言うまでもないがコーヒーは常人にはヤバイやつなので、製造工程および詳細はシークレットで。
「わー!サンドイッチだ♪」
「今日のサンドイッチはお母さん久々に気合入れて作ったのよ」
「うん。おいしいよ。コーヒーにも合う~」
母親、娘共に会話も弾み、笑顔でほのぼのとした朝。いや~いいですな。時間も忘れてしまいそう。
「……って、いけない。もうこんな時間!!はわわ、急がなきゃ!!」
「あひりあひり!また靴左右違う!」
「はわわ、はわわ!!」
・・・本当に時間を忘れていたみたいです(笑)
※
昨日に引き続き、出会い頭で電柱に二度目の痕跡を残して無事?校門前に到着。
「はぁ。なんとか間に合った」
「おっ、あひちゃんではないですか!!」
息切れで呼吸が荒くなっているあひりの後ろから聞き覚えのある得体の知れてる声が・・・
衝突事故を起こしておいて半ば無罪放免されている犯人ボイスを無警戒状態で聞かされれば、「うわぁ~!!」って言って体が反射的にのけ反りますよ。そりゃwww
「な、なんだほまれちゃんか。」
「なんだ。って・・・あひちゃんにとって私はちっぽけな毛虫のような存在だったんだね。そしてまるで人を罪深き女みたいな目で見つめてくる。ああ、私は罪深き毛虫だったのかぁ。」
いや、実際罪深き女だろうが。あんたは!!毛虫かどうかは知らんが。
「・・・なんかよく分かんないけど。と、とりあえずおはよう。ほまれちゃん。」
「お、おはよう。(軽く流された~。)」
あひりさん。ナイス天然!
「そうそうほまれちゃん。昨日のテレビでさ~、あの有名人が着てた服が可愛くてさ~(以下云々)」
「・・・ああ、私は罪深き毛虫~♪。K・M・S、毛虫~♪」
ほまれさん。結構効いているらしい。メンタルは毛虫で間違いないみたいねw。長いこと引きずらなければいいけど。
テンションの落差が激しかった二人のやりとりはしばらく続き、その歩はようやく校舎内に辿り着いた。
「1-Aは・・・ここかぁ~!!」
「ほまれちゃん。そこは音楽室だよ!」
「それじゃ・・・ここだぁ~!!」
「いや、そこはトイレ!」
時間も押しているというのに、校舎に着いてもまだコントしてんのか?この二人は……
ベートーベンさんも花子さんもさぞ、ビックリされていることだろう。
「あっ、見つけた!ここだよほまれちゃん。早く行こ。」
「待て!扉の上に黒板消し爆弾が挟み込んであるかもしれん。警戒を怠るな。」
「ば、爆弾!?それは危ないよほまれちゃん。私、急いで警察の人呼んでくるね。」
「えっ?ちょっ、待ってあひちゃん!冗談!じょう・だ・ん~!!」
ほまれ司令官。無駄な混乱を招き、全力疾走するあひるをひたすら追いかけるハメに。
・・・ってか、ホントに時間大丈夫なのかよ?
※
なんとか、あひるの捕獲に成功したほまれは再び1-A教室前に戻ってきた。
「な~んだ、冗談なら冗談って言ってくれればいいのにさ。」
「何度も言ってたわ~い!」
スタミナ切れのほまれさんに対して、天然っ娘の更なる追撃が来た。まあ自業自得なんですがね。
(ガラガラガラ)
「おはようございま~す!」
「・・・お、おはようございます…」
ようやく教室の扉を開けた二人が元気よくシンクロして挨拶する。教室にはすでに生徒がたくさんいた。皆、緊張しているのかごく一部の人だけがボリューム小さめで挨拶を返してくれたようだ。黒板に目をやると一枚の張り紙がしてある。
「なになに、『出席番号を確認してその番号の席に座ってください』だって。」
出席番号は大体、五十音順で割り当てられるので・・・桃咲はマ行後半、柿木はカ行前半。二人の席は結構離れた位置になりますねぇ~。ドンマイ!www
「そっか、ほまれちゃんとはここでお別れか。元気でね、私もいろいろ頑張るから。」
「そ、そんな一生の別れみたいに言わなくても・・・ほんの数メートル離れてるだけじゃんよ…」
でも、なんだかんだで内心寂しいんでしょ!ほまれさん。
(ガラガラガラ)
「皆さん、おはようございます。席に着いてください。」
二人が教室に入って間もなく、容姿端麗な女性担任教師が入ってきた。黒板前で繰り広げていたあひ・ほまコントを中断し、言われたとおりに自分たちの席に着席する。
「HR(ホームルーム)を始める前に昨日出席できなかった方がいるので、その三人に自己紹介をしてもらおうと思います。」
あひり&ほまれはその女性教師に見覚えがあった。そう、一之瀬晴香先生だ。昨日初対面したはずだが、改めて見るとどの画角からも美しい。惚れちゃいそう//
「出席番号順にいこうかしらね。それじゃあ、柿木さんから!」
美人教師・一之瀬から指名の受けたお調子者・ほまれは席を立ち、クラスの人たちの熱い視線を一点に集める教卓の前に移動した。
「すいません、皆さま。入学初日にあひると交通事故を起こしてしまってご紹介が遅れました、柿木ほまれと申します。好きな動物はあひる、好きな食べ物は北京ダック、アヒージョです。どうぞよろしくお願いします。」
・・・ほまれさん、好きなもの絶対嘘だろ。クラスの皆さんもほぼ全員拍手しながらも怪奇な目でざわざわしてますよ。
「はい、柿木さんありがとうございます。では次は…栗宮さんお願いね!」
名前を呼ばれると高身長で『ボン!キュッ!ボン!』のスタイル抜群のお姉さん系お嬢さま風のJKコスプレした大人が教卓の前に出てきた。どうやら、あひりとほまれ以外にも入学初日に欠席してた人がいたらしい。まあ、少なくとも彼女らみたいなしょうもない理由ではないとは思いますがね。
「皆さま、おはようございます。栗宮・モンブラン・こまろと申します。前日は私の使いの者がちょっとした失態を犯してしまい、それ故に出席が出来ませんでしたの。誠に申し訳ございませんわ。そのお詫びといってはなんですが、本校にはブルジョア社製デスクとチェアを1000組寄贈させて頂きましたの。お友達もたくさん作って、たくさんいじっt・・・いや、たくさん遊んで仲良くしたい所存ですので、どうぞよろしくですの!」
…(ざわざわ、ざわざわ)
「ミドルネームかよ!それに使いの者って?」「容姿端麗、才色兼備、文武両道っぽい男の理想キター!」「学生の身分で学校に寄贈って…資産家すぐる。」「喋り方がすでにお嬢さまだわ、近寄りがたい…」「俺たちと同い年だよな、おい。」
どうやら凄いスペックの人材がこの学校に入学してきたらしい。さっきのほまれさんのトークがK・M・S(毛虫)のようだ。
「すいません、ちょっと質問なんですけど・・・その使いの者さんはどういう悪いことをしたんですか?例えば〜・・・ケーキを買い忘れたとか???ってそんなことないですよね、あはは!」
あひりさ〜ん!おとぼけ全開の質問ですよそれ。ほまれさんも流石に待て待て!みたいなジェスチャーしてるし。相手はモノホンのお嬢さまよ。そんなつまらない理由で学業をサボるような人では…
「・・・!!」
って、えっ?あれ?こまろお嬢、なんか赤面してまんまる白目でポカーンと天然っ娘のほう見たままフリーズしてますけど・・・おい、まさか図星とか。嘘だろ!?
「な、何なんですのあの娘。栗宮家の内情をなぜ知っているの!見透かされている?この私が辱めに遭わされている?…あの娘に?…屈辱的、実に不愉快ですわ。この苦痛、あの娘に絶対味わって貰いますわよ。・・・フ、フフフ。(小声)」
こまろさんなんかブツブツ独り言言ったと思ったら、急に不気味に微笑し始めた。なんかこの娘も色々とヤバそう感漂うw
「え、えーと。もういいかしら。桃咲さんの自己紹介に移っても…」
カオスな雰囲気を断つかのように一之瀬先生が進行の舵を切る。
「栗宮さんありがとう。じゃ、じゃあ最後は桃咲さんよろしく。」
指名を受けて教卓前に向かうあひりと教卓から自席に戻るこまろ。そのすれ違いざまにお互いに笑みをぶつけ合った。それはまさに『天使の微笑み』と『悪魔の微笑み』が対立した瞬間だった。邂逅を終えた天使は人々の前で名乗りを上げ始め、悪魔は玉座に腰を下ろした。
「み、皆さん初めまして桃咲あひりと存じ上げます。電柱と柿木さんとぶつかって保健室で骨100本折れちゃったとか冗談言ったり、教室の扉に爆弾があると聞いて警察の人呼びかけたりと色々ありましたけど、ええっと…今日に至ります。あっ!スリーサイズはHOP、STEP、JAMPです。どうかよろしくオメガいたします。」
・・・あひりさん、もう自己紹介めちゃくちゃ。ほまれも失笑してて、周りの同級生たちもクエスチョンマークが頭の上に出まくってますよ。一之瀬ティーチャーも流石に困り顔。ん?いや、ただ一人だけ宇宙空間の広大さ・自然界の複雑なシステムという難解を解き明かそうというようなクソ真面目で難しそうな顔している者がいる。
「この頭脳明晰と言われた私が理解不能?…いや、絶対に認められませんわ!それに骨100本折れた〜冗談!とか教室に隠されてた爆弾処理をしよう!だなんて、少なくともタダモノではありませんわ。もしかして、スリーサイズも私に対する挑発!?フフ、いいわよ。ますます興味深い、あの娘。私の前で赤っ恥で跪かせて、その可愛いお顔を拝んでやるわよ。フフフ。」
・・・ま、まあとりあえず賑やかなクラスになることは間違いないでしょうね。このクラスは。(笑)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます