ももっ娘☆スクールライフ

夕暮れ時雨

第一話「はじまりの会」

「いってきまーす」


スズメたちがチュンチュンと鳴く早朝6:00。明るい声がとある家に響く。

おニューな制服に身を纏い、髪は流行りの清楚系黒髪ロング。身長140cmと小柄で、胸も小柄。

彼女の名は桃咲あひり。まあ、よくいる天然頑張り屋のヒロインだ。


「ちょっ、あひり!」


「ん、なに?お母さん」


「…靴、左右違うやつ」


「わああ。は、恥ずかしいよう//…」


はい、こんな具合の主人公っぽい娘っす。

今日から新学期がスタート。小さな小さな胸に心を躍らせ、パンを口にくわえて遅刻遅刻~♪言いながら学校へ向かう。

出会い頭で電柱にぶつかり、犬のク〇をジャンプで回避し、おはようございますでランドセルの中身ひっちゃける…とまではいかないが、

いろいろ試練を乗り越えながら無事目的地へ到着。


「ぜぇ~、はぁ~。ぜぇ~、はぁ~。…っん?」


ふと、あひりの頬にひとひらの桜の花びらが舞い落ちた。見れば校門から校舎までの道が街路樹のようになっていて、満開の桜の木がその両側に多く並んでいる。

まるで、あひりの新たな門出を祝うかのよう。彼女自身もそのように思ったのか疲れなんか忘れてしまい、なんだか照れくさくなってきた//。

(私ここで上手くやっていけるかな?楽しく過ごせるかな?友達たくさんできるかな?・・・先生に怒られたりしないかな?)とかいろいろ思いに耽っている少女。

の後ろから高速で近づいてくる得体のしれないものが!


???「どいて、どいてぇぇぇぇぇぇぇ~!!」


「ふぇ?」


(ドッ!ガチャ~ン!!)


あ~あ。折角の雰囲気台無し…どころではないな。失敬。


「痛ててて~」「あっ!ご、ごめん大丈夫?」


「うっ、あっ、ふぁい。らいろうふれすぅ~☆」


・・・うん。大丈夫じゃないなこれは。おっと失敬。


「だ、大丈夫なわけないよね…(保健室に連れていこうっと。)」


得体のしれない何かは桃咲あひりを保健室に連れていくことにした。





「…ん、ん、ん?あれ、ここは?」


ようやく正気に戻った少女は保健室のベッドに横たわったまま、瞳をキョロキョロ動かす。

窓からはまぶしいほどの光が差し込み、床はゴミひとつない綺麗な白色。

遠くに目をやると2段式の棚の上段になんだかよく分からない薬品が並んでいて、その横に模型のドクロ、体重計と身長計がある。


「保健室!?なんで私、保健室にいるの?」


自身の状況が掴めないあひりがあたふたとしてると、


「あっ!目が覚めた?さっきはホントごめんね。もう私のモウレツタックルで骨100本ぐらい折れちゃったのかと心配しちゃったよ。」


「あ、えぇ、その~…だ、大丈夫だった。です。」


ベッドの隣でパイプ椅子に座っていた女の子が突然話しかけてきたもんだから、変な感じの返答になってしまった。


「・・・骨100本って!!そんなに折れてないです!」


「あははは、ごめんごめん。冗談だよ冗談。」


「もう…」


とりあえず天然頑張り屋のヒロインは大したけがもなく元気そうだ。


「…もしかして今日から新入生の人?」


「え、あっ、はい。そうです。」


「私と同じだ。」


「ほ、ほんとですか!?」


「私、柿木ほまれ。ソチは?」


「そ、ソチって(笑)。桃咲です。桃咲あひり。」


「いい名前だね。よろしくね、アヒルちゃん。」


「こちらこそよろしく・・・って。アヒルじゃないですぅ!あひりですぅ!」


「あははは、冗談冗談!あひちゃんよろしくね。」


「も、もう…」


あひちゃんには反応しないんかい。なツッコミは置いといて、とりあえず仲良さそうな雰囲気で良かった良かった。

こんな形で友達ができたのも何かの巡り合わせだろう。





あひりのケガも大したことはなく、すぐに回復したので2人で職員室に向かう。入学初日の朝から衝突事故を起こし、

入学式に出られなかったどころか自分のクラスすらも分かっていないからだ。


(ガラガラガラ)


「失礼します。」


2人、同タイミングで声を発する。


「あら、桃咲さん?あと、柿木さんでしたっけ?」


扉の一番近くの席にいた若い女性教員がその声に反応して、こちらの方へやってきた。


「桃咲さん。けがはもう大丈夫なの?無理しないでいいのよ。」


「はい、もう大丈夫です。」「それよりも私…自分のクラスが分からなくて。」


「はいは~い!私もで~す!」


得体のしれない何か・・・じゃなくて、ほまれもあの衝突事故を起こしてから保健室でずっとあひりの看病をしていたらしく、彼女も自身のクラスを把握していなかった。


「桃咲さん、柿木さん。あなたたちのクラスは1―Aです。」


「えっ!?あひ(ほまれ)ちゃんと同じクラス!?」


またも2人の発言がシンクロした。続けて女性教員が発言する。


「そして私、一之瀬晴香がクラス担任になります。」


「えっ!?先生が私たちのクラス担任!?」


またまた発言がシンクロ。この2人、息ぴったりで相性が◎なのかもしれない。


「い、一之瀬先生よろしくです。ほまれちゃんもよろしくね!」


あひりがペコっとお辞儀をする。


「あひちゃんと同じクラスだなんて(もしや、これは何かの運命!?)・・・って、あっ!あひちゃん、先生よろしく!」


ほまれは何かをあれやこれや妄想していたようだが、すぐに現実に戻った。


「よし、それじゃあ我らがクラス1―Aに行こうではないか!」


ほまれがワクワク感満載で2人に声をかけるも・・・


「それがねぇ、柿木さん。入学式はもちろん既に終わっちゃっているけど、HR(ホームルーム)も今さっき終わったところなのよ。だからクラスのみんなはもう下校しちゃったわ」


一之瀬先生の言葉にMyクラスに歩を進めようとしていたほまれの歩調は崩され、盛大にズッコケそうになった。まあよくよく考えれば、先生が職員室にいる地点で察しもついた気もする。


「2人には今日渡すべきプリントを渡しておくわね。ちょっと待ってて」


そう言うと先生は職員室の自分のデスクに向かっていってゴソゴソし始めた。


「なんか残念だったね。ほまれちゃん」


「残念、無念、また来年だよ!あひちゃん」


「入学証書もらいたかったよね。桃咲あひり!はい!って感じで」


「残念ってそっちかいな!・・・ん?いや、ってか卒業証書じゃないか?それ」


ほまれのお調子者っぷりは登場段階から発揮されていたが、ここにきてようやくあひりが自前の天然っぷりを現してきたようだ。


「お待たせ。これが桃咲さんの。こっちが柿木さんのね」


一之瀬先生がデスクからこちらに帰ってきて、2人に数枚のプリントを渡す。


「ごめんね。今日はクラスの子たちと顔合わせできなかったわね。明日は2人に自己紹介してもらおうかしら?」


「自己紹介かぁ…分かりました。内容考えておかないとね。ほまれちゃん」


「そうだね。バスト、ウエスト、ヒップを調べておこうっと」


「あっ!私も調べておかないとまずいかも…」


「・・・いや、冗談だってば…(笑)」


傍から見ていた一之瀬先生は苦笑いしながら2人の下校を見送るのであった。





入学式にもHRにも出られずに、ただ保健室と職員室前でお笑いコントをしにいっただけの2人だったが、初日でお互い馴染めている感じなのは結果オーライと言えようか。

今もこう・・・影踏みしながら下校しているし。


「影のところしか踏んじゃダメだからね。影のないとこは踏んだらゲームオーバーだから!!」


「えっ、待って!ほまれちゃん。」


「スタート!!」「おーう。あひちゃんギリセーフ。」


「もう…って、あれ?影が動い…わあああ~ま、待ってぇー!」


「あはははは。トラックと競走する桃咲あひる。ブロック塀の影に無事移動完了。」


「あ、危なかった~。って、あひりだ・か・ら!」


「げっ、今の聞こえてたのか!?・・・(地獄耳の持ち主か!?)」


「と、ところでさ、ほまれちゃん。あそこから先、影全然ないけどどうするの?」


「えっ?あ~それは…(全く考えてなかった~w)ゲームオーバー。終了ってことで…」


「ええ~!詰みってこと?無理ゲーじゃん!」


「・・・う、うん。(あひちゃんの口から”詰み”とか”無理ゲー”って言葉出てくると思わなかった…)」


始まって僅か数分でこのゲームは終了してしまったらしい。その後は2人とも大人しく雑談しながら分かれ道まで歩を進めた。


「あ、私こっちだから。また明日ね。ほまれちゃん。」


「うん。シーユーダック。明日教室でまた会おう。」


「あひるじゃないってぇ~!」


「いや、そこ訳さなくても…」


こうして2人はそれぞれのマイホームに帰還するのであった。

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