第6話:星空のBelieve- 松田好華-vol.6

 午前最後の授業も終わりのチャイムを告げる。当たり前の事だけれど、昨日の授業の続きであることに間違いない。壇上の先生の様子もクラスのみんなの雰囲気も、ある一点を除いては_。その一点については今は少しだけ忘れてようかな。



 1時間の昼休みは勿論活気づく。お弁当の時間なので。

 2階の職員室隣の購買部にいけばこの時間帯でアンパン、カレーパン、が1個百円で買うことができる。でも120円のマヨネーズパンはこの学校名物で、お弁当忘れたときには私は真っ先に教室から購買部へダッシュするのだけれど、数量限定のマヨパンは売り切れになることがしょっちゅう。このパンは近くのお弁当屋さんで作っているもので、そのお店か購買部で買う以外に入手方法はない。だから下校途中にそのお弁当屋さんに立ち寄る学生も多い。

 

 でも今日はお弁当。いつものように机を四つ田の字に並べて、私、お未玖、ゆうか、はるよ、それぞれにお弁当の蓋を開ける。

 私のはご飯の上に海苔とおかか、隣に卵焼きとゆで卵を四分の一にカットしたものにサイコロにしたニンジンとタコウインナーのまぁ、昨夜の夕飯の余りが三分の一なのだけれど・・・。


「うわ、すごっ」と正面のゆうかが右隣のはるよのお弁当をのぞき込んで驚く。毎度毎度の事なのでその意味はわかる。中学の時から家庭科5のはるよのデコ弁には私も圧倒されてしまう。どれどれ、と私。

「今日はアンパンマンとリラックマのキャラ弁です」とはるよはちょっと照れくさそう。並んだアンパンマン、リラックマの周りにハート型のニンジンやキュウリ。ウサギみたいなリンゴも二きれ。

 くぅ~、いったいどうやって作ってんの_。ていうか、こんなに可愛いキャラ弁、箸つけられないよ。

 お未玖もゆうかも感心している。ゆうかはスマホを取り出す。

「撮ってもよか?」

「うん、よかよ」とはるよ。

「はるよはいいお母さんになるよ」お未玖はお手製のおにぎりと”おーいお茶”のボトルを交互に口にする。

 なんでもない、良い感じだった。




 私のお弁当、最後までとってたタコウインナーに伸びてきた手、右親指と人差し指の付け根辺りに小さな傷跡、小さな違和感がよぎる。

「ウインナー、いただき!」そのあっけらかんとした声は違和感と重なり合う。私の視線はタコウインナーを取り上げ自分の口に放りこんだその男子と目が合った。


 ?! え?何? 何々! 


 どう表現していいか判らない、それは私の感情だろうか、声だろうか、音だろうか?感覚そのものだろうか、クラス全員の視線が一斉にこちらに向けられる。

 私は声とも音とも判別できないような絶叫の中にいた_。


 圭、佐々木 圭。中学三年の夏に事故で亡くなった同級生がそこにいた・・・。



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