第8話:星空のBelieve-佐々木 圭-vol.2
予想だにしなかった好華の反応に正直戸惑うしかない。クラス中の視線を元に戻すためにおどけつつ「ごめんごめん、今度おごるけん、ねぇ」頭かきつつ様子をうかがう。金村、山口、景山は三者三様で、俺と同じように好華の態度に圧倒されてたり、俺の毎度のちょっかいにあきれ顔してたり、ちょっとニヤついていたり。
でも肝心の好華は胸と口を押さえ俺から目を離さない。
なんか言えよ、だーこの。
俺なんかしたか?
いたたまれない気持ちになって、しようがないから「じゃぁまた」とヘラヘラしつつ教室から逃げ出した。
教室から出たとたん正面から6組の春日が購買部で買ったパンと牛乳、そして少年ジャンプを小脇に抱えてやってきた。
「春日ぁ、ちょっとよか?」(ちょっといいか?)と俺は教科書を借りる件を頼む。
「おお、ええよ、ちょっと待っとって」
春日に続いて6組の教室に。入ってすぐの一番後ろの席が身長の高い彼の席で、どさっと机の上にジャンプを置くと、机の中に手を突っ込んでごそごそと、国語の教科書を取り出し、俺の前に「ほい」と差し出す。
一瞬、以前にも春日から借りた教科書の事を思い出したが、まぁこの際気にしないでおこう。
春日は漫画家志望で時間あれば、というか授業中でも先生の目を盗んではせっせとノートに漫画だったりイラストだったりを書いている。何か書くスペースさえれば、教科書の余白にもパラパラ漫画を書いたりしていた。一年の時は同じクラスで隣同士だったので、時折ちらちら彼の書いた絵を見て、結構上手いと思った。
何度か春日のキャンパスノートを見せてもらった事がある、彼オリジナルのマンガだがまぁどこかで見たようなキャラデザインでストーリーも何かありきたりっぽかった。絵は上手いけど。で、教科書への漫画の書き込みがスゴイ割りには、教科書あるあるの”偉人の写真への落書き”はどこにもなかった。彼なりのポリシーなのかもしれない。
そういえば去年の文化祭では漫画好きなクラスメートと同人誌を販売してたな。
好華も漫画好きだ。女子だから少女漫画かと思ってたら、「デスノート」や「約束のネバーランド」「進撃の巨人」など結構残酷描写ありのコミックをおもしろそうに読んでてちょっと引いた。女子ってやっぱ胸キュンドラマだろ_?
う~ん。
女って普段は何でも無いような表情で受け答えして、ある日突如これまで心の内にため込んでた不満を一気に吐き出す生き物だから、付き合ってる男(夫)は突然の女の激怒に面食らう、てテレビのバラエティで言ってたな。好華の絶叫もその口か?
でもなぁ、あの表情、まるで他人に脅かされたような、いや違う、何かに驚いたといった方が近い。
何に?
とりあえずは教科書を借りる事はできたものの、午後の授業中は結局好華の事が気になって、おまけに先生から当てられる事もなく、教科書を借りた甲斐が無かった。
教科書を春日に返したあと、隣の7組の様子を伺う。好華はいなかった。
勝手にせえよ、ったく。
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