第11話 夏休みとは、イベントが起きるものである

夏と言えば海。

海と言えば・・・。

「ねぇ月」

「どうした小春」

「あれって水流操作よね」

「そうみたいだな」

そう。

海と言えば・・・水流操作である。

「いやぁ圧巻だね」

「そうだな」

俺たちは、引き続き海に居る。

美沙さんが荷物番をしており、俺と小春は二人で飲み物を買いに来ていた。

最初は、俺だけで良いとは言ったが、付いて行くの一点張りだった。

「水流操作って何か便利そうだよね。お風呂掃除とか」

「めちゃくちゃ家庭的な能力になったな」

今、目の前で水流操作のパフォーマンスが行われていた。

自由自在に水を操り、まさに芸術だ。

「それで月。どうしてあなたはあの能力者の方ばかりを見ているのかな?」

「いや、単純に凄いなぁって」

「あの女が良いの?」

「へ?」

水流操作の能力者は女性なため、小春は大変ご立腹だ。

「俺は、小春以外の女性に興味ないよ」

「へへへ」

「ほら、飲み物買いに行くぞ」

「はーい」

俺たちは、自販機に向かった。





「美沙さんは何が良いかな」

「んー。水で良いんじゃない」

「小春は?」

「私も水で良いよ」

「じゃあ水を三本っと」

水を三本買い、美沙さんの下に戻る。

「にしても暑いな」

「夏だもんね」

「小春は、日焼け止めとか塗ってるか?」

「一応ね。月は、焼けてるのと白いのはどっちが好き?」

「どっちでも良いかな。だって小春は小春だろ」

「・・・そういう所が好き」

「ん?」

「ううん。なんでもない」

「そうか」

「うん!」

小春が意気揚々と来た道を戻るのだが、美沙さんの所に帰り着くとまた面倒なことが・・・。

「ねぇお姉さん。一人~?」

「俺たちと遊ばない?」

ナンパだ。

どうしてこの家族は、頻繁にナンパされるんだ・・・。

「ごめんなさいね。私、既婚者なの」

まあ断るわな・・・。

「良いじゃん。余計燃える」

やばいな・・・。

「がっつき過ぎは良くないよ」

「じゃあ!お姉さんを満足させます!!」

「俺たちと一緒に!」

会話のキャッチボール出来てないなぁ。

まあ助けるか。

「小春、さっさと戻るぞ」

「え?」

「知らんうちにお前に誰の子か分からん弟が出来るぞ」

「???」

まあ冗談はさておき、本格的に美沙さんを助けに行くか。

「美沙さ~ん。お待たせしました~」

「月君」

「誰だお前?」

「何だよ。今お前みたいなのいいから。ほらあっち行った」

何で粘るんだよ・・・。

「はいはい。面倒になる前に帰った帰った。せっかくの夏休みなのに」

「あ?」

「何、調子乗ってんの?」

あー。

面倒な事になって行ってる気がする。

「おい、お前こっち来い」

「来なかったら殺すぞ」

脅迫って立派な犯罪だよなと思いつつ従うことにした。

「じゃあ美沙さん。小春をお願いしますね」

「う、うん」






俺は、ナンパ男と話をつけるために移動したのだが・・・。

「おい」

「何だよガキじゃねぇか」

「粋がってるだけだろ」

「こんなのに日和ってんのかよ」

ざわざわ・・・。

さっきまでは二人だったのにお仲間か知らないが、今では十人近くの男に囲まれていた。

「わー。怖いー」

棒読みで恐怖を伝えたが・・・。

「あ?」

「さっさとしばこうぜ」

「そうだな」

ポキポキ・・・。

あの指鳴らす奴って、何?

意味あんの?

「じゃあ・・・死ね!!」

「危ねっ!」

男の一人が殴り掛かって来たため、避ける。

ドゴンッ!!

避けたのだが、後ろからものすごい爆音が聞こえた。

「何の音だよ・・・」

振り向くと、壁が砕けていた。

「これが俺のエンハンスだ。硬化ハーデンフィスト。俺の拳は鋼鉄と同じ強度となる」

「物騒だなぁ」

早く戻りたいため、さっさと片付けようと思ったその時。

「ねぇ月?」

「んっ!?」

この声は・・・。

「今、見てたけど・・・攻撃されたよね」

「小春?落ち着いて・・・」

美沙さんお願いしましたよね!?

「月の敵は、私の敵・・・。死ね。絶対的アブソリュートドレス」

ズドンッ!!








「美沙さん!!小春をお願いしましたよね!!」

「だって一人にさせるわけにはいかなかったから」

「こうなるからお願いしたんですよ!!」

「ねぇ月。まだ文句があるの???」

「ひぃ!!」

あの後は小春による一方的な虐殺だった。

まあ殺しては無いが・・・。

あそこに居た連中は、みんな気を失っている。

「あのなぁ。俺は追い払う程度にしておこうと思ったんだよ」

「そうなんだ。でも私は、殺す気で居たよ」

「だから止めたんだよ」

小春が男たちを本気で殺そうとしたため、俺が止めた。

まあ、いつもの事だ。

「捕まるくらいだったら私は、あなたと心中するわ」

「やめて。というか美沙さんも止めてください」

「良いじゃないの」

「ええー」

美沙さんもこれもいつもの事だ。








「はぁ・・・。疲れた~」

「泳ぎ過ぎたね~」

「あらあら二人とももうギブかしら?」

「美沙さんは元気そうっすね」

「あの人とする時はもっと激しいからね」

「なあ小春」

「んー?」

「お前、自分の親の性事情って興味あるか?」

「ないよ」

「そっか安心した」

「ん???」

「ふふっ。じゃあホテル行きましょうか」

「「はーい」」

俺たちは、あらかじめ予約しておいたホテルへと向かった。







ホテルに着き、チェックインを済ませ部屋へ向かう。

「どんな部屋かな♪」

「楽しそうだな小春」

「うん!!」

「ここみたいね」

美沙さんが扉の鍵を開け、部屋に入る。

「凄い!!」

「広いなぁ」

「良い部屋ねぇ」

今回泊まる部屋は、とても広く高級感が溢れてた。

「ベッドもふっかふか~」

「あ、あの・・・。美沙さん?」

「どうしたのかしら?」

俺は、この部屋のおかしい所に気づいた。

「どうしてベッドが二つしかないんですか・・・?」

そう。

この部屋はツインのベッドだ。

まあこの後の展開は大体予想がつく。

「どうしてって。小春と月君が一緒に寝るからよ」

「やっぱそうなりますよね・・・」

「ほら月。おいで」

「多分、何言っても無駄なんだろうなぁ」

「無駄だからさっさと服脱いでベッドに来なさい」

「待て。脱ぐ理由が分からん」

「そんな分かり切った事聞いちゃって・・・。えっち・・・」

「おやすみ」

何故俺は、彼女のお母さんが居る前で夜の営みをしないといけないんだ・・・。








ジリリリリリリリリリ!!!

「何事!?」

「小春!月君!大人しくしてなさいよ!!」

「う、うん」

「分かりました」

警報・・・?

火事か?



パンッパンッパンッ!

「今の音・・・」

「月・・・今のって・・・」

「2人とも!!じっとしててね」

美沙さんも気付いたか・・・。

さっきの音は、おそらく・・・。

「銃声か・・・?」

「月・・・」

「安心しろ小春。お前は、必ず守る」







ドンッ!!

「きゃっ!」

「小春!美沙さん!!頭を抱えて伏せて!!」

「う、うん!」

「分かったわ!!」

今の地響きは何だ・・・?

さっきの銃声と言い、この地響き。

一体何が起こってんだ?


シーン・・・。


「音止んだね・・・」

「みたいだな」

「そうね・・」

さて、どうしたものか。

様子でも見に行ってみるか。

「月?今、何かしようと考えた?」

「駄目よ~月君。この部屋から出たら」

「いや、俺は別に何も・・・」

本当にこの親子は、どうして俺の考えていることが分かるんだ。

「私の旦那様が考えていることくらいお見通しよ♡」

「義理の息子の考えていることくらいお見通しよ♪」

「もう籍入っている感じで話が進んでいるのはもう今更いいよ」

何なんだよ・・・全く。



「というか他の客は大丈夫なんかねぇ」

「さあね。はっきり言って私は、他の客の事なんてどうでもいいわ」

「あらあら小春ったら。可愛いわね」

「いや今の言葉でどこが可愛いと認識したんですか?」

他の客をどうでもいいと言うやつを可愛いって・・・。

「月~。死にたいの?」

「怖いからやめてね。というかそれ脅迫だからね」

「あらあら」

美沙さんは、小春にどんな教育をしたんだろう・・・。

「月君ったら、私の事がそんなに気になるの?」

「月・・・。浮気?」

「だから小春!!お前の目には何が見えているんだ!!」

本当に似た者親子だ。



ドタドタドタ・・・。



「足音凄いね」

「まあパニックになるだろうなぁ」

「私たちも避難した方が良いかしらね」

「そうだね」

「まあそうでしょうね。でも・・・」

「でも?」

「月は、何か感じてるのね」

「何か嫌な予感がする」

何故だろう。

何か胸騒ぎがする。


『お前の巻き込まれ体質の心配しての事だ。何も無ければ問題無いが、どこの主人公か知らないが何も無い方がありえないだろう。』


零先生に言われた言葉を思い出してしまった。


「ちっ」

「月?」

「月君?」

「安全に避難できるなら、そうしたいが。変に外に出るよりは、戸締りをして部屋に居た方が安全だろう」

「確かに月の言う通りかも」

「分かったわ。この扉や壁は頑丈そうだから、部屋に居た方が良いのかもね」

ここのホテルは、かなり厳重に出来ているはずだ。

扉も重く頑丈なつくりだったため、そう簡単に蹴破られることもないだろう。



ズドンッ!!



「何の音!?」

「地震かしら!?」

「いや・・・。まずい!!」

この地響きは、ただの地震じゃない。

「小春!!美沙さんを抱えろ!!」

「えっ!?」

「月君!?」

「時間が無い!!早く!!」

「う、うん!」

「ちょっと!」

小春に美沙さんを抱えさせた。

「そしてそのまま窓から飛べ!!」

「「はぁぁぁぁぁぁ!?」」

「大丈夫だ!!必ず俺が守る!!」

「分かった!」

「お願いね」

「じゃあ行くぞ!!」

美沙さんを抱えている小春の手を握り、窓から飛び降りる。



「「きゃぁぁぁぁ!!」」

純白スノーホワイト!!」

エンハンスを発動させ、脚に炎を纏わせ、地面の方向へと射出する。

さっきまで居たホテルは、崩れ落ち始めた。

「頼む。減速してくれ・・・」

「月・・・」

エンハンスを切らす事なく、炎を噴出する。

「月!!壁の方に行ける!?」

「何か考えがあるのか!?」

「うん!!そこからは私に任せて!!」

「信じるぞ小春」

「任せて悠」

小春の言う通りに崩れ落ちるホテルの方へと近づく。




「こんなもんで良いか!?」

「大丈夫。あとは、私に任せて」

俺は、小春に身を預ける。

「じゃあ行くよ。絶対的アブソリュートドレス!!」

小春は、エンハンスを発動する。

崩れ落ちるホテルの壁を足場にし、地面へと駆け降りる。

「2人とも舌を噛まないようにね!!」

「ああ!!」

「ええ!!」

小春の言う通りにする。




スタッ・・・。

「っ!!ふぅ・・・。着いたよ」

「ああ。助かった」

「2人ともありがとうね」

無事にしたまで降りて来れた。

「小春は怪我はないか?」

「うん。大丈夫」

「美沙さんは?」

「私も大丈夫よ。月君は?」

「俺も大丈夫です」

とりあえずは、誰も怪我をしていないようだ。


「にしてもさっきまで居たホテルがこんなになるとはなぁ」

「そうだね・・・。せっかくの月との旅行なのに・・・」

小春の表情がどこかくらい様な気がする。

「小春。旅行にだったらいつでも行ってやる。だから、そんな暗い顔するな。今は、3人とも無事だったことを喜ぶことだろ?」

「うん。そうだね」

「ふふっ。本当に2人ともお似合いね。孫の顔は、思いのほか早く見れそうね」

「なっ!」

「孫なんて・・・///」

美沙さんの爆弾発言をする。

俺は驚き、小春は照れる。

この反応がもう違うんだよなぁ。







「すんすん・・・」

「月?」

「どうしたのかしら?」

「何か焦げ臭くないか?」

先ほどから、辺り一面が焦げ臭いにおいが充満している気がする。

「言われてみれば・・・」

「そうかもしれないわね」

「火事か・・・?」

どこかが燃えていると思い、周りを見渡す。

「月!あそこ!!」

小春が指さす先には、先ほどまで居たホテルだ。

だがそのホテルは、倒壊しており先ほどまで居たとは思えない姿だった。

「何だよこれ・・・」

「そんな・・・」

そのホテルの1階部分は、溶けていたのだ。

「おいおい鉄筋コンクリートだぞ。それを溶かすって」

「ねぇこれって・・・」

「小春は何か分かったの?」

小春はどうやら気付いたようだ。

「月も分かってると思うけど、これってエンハンスだよね」

そう。

おそらくこれは、何者かによって倒壊させられたのだ。

「十中八九エンハンスだろうな」

「やっぱりそうだよね」

倒壊したビルの溶けている個所を観察していると。

「2人とも危険な真似はやめてよね」

美沙さんは、俺と小春が何かすると察したのだろう。

「大丈夫ですよ。小春にそんな真似はさせません」

「私も大丈夫だよ。月には、危険な事させないから」

「じゃあ2人ともここから離れるわよ」






美沙さんに連れられ、駐車場にやって来た。

「とりあえず、車に乗ろっか」

「ですね」

「うん」

美沙さんの車に乗り込み、これからの事を話し合う。

「というか荷物あの瓦礫のしただよなぁ」

「そうだね・・・。スマホに財布は持って来たけど」

「私もその二つは持って来れたわよ」

みんなスマホと財布は持ち出せてたみたいだ。

「んー」

「月?」

「何か考え事かしら?」

あれは明らかに事件の匂いがする。

銃声に地響き。

そして鉄筋コンクリートを溶かすほどの高熱。

「明らかに関連性があるよなぁ」

「さっきの事?」

「ああ。そういえば、他の客は避難出来たのか?」

俺たちは、咄嗟にエンハンスを使って窓から飛び降りたが、他のみんなはどうなったのだろう。

「銃声の後、かなり騒がしかったから何人かは逃げているんじゃない?」

「そうね。だけど、全員ではないでしょうね」

美沙さんの言う通りだ。

多分、何人かはあの瓦礫に埋もれているだろう。

「ちっ」

「月。私たちは、ただの学生なの。誰かを救おうなんて無理な話よ」

「分かってる。分かってるはいるが・・・」

人の命があんな簡単に失われてしまうと考えるとやるせない気持ちになる。

「月」

ぎゅっ

小春が俺を抱きしめる。

「小春?」

「月はどうしてそんなに優しいの?」

「俺は・・・」

「自分じゃ優しくないと思っているだろうけど、私からしたら十分優しいよ。その優しさのおかげで今の私があるんだから」

小春は、俺を抱きしめたまま言い聞かせるように、静かに話す。

「分かった。もう大丈夫だよ小春。ありがとう」

「そう?ならもう少しこのままで居させて」

「んっ!!」

小春は俺を抱きしめる力を強める。

「月君。ありがとうね。小春はこれでも怖かったと思うから、そのままにしてあげて」

「別に怖かったわけじゃ・・・」

小春は、否定しているがその言葉には力がない。

「大丈夫だ小春。俺たちは生きてる」

「うん・・・」

抱きしめたまま、時間が流れる。






「それでこれからどうしようかしらね」

美沙さんの言う通りだ。

このままここに居るのも危険な気もする。

「とりあえず、どこか移動しましょうか」

「うん」

「分かったわ。じゃあ車を出すから、シートベルトしなさい」

「はい」

「はーい」

美沙さんは、車にエンジンをかける。

「じゃあ行くわよ」

そういってアクセルを踏み込んだ瞬間、車の前に男が現れる。

「あの、邪魔なので退いて頂けないかしら」

美沙さんが避けるように言うが、男は動かない。

「あの!!聞こえてます!?」

「ア・・・ア・・・」

何かが様子がおかしい。

「美沙さん、一度注意を引き付けますので車をすぐに出せる状態にしといてください」

「えっ!?ちょっと月君!?」

俺は、車から降り男に近づく。

「あの~。ここは危険なんであなたも避難した方が良いですよ」

「アアア・・・」

薬でもやってんのか?

こちらの意図が通じているようには見えなかった。

「あの?聞こえてます?」

「アアア!!」

「なっ!」

男が急に吠えたと思ったら、辺り一帯の温度が高くなった。

「美沙さん!!車を出して早くここから離れて!!」

「分かったわ!!」

「待って!!」

小春が何かを言おうとしてたが、美沙さんに任せ離れてもらう事にした。






「さて残ったのは俺たちだけだが、どうする?」

「アア!!」

質問を投げかけても、大した返答は帰って来ないようだ。

「アアア!!」

「暑っ!!」

この尋常じゃない暑さは、こいつが原因だろう。

ポタポタ・・・。

ジュゥゥゥゥ・・・。

「おいおい地面が解けてるじゃねぇか」

男から液体のようなものが滴っている。

「まるでマグマだな」

「アアア!!」

ブンッ!!

「危ねっ!!」

ジュゥゥゥゥ!!

「こいつに触れたら死ぬだろうなぁ」

マグマの温度は、最高でおよそ1400℃。

「人間の体で触れたら、大変なことになるよなぁ・・・」

本来であれば、近づくも危険だ。

接近戦しか出来ない俺にとっては、最悪な相手だろう。

「アアアアア!!」

「さてどうしたものかねぇ・・・」




「アア!!」

男は、マグマをまき散らしながら、こちらに向かってくる。

「やるしかないか・・・」

俺は、覚悟を決める。

「アアアアア!!」

純白スノーホワイト!!」

脚に、白き炎を纏わせる。

ブンッ

「ちっ!!」

男が、右腕を振り払う。

「くたばれ!!」

男の顎を目掛けて、回し蹴り。

ドゴンッ!!

ジュゥゥゥゥ・・・。

「アアアアアアアア!!」

「ぐぁぁぁぁ!!」

男に蹴りは命中したが、こちらもタダでは済まなかったようだ。

「ちっ!!純白スノーホワイトで防御したが、足りなかったか・・・」

男の腕が俺の頬を掠めていた。

「とりあえず、無事に帰ったとして小春には何をされるんだろうな」

「アアアアア!!」

再び、男はこちらに攻撃を仕掛ける。

「さっさと寝てろ!!」

ドゴンッ!!







「ふぅ・・・。やっと気を失ってくれたか・・・」

今、マグマのエンハンスを持つ男は気を失っている。

「とりあえず、警察でも呼んだ方が良いか・・・?」

通報するため、スマホを取り出す。

「あー。熱でイかれたか」

電源も入らないようだ。

「さてどうしたものか」

これからの事を考える。

小春と美沙さんは、避難できただろうか。

あの二人の事というか、小春の事だろうからすぐに戻ってくると思ったが、来なくて良かったと思う。



カチャ・・・。


「あ?」

何者かが、背後に立って居る気がした。

「お前がこいつをやったのか?」

どうやら背後からは、女の声がした。

「そうだと言ったら?」

「お前を生かすわけにはいかない」

「そいつは参った」

背後にいる女は、銃を構え引き金に指をかける。

「これは死んだかなぁ」

頭に銃を突き付けられ、死を覚悟をする。

「じゃあ死ね」






「ねぇ月」

ドゴンッ!!



この声は・・・。

「ねぇ月?色々聞きたいことがあるけど良い?」

「小春・・・」

「というか、今の女誰?」

声のトーンをかなり落とし、聞いてくる。

「さあ・・・?全く知らないですね・・・」

「それじゃあ、さっき車の進行を邪魔してた男が倒れてるのは?」

「俺が蹴り飛ばしたから」

「じゃあ今さっきまで銃口を頭に突き付けられてたのは?」

「さあ・・・?」

「そう」


カチャ・・・

「っ!!小春!!」

先ほどの女が銃口をこちらに向ける

「死ね」


バンッ!!


銃声が鳴り響く。

だが放たれた銃弾は、誰にも当たることは無かった。

「邪魔しないで三下」

小春が銃を持っている腕を蹴り上げたようだった。

「なっ!!」

「今、私の愛する人を殺そうとしたわよね」

「くっ!!」

「月を傷つける奴は、私の敵。絶対的アブソリュートドレス」


ドゴンッ!!





「月、大丈夫?」

「あ、ああ」

小春が俺の心配をしてくれている。

「というか火傷もしてるわね。ほら、頬の所」

「ああ。さっきマグマの男にやられてな」

「そう・・・」

小春は顔を俯いて答える。

「小春こそ怪我はないか?」

「私は大丈夫だよ」

「そうか・・・」


ぎゅっ


「小春!?」

小春が抱きしめ、耳元で優しく囁く。

「あのね。私はとっても心配したんだからね」

「ああ」

「私の大切なものが傷つけられた」

「ああ」

「もう無茶はしないでね」

「ああ」

「約束ね。嘘ついたら、本当に死ぬからね」

「ああ」


そのまま抱きしめられたまま時間が流れる。


「小春~。月君~」

美沙さんの声だ。

「小春。美沙さんが来るぞ」

「ん」

「動く気は無いと・・・」

小春は抱き着いたまま、ビクともしない。


「あらここに居たの2人とも」

「美沙さん」

「あらあらまあまあ」

美沙さんは、温かい目でこちらを見てくる。

「避妊はしなさいよ」

「台無しだな!!」

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