第6話 5連休は一日目と二日目は盛り上がる

お風呂から上がり、あとは寝るだけとなっていた。

だが、すぐに寝てしまうというのも勿体ないと感じてしまう。

「月は早く寝なさい」

「お母さんかっ!!」

小春が俺を寝かしつけようとする。

「あなたは今日死にかけてるのよ!!それであなたを治療してくれた人から安静にさせなさいと言われてるの!!寝ろよ!!」

「寝れるか!!小学生の頃からの付き合いとは言っても、同じ部屋で寝ることはないから緊張するんだよ!!」

「同じ部屋で寝た事何回もあるでしょ!!その度に先生に起こされてきたじゃない!!」

「教室での居眠りのことかよ!!」

はっきり言って、俺もなのだが小春も怒りの沸点がおかしい。

「もう怒った!!力づくで寝させる!!」

「何をするつもりだ!!」

俺は小春の動きを警戒する。

だが、一瞬で俺の背後に回り小春の腕が俺の首に巻きつく、

「ま、まさか!!」

「このまま気絶しろ!!」

「っ!!」

抵抗するも、疲労で身体がまともに動かない。

あっ・・・




「ふぅ~ようやく寝てくれたね」

寝てくれた ×

気絶させた 〇

じゃあお布団に運んであげようかな。

「よいしょっと。絶対的アブソリュートドレス。」

私は月を抱えて、布団まで運んであげた。

「可愛い寝顔・・・。でも寝つきが良いのね」

寝つきが良い ×

気絶させた 〇

「・・・一回くらい良いよね」

私は、彼の唇に口づけをしようとした。

顔を近づけるも・・・。

「やっぱやめよう。月の覚悟を私が壊すのは一番やってはいけない気がする」

そう思い、キスをするのを辞めた。

「それにキスは、お互い起きてる時が良いよね」

私も寝ようと思い、布団に入った。

すぐに寝付けるかと思ったのだが、そうはいかなかった。

「抱き枕が無い・・・」

私は寝る時に抱き枕に抱き着かないと眠れないのだ。

「どうしよう」

何とか寝ようと頑張るも無理だった。

「・・・」

月をじっと見つめ、良案をおもいついた。

というかこれしかないと思った。

「ごめん」

ぎゅっ

私は、月に抱き着いた。

「おやすみ、月」

いつの間にか私も眠りに落ちていた。






「ん・・・んん・・・。今何時だ?」

窓から朝陽が指しており、昨日はいつの間にか寝ていたのだろう・・・。

いや、待て。

昨日って・・・。

俺、小春に気絶させられたんじゃねぇか。

ぎゅぅぅぅ・・・

「何だ?なんか締め付けられているような・・・」

ぎゅぅぅぅぅぅぅ

「ん?何かだんだん強くなってるような・・・」

ぎゅぅぅぅぅぅぅ!!!

「痛い痛い痛い痛い!!折れる!!」

何が俺の身体を締め付けてるのかと確認すると、白く細い華奢な腕が俺の身体を締め付けていた。

「小春!?」

今の俺は小春の抱き枕状態だった。

「起きて!!肋骨が!!小春!?」

小春を起こそうとするも。

「すぅ・・・すぅ・・・」

「何でこういう時に限って爆睡してんだ!!」

いつもは俺よりも早く、小春の方が早く起きている。

むしろ、小春の押すインターホンの音で俺は目を覚ましている。

「ちっ!!あまりやりたくは無かったが・・・。純白スノーホワイト!!」

俺のエンハンスで起こすしかない!!

「んん・・・。ん?熱っ!!」

「よう、おはよう。よく寝れたか?」

小春が飛び上がるように目を覚ました。

ようやく解放され、体を伸ばしていると。

ガシッ

「んんん?」

あれぇ~?

どうして俺の彼女は、胸倉をつかんでいるのだろう。

「ねぇ月。私もあなたに似て、寝起きはなかなか機嫌が悪いのよ。これもあなたの影響なんだからね♡」

あぁそうか。

俺のせいか・・・。

なるほどなぁ。

「じゃあもう少し寝させてね♡えいっ♡」

バタンッ!!

寝起きで背負い投げするって・・・。

そのまま俺は、再び気を失った。







「はっ!!」

目を覚ますと太陽はかなり高いところまで登っていた。

スマホを見ると、12:00と表示されていた。

「うわぁ」

「よく眠れた?」

「あれを寝たとは言わない。」

人を二度も気絶させておいて何故ここまでケロッとした態度なのだ・・・。

ここは、俺のプライドの為にも。

「小春」

「ん?」

トンッ

小春を押し倒し、上に覆い被さるような体勢となった。

まあそれも一瞬だった。

「ふふっ、えいっ♡」

今度は巴投げかぁ・・・。

バタンッ

「このまま襲っても良いんだよ♡」

小春に馬乗りにされた。

「あんまり悪さをすると、本格的にお仕置きするよ」

「具体的には何を・・・?」

俺は固唾を呑み、質問した。

「本当は、初めては優しくのつもりだったけど。仕方ないから無理やりやって、子どもを作ろうかな。学生とか関係ないからね。必ず産むからね。あなたの事だから学校辞めて、働くでしょ。優しすぎも問題なのよ」

やばい、本気の目だ・・・。

「もう悪さしません。」

「そうなの?残念」

やばいやばい・・・。

いつか本気で襲われそう!!







あの後、俺たちはこの辺りをぶらぶら歩いてみようという事で外に出た。

「なんか楽しいね。二人っきりで旅行なんて嬉しい」

「そっか」

「月は楽しくない・・・?」

その聞き方ずるい。

小春と過ごして楽しくない日なんて無いのに。

「嫌だよね。こんな重い女」

「お前なぁ・・・。俺の影響か知らんけど、自分を卑下しすぎだ。小春は可愛いんだから、自分のやりたいようにやれ。今更、重いとか気にするか」

これは俺の照れ隠しみたいなものだ。

「そっか・・・。本当に優しいね」

「まあな」

「ねぇ月。明日には帰る訳だけど、何か予定はあるの?バイトとかは?」

「GW期間は休みを貰ってるけど」

「じゃあさ残りの休みは、久々に私の実家に行かない?お母さんも会いたがってるし」

小春の実家かぁ・・・。

何度かお邪魔したことはある。

小春のお母さんの美沙さんは元気な人で、小春のお父さんも娘思いな人だ。

「まあ行っても良いけど・・・」

「何かあるの?」

「いやあな、流石に残りの休みを小春の実家でお世話になるのもなと思ったんだ」

「月って基本的に一人が好きだもんね」

そう、俺はどちらかと言うと静かな方が好きだ。

自分の空間というのを大事にしたい人なのだ。

「でもたまには、顔を見せないと良くないよなぁ」

ここで改めて確認しないといけないのだが、俺は小春の彼氏ではあるが、夫ではない。

彼女の実家に訪問するってそこそこハードル高くないか?

「ねぇ月。嫌なら嫌で良いんだよ。いつもわがままばっかでごめん」

「だから謝るな。行くから安心しろ」

「ありがとう」

俺はつくづく小春に甘いと自覚してしまう。

「じゃあ決まりね。でも今は、二人の空間を楽しもう」

「ああ、そうだな」

俺たちは、歩みを進めた。



この辺りは、店も多く食べ歩きが出来るような場所だった。

お昼ご飯を食べていないため、こうして食べ歩きも良いものだなと思った。

「そういえば月ってバイトは何をしているの?」

「あれ?言っていなかったっけ?」

「うん」

そうか、言ってなかったか。

俺は、あまり自分の事は話さない。

聞かれたら答えるけど、自分からどうこう喋る事はない。

「それで何なの?学校帰りは、私と一緒に帰ってるし、土日もどこか出かけてる感じも無いからやってないんじゃって最近思うんだけど」

まあそうは思うよなぁ。

「家で出来るバイトやってんだよ。データ入力とか」

まあまとまった金は、入りづらくはある。

その分、量をこなしてお金を稼いでいる。

まあデータ入力に関しては、知り合いが依頼してきてそれを代行でこなしているといったところだ。

「そうだったんだね」

「まあな」

「それでその知り合いは女?」

んんん???

小春の目からハイライトが消えていた。

「い、いやぁ」

「嘘ついたら近くの湖が自殺の名所になるかも」

いやそれは最早殺人・・・などと考えていた。

「それでどっち?」

「じょ、女性です」

「そう・・・。じゃあ浮気という事で一緒に沈みましょう」

「結局死ぬのか!?」

しかも一緒って事は心中か!?

「というかその女はどこのどいつ?私も知ってる人?」

知ってるも何も・・・。

「白銀麗奈先生だよ」

「そいつが月をたぶらかしているのね。安心して目を覚ませるから」

「何をするつもりだ。それに中学の頃の恩師だぞ。たぶらかすとかそういうのは無いだろ」

中学時代の担任でよく面倒を見てもらった。

データ入力というのも、先生の手伝いなのだ。

「ああ居たわね。そんな人も」

「俺たちの担任だぞ・・・。それも三年間」

俺と小春は中学生の頃は三年間続けて同じクラスで担任の先生も同じだった。

「私はもう先生というのを、信じられないから・・・」

「まあそうだな」

小春は、未だに小学生の頃のトラウマが払拭できていない。

まああんな事があったんだ。

一生、信頼を取り戻すことはできないだろう。

それは先生というもの以外にも、ほとんどの人間を信頼できない。

俺や小春の家族は例外なのだが、むしろそのくらいしか信頼できる人がいないのだ。

「とりあえずあの人の事は大丈夫だから。むしろあの人のおかげで俺は小春との時間を過ごせてるんだ」

「そっか・・・」

まだ信じられないようだが、少しでも信じられる人が増えると良いな・・・。

「ねぇ月」

「ん?」

「ありがとう」

「どういたしまして」





俺たちは、旅館に戻り部屋でゆっくりすることにした。

「月って何フェチ?」

「脚」

「そっか」

「小春は?」

「月」

「それはフェチでは無いだろ」

自分で聞いておいて破綻しているとは・・・。

「じゃあ私の脚は月のタイプ?」

「ああ」

「ふふっ」

なんか恥ずかしくなってきた。

「じゃあ見せてあげる」

そう言って小春は、ズボンを脱ぎ始めた。

「これでどうかな」

今の小春は、大きめTシャツだけ着ている状態になっており素足を露わにしている。

「いや・・・綺麗だけど。何をしているのでしょうか?」

昨日からめちゃくちゃ積極的じゃないか?

普段からぐいぐい来るような奴だが、より刺激的になってる気がする。

「ねぇお願いだから触れてよ。その・・・不安になるから」

「だからな」

「お願い・・・」

上目遣いでお願いされた。

「でも・・・避妊具とか無いぞ」

「安全日だから大丈夫。・・・あなたと繋がりたいの」

俺の心はかなりぐらついている。

小春にとって俺は、恩人なのだろう。

それに、恩返しをしたいから俺の彼女になったようなものだ。

俺があの時、助けなかったらこの関係にはなっていないだろう。

だから、体の関係みたいな感じになって嫌なのだ。

「月、私はね本気であなたの事を愛しているの。確かに好きになったきっかけはあの事があったから。でもこの気持ちは本物なの。恩も返したいけど、それ以上にあなたが好き。好きなの」

小春の心は、どうしてここまで綺麗なのだろう。

小春は、俺を優しいと言うが、小春の方がよっぽど優しい。

「分かった。小春の全てを受け入れるよ」

「ありがとう」

こうして俺と小春は、一つとなった。





「ふぅ~」

「気持ち良いね」

今、俺たちはお風呂に入っている。

いわゆる事後というやつだ。

「ありがとうね月」

「俺こそありがとう。こんな俺を好きになってくれて」

「うん。ねぇもう一回しても良い?」

「だめだ。安全日とは言っても確実性はないんだろ?」

「それがね実は・・・」

「嘘だろ!?実は安全日じゃなかったってオチか!?まだ高1ですよ!!」

まさかと思い、俺は慌てふためいた。

「ふふっ冗談よ。大丈夫だから安心して。私だって月と高校生やりたいんだもん」

意外に小春も女子高生をやりたいようだ。

「今、失礼な事考えなかった?私だって女の子だよ。女子高生やりたいんだよ」

「可愛いな」

「ふぇ?」

小春から間抜けな声が出た。

「可愛いよ」

「ふぇぇぇぇぇ」

小春は、リードするのが得意なのだがリードされるのは不慣れらしい。

「小春、可愛い」

「もうやめてぇ~」






お風呂から上がり、俺たちは・・・。

「さてどっちがババでしょう!」

「むむぅ・・・」

ババ抜きをしていた。

俺が持つのは、スペードのエースとジョーカーの二枚。

おそらく小春は、何かしらのエースを持っているはずだ。

「こっちね!!」

小春は、ジョーカーを引いて行った。

「馬鹿め!!」

「ああ!!」

次は俺のターンだ。

「待ってね。よいしょっと」

小春は、持ってるカードを後ろに隠しシャッフルをしているようだ。

「またありきたりだな。だがそんなものには屈しない!!」

そういって俺は右側のカードを引いた。

「馬鹿ね!!」

ジョーカーだった。

「なんでだよ!!長いよ!!」

「確かにそうね」

実は、この盤面は5分ほど続いている。

なかなか決着がつかないのだ。

「もう疲れたよ。小春さっさと引いて」

「あら、私を相手に手を抜くのかしら?抜く手をなくしてあげようか?」

何を言っているんだ・・・???

抜く手を無くす・・・???

「その右手とはお別れね」

「俺の手をどうするつもりだ!!」

「ふふっそれを決めるのはあなた次第よ」

危機感を感じ、手を抜くのをやめ、しっかりとシャッフルをした。

「さてどっちだ」

「ふふ~ん。こっち」





結局、あの後ババ抜きはさらに長引き、小春の寝落ちにて幕を閉じた。

ババ抜きで寝落ちって・・・。

「すぅ・・・すぅ・・・」

「本当に可愛いな・・・」

「ふふっ・・・」

「起きてる?」

「すぅ・・・すぅ・・・」

一瞬起きてるかと思ったが気のせいだったみたいだ。

昨日は何だかんだ言って、寝てないから今日は寝よう。

昨日の様に気絶ではなく、今日はちゃんと睡眠をとる事にした。

明日は、そのまま小春の実家に行くことになってるため、早々と休みあっという間に意識を手放した。

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