第8話 休みは終わり、再び学校へ

GWもあっという間に終わった。

濃い5連休だったような気がする。

初日は事件に巻き込まれ、二日目は小春と肌を重ね、三日目以降は小春の実家に泊った。

そうして連休を終えたのだ。

「なぁ!!これ間に合うのか!?」

「間に合わせるの!!」

今、俺たちは遅刻しそうになっていた。

今回は、小春のエンハンスを使ってもギリギリかもしれない。

何故こんなにギリギリになったかと言うと、昨晩もお楽しみだったのだ。

小春が脅s・・・お願いしてくるので押し切られてしまい、やってしまったのだ。

「利き手の反対側を折るか・・・」

「ん?何か言った?」

「いやなんでも」

俺は大人しくお姫様抱っこをされ、登校していた。




学校には着いたのだが・・・。

「やばい!あと1分!!」

「靴箱から教室まで3分はかかるぞ!!」

俺たちの教室は、4階の角にあるため靴箱からは距離がある。

「仕方ないわね!月、履き替えた!?」

「ああ!」

「じゃあもういっちょ行くわよ」

「待て!流石にこの格好で教室に入るのは!」

そんな叫びも無駄となり、小春にお姫様抱っこされた。

「というか何故外に・・・?」

「窓から入るの!」

「はぁぁぁぁぁぁ!?」

そして、小春は俺たちの教室のある場所に向かって跳んだ。

「セーフ!!」

「もうやだ・・・」

教室の窓は開いていたため、スムーズに入ることが出来た。

だが、クラスのみんなはほとんどの奴が既に居るため注目を浴びることになった。

「流石に暑いわね・・・」

「降ろして・・・」






お姫様抱っこ登校も日常となり、俺たちはクラスの注目の的となった。

元から小春は美人で男女共に気になってる人が居たようだが、俺とずっといるため話しかけずらかったらしい。

それが今回の登校風景を見せた事で話しかけるキッカケが出来たようだ。

でも、小春自身はまだ慣れることが出来ず素っ気無い態度だ。

「小春、良いのか?」

「私だって仲良くしたいけど・・・怖くて」

「まあ仕方ないか」

こればっかりは俺にもどうしようもできない。

「それよりも月」

「ん?」

「あなた楽しそうだったね。女子と話してて」

「へ?」

「あんな子より私の方が良いでしょ」

「あの~」

「ねぇ、何?結婚する???」

「お前は何を言っているんだ」

このままだとヤンデレに拍車をかけるかもしれない。




放課後になり、小春はどうやら呼び出されていた。

まあ告白らしいのだが、俺は正門で待ってて欲しいと言われたので待っている。

「ニャー」

「ん?」

鳴き声が聞こえた。

「ニャー」

「猫!!」

茶色い毛に身を包む猫が俺の下にすり寄ってきた。

「ニャー」

「やばい、可愛い」

ナデナデ・・・

「ニャー」

「にゃー」

持って帰りたい。

そう思いながら撫でまわした。

「にしても猫様は、嫌がらないんだな」

ここまで撫でると嫌がるのがほとんどだと思うのだが。

「ニャー」

「気にしないのか」

「ニャー」

撫でるのを続けた。

「ごめん月。待たせたね」

「おう。もう終わったのか?」

小春がやって来た。

「うん。断ったよ」

「そうか。安心した」

「私は絶対に月以外には靡かないよ」

ここまで言ってくれるなんてな。

「それでこの子は?」

「ん?ああ首輪が無い所を見ると野良猫だろ」

「なるほどね。よしよし」

ビクッ!

小春が撫でようとすると、びっくりした様子だった。

「何か月に似てるかも」

「そうか?猫様おいで」

俺が呼ぶとそれに反応して近寄ってきた。

「月は猫にモテるんだね?」

「悲しい事言うなよ」

素直にショックを受けた。

「でも本当に可愛いね」

「そうだな」

2人で猫様を撫でていると、すっかり懐いてしまった。



「ついて来ちゃってるね」

「ついて来ちゃったな」

「どうする?」

「とりあえず、コンビニでこの子のご飯買うか」

「そうね」

俺たちは家に帰る前にコンビニに寄り道し猫様のご飯を買うことにした。

「じゃあ小春はこの子と待っててくれるか?」

「分かったー」

俺は、キャットフードを買いに行き、小春は外で猫と待つことになった。

「あの猫様は何が好きかな・・・。缶詰かカリカリか。迷うなぁ」

そうだ迷った時は。

「両方買うか」

俺は、自分の小遣いを猫様に割いた。

商品を持ち、レジに向かうと。

「金を出せ!!」

コンビニ強盗だ。

久々にこの感じだなぁと感心してしまった。

もう大人しくしておこう。

「さっさとしろ!!」

「ひぃ!!」

あの店員さんも大変だなぁ。

今、ワンオペか?

あそこにいる女性の店員さんしかいない。

歳は俺とあんまり変わらなそうで、高校生だと思う。

確かレジの机の下に通報するボタンあるようなと思ったが、店員さんは気づいて無さそうだ。

「ご、ごめんなさい!!今すぐ出します!!」

その店員さんは、怯えていた。

「はぁ・・・」

とりあえず小春に通報するように、連絡しておこう。

というか俺でも良いのか。

俺は警察に通報しようとした、その時。

「おい!!妙な動きをするな!!」

見つかった。

「やっべ」

「お前もこっちに来い!!」

大人しく従うか。

「はい」

店の中には、強盗犯が一人、客は俺だけ。

店員さんもこの子だけのようだ。

こちらから仕掛けても良いのだが、こいつの能力が分からない以上あまり刺激するものでもない。

というか、小春は何してるんだ???






コンビニ強盗が起きている一方、小春は・・・。

「よしよし、あなたは月に似てるねぇ」

猫を可愛がっていた。

「というかあなた男の子だったのね。可愛いもの持ってるじゃない」






さてどうしたものか・・・。

ここは店員さんには、大人しく従ってもらった方が身のためであろう。

「用意しました」

「よし!じゃあお前らには通報してもらうと困るからな。」

男はそう言って、右手を前に差し出した。

不味いっ!

分解ディスアセンブル

「させるか!」

俺は、男の右手を蹴り上げた。

すると天井が崩れ落ちてきた。

純白スノーホワイト!!」

俺は店員さんを庇い、降ってくる天井の破片を蹴り飛ばした。

「ちっ!強盗犯は!?」

辺りを見渡すと男は、出入口に走っていた。

ここからじゃ間に合わない!!

「すぅぅぅ・・・。小春!!そいつを止めろ!!」

頼む小春、聞こえてくれ。





「よしよしよし。可愛い奴め~」

猫と戯れていると・・・。

ズドーン!!!

「に゛ゃ!!」

「何なの!?」

店内を見ると天井が崩れ落ちていた。

「月!?」

私は月の安否を心配していると。

「小春!!そいつを止めろ!!」

店内から男が走って出てきた。

絶対的アブソリュートドレス!!」

私は透かさず、エンハンスを使い男を蹴り飛ばした。

「ぐはっ!」

男はそのまま壁に衝突し、気を失った。

「月!!」




なんかあっという間に小春が片付けたな。

「店員さんは大丈夫ですか?」

「はい。すみません。ありがとうございます・・・」

どうやら店員さんは無事のようだ。

「そうですか。こちらこそすみません。なんか店壊しちゃって」

俺があの男の腕を蹴り上げたから、こんな事になってしまったのだからかなり気まずい。

「いえ、もしあなたが居なければ私がこうなってたのかも・・・」

確かにそう思うと怖いな・・・。

「ありがとうこざいました」

「いえいえ。取り敢えずはここから出ましょう。また崩れるかもしれませんので」

「はい」

俺と店員さんは安全なところに避難した。





「それで月はどうしていつもそうなのかな?」

「返す言葉もありません」

俺だって平和に高校生やりたい。

「今、通報して警察がこっちに向かってるそうです」

「ああ。店長さんにも連絡しました?」

「はい」

「そうでしたか。俺たちは・・・帰れないよなぁ」

「すみません」

「気にしないでください」

まあ事情聴取とかもあるだろうな。

「ねぇ月。その人は?」

「この人はこの店の店員さんだよ。不幸にもワンオペだったんだよ」

「そうだったのね」

「あの!お二人ともありがとうございました。その制服を見たところ六花高校の人ですよね?」

「そうですけど。」

「実は私も六花生なんです」

「そうだったんですね」

俺と店員さんが話していると。

「やっておしまい」

「ニャッ!」

猫様が俺に飛びついてきた。

「どうしたんだ!」

「ニャー!」

「にゃー!」

小春と猫様が威嚇して来てる。

「あのお二人は・・・?」

「ああ。この人は俺の彼女・・・」

「妻です」

「・・・」

「・・・」

「妻です」

「言い直さなくていい!それに結婚してないからね!?」

知らない人に対してもそんな事を言うのかと驚きを隠せなかった。

「そうですか・・・」

「うん。だから月は私のだから」

何でこいつは言う必要の無い事を言ってるんだろう。

「ニャー」






あの後、猫様のご飯のお金を払ったり、事情聴取を受けて帰りが遅くなってしまった。

「というかナチュラルに連れて来たけど、猫様は住むつもりか?」

「ニャー」

「そうみたいね」

なんかこの猫は俺たちの言葉を理解しているかのように返事をした。

「まあ仕方ないか」

「そうだね」

「ニャッ!」

猫様は、元気よく返事してくれた。

「じゃあ明日、学校終わったらホムセンに行くか」

「うん!私もお金出すから。むしろ月だけで出そうとしたら、あなたの財布預かるから」

やばい!

俺の財布を文字通り握られてしまう・・・!!






翌日、学校には普段通り登校した。

ザザッ・・・

『えぇ、一年二組の神薙月君、鬼月小春さん。登校してますなら職員室、零のところまで至急来なさい』

朝から呼び出しとは・・・。

というかSHRの時じゃだめなのかよ。

小春も面倒そうな顔をしていた。

「仕方ないから行くか」

「そうね・・・」

俺たちは気怠そうに職員室に向かった。

コンコンコン

「失礼しまーす」

「失礼します・・・」

俺たちは職員室に入り、先生のデスクの所まで行った。

小春は、俺の後ろに隠れるように歩いている。

小学生の時のあの事があってからこの調子なのだ。

「先生~来ましたよ~」

「・・・」

「ああ来たな」

先生は、パソコンで何かしら仕事をしていた。

先生って大変なんだなぁと思っていると。

「少し待て。もうそろそろ来るはずだ」

「来るって誰がですか?」

「あの~」

「来たな」

後ろから声がしたので振り返ると。

「2人は昨日の・・・」

「あっ店員さん」

昨日のコンビニ強盗に巻き込まれた店員さんが立って居た。

「そういえば六花生って言ってましたね」

「ですね」

「ねぇ」

「ひいっ!」

隣りから低い声が聞こえた。

声の主の方を見ると、そこには目からハイライトが消えていた小春が居た。

「こ、小春さん?」

「ねぇ月」

「はい!」

「結婚は人生の墓場って言うみたいだけど、本当に墓場にしよっか」

これは殺害予告と受け取って良いだろう。

「んんっ!!お前ら話は良いか?」

先生が痺れを切らしたようだ。

「まあ話というのは、お前らの言う昨日の件についてだ。お前らが倒した男は、最近いろんな所で強盗していたみたいだ。」

よく今まで捕まらなかったな・・・。

「今まで警察が捕まえることが出来なかったのは、カメラや目撃者を全員エンハンス能力によって消していたからだ。」

「それってつまり・・・」

「強盗だけでなく、殺人も犯していた。」

ガタッ!

「はぁはぁはぁ・・・」

「大丈夫ですか!?」

「は、はい・・・。ちょっと昨日の事を思い出しちゃって」

俺たちが居なければもしかしたら死んでたかもしれないんだ。

動揺しても無理はない。

「それで先生はその事を言うために呼んだんですか?」

「まあな。あとは、お前らの無事を心配してだ。」

「そうでしたか。それでは俺は、眠いので教室に戻っても良いですか?」

「ああ構わん」

「それでは失礼します」

俺に続いて、二人も職員室を後にした。

「そういえば、店員さんのお名前って何ですか?」

昨日聞き忘れてて、そのまま帰ったのでお互い名前を知らないのだ。

「あっそうですね。私は1年3組、扇野姫奈おおぎのひめなです。エンハンス名は、透視クレアボヤンスです」

「あっそれは丁寧にどうも。俺は1年2組神薙月です。エンハンス名は、純白スノーホワイトです」

「私も1年2組よ。名前は鬼月小春。エンハンス名は、絶対的アブソリュートドレス」

ようやく自己紹介をしてお互いの名前を知った。

「あなた方が、あの神薙君と鬼月さんなの!?」

「「あの???」」

扇野さんは、俺たちの名前は知ってる風だった。

「夜な夜な、お二人はお楽しみしてて神薙君が鬼月さんにアブノーマルな事をやってると思ったら、実は鬼月さんが攻めで神薙君が受けだというあの!?」

「待て!!誰だそんな噂を流したのは!?」

「月は何を言ってるの?合ってるじゃない」

「ん?うーん合ってはいるのかぁ・・・」

納得しかけた。

「いや夜な夜なお楽しみはしてないだろ!!」

「何言ってるの一緒にゲームしてるじゃない。それとも別の何かを想像したの?」

「はっ!」

嵌められた。

「あははっ!でも話に聞いていた以上に面白くて優しい人たちですね。」

扇野さんって明るい人なんだな・・・。

俺と小春は、はっきり言って大人しめ方なのだ。

「「・・・」」

ちょっと押され気味になっていた。

「それはそうと、昨日助けてくれてありがとうございました。もしあなた方が居なかったら私は死んでたかもしれないから・・・。本当にありがとう」

改めてお礼されてしまった。

「まぁ気にしないで下さいって言いたいけど、難しいですよね・・・」

「そうですね・・・」

「まあ気をつけてとしか私も言い様がないわよ」

小春の言う通りだった。

「お礼の品とは言ったらなんですけど、渡したいものが教室にあるんですけど、良いですか?」

俺たちは、扇野さんに付いて行き、1年3組の教室へ行った。

「はい。これ」

「これは・・・」

扇野さんに紙袋を渡された。

中身は、クッキーが入っていた。

「上手く出来てないかもだけど・・・」

まさかの手作りだった・・・

「あとこれも」

もう一つ袋を渡され、その中身を見ると・・・。

「猫缶???」

キャットフードが入っていた。

「昨日の猫さんにあげてください」

「すみません。ありがとうございます」

扇野さんは気遣いの出来て、料理も出来る女の子だったようだ。

「私だって・・・」ボソッ

俺はこの言葉を聞き取る事が出来なかった。

「じゃあもうそろそろ予鈴がなるから教室に帰るな」

「はい。本当にありがとうございました。あともしよろしければですけど、連絡先交換してもらえませんか?」

扇野さんから連絡先交換を頼まれた。

「すみません。今、スマホが壊れてて連絡する手段が無いんだ。本当にすみません。」

「あっそうでしたか。それは失礼いたしました。では、直り次第交換してもらえると嬉しいです」

「分かりました」

そうして俺と小春は教室に戻った。

「ねぇ」

ずっと静かだった小春が口を開いた。

「どうして嘘をついたの?」

「はて?何の事だ?」

「スマホが壊れてるって話よ」

そう、俺は嘘をついた。

「言わせるなよ」

「だってあの子、私よりも料理が出来て私よりも優しそうじゃん」

「そうかもな」

「それに話してる姿も楽しそうだった」

「そうか?だとしたらまだ甘いな」

「え?」

「俺はな、ヤンデレの小春の彼氏ですよ。俺が扇野さんと連絡先交換したらどうする?」

「・・・気が狂う」

「そんな答えが返って来るとは・・・。まあ逆に小春が俺以外の男と連絡先交換してたら俺も気が狂う。俺はやられて嫌な事はしないんでね」

小春にそう言い放った。

「・・・あなたのそういう所よ」ボソッ

「ん?」

「月のそんな所が好きなの!!」

小春は大声で愛の告白した。

「小春さん???」

「月の私に気づかせないように優しくしたり、守ってくれたり、支えてくれたりしてくれるそんなあなたが大好きなの!!」

小春の愛が十分すぎるほど伝わった。

勿論、それは俺だけじゃなく、周りに居た人にもだ。

「はぁはぁはぁ・・・」

「小春。俺もお前のその真っ直ぐ言える性格は好きだぞ」






その頃、1年3組では・・・。

「神薙月君・・・」

やばい!

昨日の人が神薙月君だったなんて!!

私の・・・ご主人様にしたい!!

首輪着けられて調教されたい!!

はぁ♡

想像しただけで興奮してきた♡

あのクッキーには色んなものを込めているから食べて欲しいなぁ・・・♡





放課後になり、俺と小春は猫様のトイレや爪とぎなどを買いにホームセンターに来ていた。

「そういえば、あの子の名前はどうするの?」

「ん??そういえば、決めてないな」

俺は、猫の事を猫様と崇拝するように呼んでいる。

「ん~帰ってから猫様の様子を見ながら決めるか」

「分かったわ」

カートを押しながら、必要なものを入れていく。

「トイレとそれ用の砂と・・・爪とぎ・・・。あとは何が必要だっけ?」

「そうね~。安いのでキャットタワーっていくらするのかな?」

「安いのは安いのであると思うけど、しっかりした作りになってるのは5000円辺りからだろう。まあそれを買うんだったら、爪とぎ付きのを買った方が良いな。」

「じゃあそうしましょうか」

こうして買い物デートを終えて、家に着いた。





「zzzz・・・」

「寝てるね」

「寝てるな」

帰ると猫様は、俺のベッドの上で寝ていた。

「トイレはしてないのか???」

そう思い、部屋を確認したが臭いも無く、今日はしてないのだろうと思った。

「月~トイレくらい流しなさいよ」

「あーごめん」

トイレ流してないだと・・・?

朝起きると、トイレには行くが流したはず・・・。

「小春。それは大きい方か?」

「うん。新しい性癖に目覚めそうだけど、私にはちょっと早いかな」

「いや目覚めなくて良いけど・・・。というか俺、今日は大きい方はしてないぞ」

「えっ!?じゃあこれは誰の・・・?」

俺も急いでトイレに向かい見てみると確かに何者かがトイレをした痕跡があった。

「ん?これって・・・」

「毛だね」

「毛だな」

便器に茶色い毛が付いていた。

「まさかあの猫様!?」

「人用のトイレでちゃんとしたの!?」

あの猫様は、知能がどうやら高いようだった。

「・・・」

「・・・」

「とりあえずキャットタワー組み立てよっか」

「そうだな」

俺と小春は、買って来たものを組み立てた。




「ふぅ~終わったな」

「そうね~」

俺たちは、キャットタワーを組み立て、トイレの設置も終えた。

「じゃあお茶でも淹れるか」

「うんお願い」

俺はキッチンへ行き、お茶の準備をした。

「そういえばクッキー貰ってたな・・・」

扇野さんの手作りクッキーを貰ったのを思い出した。

お湯が沸き、俺は紅茶。

小春は、ココアを淹れた。

「ちゃんと俺と小春の分を作ってくれてるみたいだな」

「そうね・・・」

「流石に食べずに処分ってのは、扇野さんに失礼だからな」

「分かってるよ。私の不甲斐なさを実感しただけ」

小春は、お世辞にも料理が上手いとは言えない。

恐らくその事を気にしているのだろう。

「今度、一緒にクッキー作ってみるか?」

俺は、小春に提案した。

小春の料理は、目を離してなくとも何故か失敗してしまう才能の持ち主だが、流石に本人もどうにかしたいと思っているみたいだ。

「良いの?」

「良いぞ。クッキーくらいだったらそんなに難しくならないだろ。分量を守れば不味くはならない。まずは味からだ。形は後からだけど、慣れれば作れるようになる」

「じゃあお願いします・・・」

小春は恥ずかしそうに、お願いしてきた。

今回は、脅しじゃなくてお願いだ。

たまに垣間見えるこの可愛さも愛おしく感じる。

そうして俺は扇野さんのクッキーを口にした。

「美味しいな。かなり味にもバリエーションあるみたいだな」

小春もクッキーを食べた。

「・・・美味しい」

小春は、外敵(俺の近くにいる女性)を排除しようとするが、全てを否定するような真似はしない。

傷をつけたり相手を陥れることもだ。

何故なら、小春自身がやられた辛さを知っているからだ。

「私も頑張らなきゃ」







場所は変わり、扇野姫奈の家にて。

「もう食べてくれたかなぁ~。私の愛液入りクッキー。私を身体の内側から感じて欲しいなぁ」

扇野姫奈も十分ヤンデレだった。

それをまだ神薙月は知る由もない。

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