第2話:星空のBelieve -松田好華-vol.2
”九州だからって、冬は寒いよ、めっちゃ!”
昨日の晩、埼玉に住んでいるいとこ、美穂からのLINEにそう返事したことを不意に思い出す。私の母の実家が埼玉で美穂の母は私にとって叔母にあたる。美穂とは同い年で中学2年の夏休みに母と一緒に美穂の所へお邪魔したことがあった。
一週間の滞在中はずっとお天気快晴でほぼ毎日私と美穂はお隣の東京へ遊びに出かけてた。渋谷、原宿、お台場、そしてディズニーランド・・・。
「やっぱ都会だね、熊本、博多とも大違い」と私。
「そうかもね、でも九州もよさそうじゃん」と美穂「阿蘇山とかさ、大自然で」
「まぁ、阿蘇はいいね、うん、海なら天草とかも・・」
「天草って船の上からイルカ見ることができるんでしょう、ねぇ今度は私がそっち行くからイルカ見に行こうよ」
「うん、よかよ」と私。
「よかよっ」美穂は、私が思わず出した熊本弁を面白そうに繰り返してニコっとする。彼女はちょっとSっ気があって、ふいに出てしまう私の方言を、いつもおどけた表情で真似する。
その当時の私は気恥ずかしさで、心の中で、しょうがないやんか、方言なんだし、と愚痴ってるくらいだったのだけれど、今になって思えば、美穂の奴め、「方言女子は可愛い」という武器を身につけようとしてたんだ。恐るべし埼玉女子・・・。
今、美穂の学校では新型コロナの陽性者がでたということで、濃厚接触者に該当した彼女のクラス全員がPCR検査後しばらく自宅待機という形になっていて、至って元気な彼女は自宅から出られず、ちょっぴりへこんでいる様子がLINEからも伝わってきた。
”朝からずっとYouTubeばっかりみてる”
”でも飽きた”
”九州かぁ、緑の田園、遠くの山々、小鳥のさえずり、いいなぁ、好華んとこへ行きたい!”
そんな美穂の愚痴に私は返す。
”あのね、今2月、緑の田園風景なんてありません。むしろ周り何にも無いから北風ピューピューで寒いよ”
”え? 九州って一年中暖かいんじゃないの?”と美穂
”九州だからって、冬は寒いよ、めっちゃ!”
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