第9話:星空のBelieve-佐々木 圭-vol.3
三学期からはほとんど三年生は登校しなくなるし、この時期はほぼ体力作りがメインになる。放課後野球部の部室には一年が5名、二年が4名がすでに練習用のユニフォームに着替えて、それぞれに雑談をしていた。
俺が入ってくると「チワース!」と下級生。軽く手を上げ俺は自分のロッカーを開ける。グラウンドに集合するまで約30分程ある。今からガヤガヤと部員達もやってくるから手早く着替えて部室をでる。「オイ、行くぞ」と皆に声をかけて。
部員は二年が俺を含めて10名、一年は15名。あと二ヶ月もすれば学年が上がる。新入生で何名位がウチに入部するだろう? ここ数年は野球よりサッカー人気が上だから10名もくれば良い方か?
夏が終われば三年の先輩達はほぼ引退状態になる、まぁ数名は俺たちに付き合ってくれる先輩もいるが、実質秋からは二年がメインだ。だから必然的にキャプテンのお鉢が回ってくる。そして三年の夏までにその役割の大半を終える形になるのだけれど、そのキャプテンという立場を俺は引き受ける事になってしまった。
夏の大会、県予選準決勝で敗れた。俺はそのときファーストの守備に立っていたが、さよならのツーベースヒットを食らったピッチャーの横顔はとても印象的だった。ピッチャーで打順は4番のキャプテン、マウンド上の河田先輩は打たれた瞬間に悟ったのだろう、しまったという表情ではなく後悔、苦悶でもなく諦めでもない、「やっと終わってくれたか」少し晴れやかなものにその時の俺には見えた。
試合終了の合図の後、応援席に向い、整列し一同頭を下げる。河田先輩の
「応援ありがとうございました!」に続いて選手皆も声を上げて再度一礼する。
ウチの野球部はまだ甲子園出場経験がない。せいぜい県予選決勝までだった。まぁスポーツを優先しているわけではない、一応の進学校で、そもそも高校野球の強いところっていうと大体地元のリトルリーグや中学野球が盛んな地域だったりする。”根”があるわけだ。もちろんスポーツ特待生、越境入学なんていうのもある。
田舎の公立高校に集まる”根”をもつ人材なんて、そうそう集まるもんじゃない。
それでも、と俺は決心している。ベタなセリフだが”甲子園へゆく”ことを・・・。
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