第4話:星空のBelieve -松田好華-vol.4
「そやん映画、てあったね」(そんな映画、てあったね)とお未玖は私の勢いにちょっと引いてるけど、ここでダメ押しにと私はスマホをタップする。ネットニュース、SNS,掲示板、どれを開いてもコロナに関する情報は毎日毎時更新されてきりが無い。
すぐスマホやパソコンで検索してしまうのは私の癖の一つだ。たいていの人はネット、口コミ、あやふやな情報でも自分発信で「~なんだってよ」って噂するのだけれど、私はいつもほら、とスマホの画面を見せて念を押す。「私のゆうたことホントやろ」と。こういうのって私の自信のなさから来てるのかもしれないけど、まぁ血液A型だし・・・・。
でも・・・・。
無い・・・・。
SNS,ニュースサイト、どこを探しても「コロナ」「新規陽性者数」「ワクチン接種」「まん延防止処置」これらの言葉の一つも見当たらない。なんで?
確か今朝も台所のラジオから「昨日の新規感染者数は・・・」というアナウンスが流れてたようだったけど、いつもの事だからもう余り気にもならなくなってた。
そうだ、とLINEを開く。昨夜の美穂とのやりとりをスクロールする。コロナで自宅待機中の美穂の愚痴を聞く一方だったLINEを。
え?
私の記憶と違ってる。美穂の学校はインフルエンザが流行って、それで学級閉鎖。美穂は幸いにも元気で、LINEの文章も、”のんびり朝寝坊できる、やったー!”の横で変な目つきでニヤつく絵文字がキラキラしていた。
やりとりの内容もたわいもなく、朝からゲーム、マンガ三昧を堪能してる様子で、それに私が、”ウチんなかに閉じこもってばかりでなくて外出た方がいいよ”と注意じみた事を返してた。
”だって寒ーしさ、好華はいいよ九州だし、暖かくてさ”
”九州だからって、冬は寒いよ、めっちゃ!”
どうなってんの?
急にぞわぞわっと変な汗を感じそうになる。
そんな私の表情を察知したのかお未玖は「怖い映画と怖い夢のダブルパンチ喰らったごたるね」(喰らったみたいよね)と私の肩を軽くポンポンたたいて「深呼吸しなっせ」
こういうときの素振り急変のお未玖にはキュンとくる。一重瞼なんだけれどクリっとした目、すっと通った鼻筋のライン、色白にちょっとぽてっとした唇が可愛くて、おまけに笑窪まで魅力的。ガタイが良い分「優しい先輩風」が時々見え隠れする、成程次期キャプテン候補だ。
「ありがと、お美玖」
ちょっと落ち着こう、落ち着こう。
これは夢かもしれない、夢かも。
やがて教室内も賑やかになってくる。やっぱり誰もマスクしてない。私だけというのもちょっと気が引ける。思わずそっとはずそうかとしたところに担任の若林先生が入ってきてた。
新婚で確か去年の夏休みに籍を入れたって聞いたけど、コロナ禍でハネムーンにいけず「かわいそーだねー」ってしばらく女子の間では若林先生の新婚ネタが流行ってた。相手は十歳下のナースだとか、なれそめはホークスファンがきっかけだったとか、でもどこで? そりゃあ福岡のペイペイドームじゃない? 状況的には?ベンチで二人が野球観戦、ホークスファンの二人は偶然にも席が近かった、そして運命のファールボールが現若林夫人に向かってゴーっと、危ない!とその瞬間、現旦那若林先生が身を挺して・・・、というんじゃない? ホント? さぁ?
でも若林先生の独身時代を知ってる先輩からの話だと、結婚後(それより前の交際中から?)とても柔和になったらしい。それまで(独身時代)はめっちゃ怖い先生で、生徒の誰も先生の笑った顔を見た事がないという噂。まぁ新婚だしね。
壇上から欠席がないかを確認する先生の目が案の定私に向けられ止まる。
「どうした?松田。 風邪か?」
私は曖昧に愛想笑いでごまかす。ちょっと喉が、と。
「保健室行っとくか?」
「後でちょっと寄ります」
マスク外すタイミング逃した。
先生はそうかと納得しつつ、今日の連絡事項は、といつも通りの流れに。
もしコロナ禍でなかったとしたら、先生はハネムーンに行ったのかな_?
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