第15話 狙われた少女


 元Bランク冒険者のフリームは、【霧の巨人ヨトゥン】の本拠地で殺気立っていた。

 四六時中威圧を振りまき、目に入る者は誰でも睨みつけ、少し気に障っただけで理不尽に怒鳴りつける。目は憎悪で血走り、こめかみには太い血管が浮かび上がっていた。


「クソッ! クソッ! クソがぁぁああああ!」


 思い出すのは数日前に冒険者ギルド内で出会った三人組だ。途轍もない美女二人と彼女たちを侍らせた男。

 美女たちは、老若男女問わず蕩けさせる美貌であり、肉感的な体つきは男の情欲をくすぐる極上の色香を放っていた。まさに絶世の美女。

 冒険者たちは彼女たちに目を奪われ、一目で見惚れ、だらしなく鼻の下を伸ばす。もちろんフリームも例外ではなく、一晩でもいいからベッドを共にしたい……妄想だけでも激しく興奮した。

 男のほうは裏の人間だと通用しそうな悪人顔で、だが強者特有の覇気を一切感じなかったのだ。だからこそ自分よりも格下の余所者にジュラスの流儀を教え込んで、見たことも無い絶世の美女を自分のモノにしてやる。俺様こそが彼女たちに相応しい――そう意気込んで絡んだのに、結果は散々たるものだった。

 フリームは手も足も出ずに負けた。興味すら抱いていない冷めた眼差しを向けた美女たちに吹き飛ばされ、渾身の一撃は男にあっさりと受け止められる。

 手を砕かれて気絶する寸前、男から放たれた凄絶な殺気。男は爪を隠した龍だったのだ。

 強者に喧嘩を売った自分が悪い――とはフリームは考えない。むしろ、大勢の前で虚仮にされて自尊心プライドが酷く傷ついたと猛烈な怒りを宿している。

 それに、あの男のフリームと相対した時の落胆した黄金の目が忘れられない!


「今度会ったら絶対に殺してやる!」


 逆恨みするフリームは憤怒と憎悪と殺意を滾らせる。

 怒りのままに拳を叩きつけようとして、彼は咄嗟に思いとどまる。


「チクショウ! 俺様に何をしやがった!?」


 手の粉砕骨折や股間の怪我は治癒魔法によって完治している。だが、あれから右腕がおかしいのだ。触れても何も違和感は無いのだが、痛みだけが鋭敏さを増している。

 軽く擦ったり、腕の毛が引っ張られただけで、ナイフで抉られたような痛みを感じるのである。

 何度医者に訴えようが、彼らは異常は無いと言い放つ。つい苛立って医者の顔面を殴りつけては、あまりの痛みに白目を剥いて気絶したのは思い出したくもない。


「フリーム様、命令です」

「あんっ!? 【霧の巨人ヨトゥン】の幹部の俺様に下っ端ごときが命令だと!?」

「も、申し訳ございません! ボスからのご命令をお伝えに来ました!」

「チッ! 最初からそう言え! で、なんだ?」


 イライラしながらも伝令役の続きを促す。

 ジュラスで最も強い冒険者と言われている彼だが、所属する【霧の巨人ヨトゥン】には逆らうつもりはない。【霧の巨人ヨトゥン】の後ろ盾があるからこそ、彼は好き勝手にできるのだ。女性を無理やり犯そうが、警備隊や町の中枢に影響力を持つ【霧の巨人ヨトゥン】がもみ消してくれる。

 彼らはジュラス最強の冒険者という戦力を得て、フリームは好き放題できる。まさにウィンウィンの関係。

 だが、彼は今まで数々の注意や警告、さらにはランク降格の処分を受けていたにも関わらず、数日前に起こした揉め事がとどめとなって、とうとう5年間の冒険者資格の停止処分を受けてしまったのだ。

 一時的に冒険者ではなくなってしまったフリームは、下手に【霧の巨人ヨトゥン】に逆らって都合のいい後ろ盾を失うわけにはいかないのだ。


「女を一人攫って例の依頼人に届けよ、とのことです」

「例の依頼人……あのいつもの男か。また新たなオモチャを見つけたか。が、何故俺様が人攫いをしなければならないんだ! 他の奴の仕事だろうが!?」

「そ、それが、対象の女が西区に住んでいて、【邪妖精の眷属スプリガン・ファミリア】が贔屓にしている店の娘なんです。戦いになる可能性が高く、フリーム様なら余裕だろうとボスが……」

「西区の腰抜けどもか。まあいいだろう。ボスの命令だ。従ってやる」

「お、お願いします! そ、それと、娘のほうは傷一つつけるなとの依頼人からのご要望です」

「チッ! わかったよ!」


 少しくらい味見させてもらおうかと思っていたフリームは、舌打ちをして渋々受け入れる。そして、オドオドと怖がる伝令役をキッと睨みつける。


「で、女の名前は?」

「は、はい! ブラウニーです! ブラウニー・ベル! 小料理屋『家妖精の鐘』の娘です!」



 ■■■



 狙われているとは露程も思っていないブラウニーは、母シルキーと一緒に買い物をしていた。

 誘拐事件からシルキーの過保護っぷりが増して、片時も目を離さないよう常に行動を共にする。ブラウニーも表面上は平気なふりをしても、一人で行動するのはやはり怖いので、母が一緒にいてくれるのは正直助かっていた。

 親子は仲良く並んで店を回る。


「他に何を買わないといけなかったかしら? あら、あの屋台は初めてね。お菓子かしら? 甘くていい香りがするわ」

「って、ママ! 目を離すとどっか行くんだから!」

「ブラウちゃん。半分こしましょー!」

「いいけど! これじゃあどっちが母親かわかんないじゃん……」


 マイペースな母親に呆れながらも、屋台のお菓子を半分貰って砂糖やクリームの甘さに頬が緩む。

 やはり甘いものは正義だ。揚げパンの中にカスタードクリームが入ったようなお菓子なのでカロリーについてはあまり考えたくない。まあ、今歩いているので大丈夫だろう。


「美味しいわね! ルシファさんたちに買って帰ったら喜ぶかしら?」

「喜ぶかもね。帰りに寄ってみる?」

「あら? じゃあ今すぐ?」

「こらこら! まだ帰りじゃないから! お塩とか買わないといけないから!」

「あらら。そうだったわね。ピーターのところのお店に行くんだったわ」


 手を頬に当てておっとり微笑むシルキー。いつもと変わらぬ母の様子にブラウニーはため息をつきたい気分だ。


「しっかりしてよ、ママ。本当に外ではうっかりを炸裂させるんだから。家だとそこまでないのに……」

「家でピシッと気合が入るのはブラウちゃんも同じでしょう?」

「それはそうだけど……あぁっ! もうママ! 寄り道しなーい!」


 フラフラと露天に誘われるシルキーの手を握ってブラウニーは問答無用で引っ張っていく。このまま母を自由にさせたらいつまで経っても買い物が終わらない。せめて必要なものを全て買ってから寄り道してほしい。

 数分後、彼女たちは【邪妖精の眷属スプリガン・ファミリア】が経営する表向きの店『レプラコン商会』に到着した。


「ピタおじさんはいるかなー?」

「どうかしら?」

「おっ!? 女将さん! お嬢! いらっしゃいやせー!」

「「「いらっしゃっせー!」」」

「どうもー!」

「こんにちは」


 ビシッと元気よく挨拶してくる顔馴染みの店員に笑顔を返し、商品を品定めしていく。

 レプラコン商会は輸送や仕入れに力を入れており、この町の特産品を他の町で売り、逆にこの町で手に入らない商品を仕入れてきて販売している。食料品だけでなく、雑貨や日用品も安く売っているので毎日繁盛しているらしい。

 西区は住宅街で人が多いことも儲かる原因の一つだろう。

 ちなみに、レプラコン商会は【邪妖精の眷属スプリガン・ファミリア】が経営していることは公然の秘密である。

 すると、


「何をお探しでしょうか、お嬢様方」

「あっ! ピタおじさん!」

「あら、ピーター」

「よっ! シル。ブラウちゃん」


 連絡が届いたのか、気怠げな雰囲気をまとった痩身の男、ピーターが店の奥からやって来た。

 彼は口元をニヤッと吊り上げて冗談を言う。


「俺に会いに来たのか?」

「そんなわけないでしょ。ブラウちゃんとお買い物です!」

「お、おう……そんなにバッサリ言われると傷つくなぁ」

「え? どうして?」

「うぐぅ……何でもない」

「おじさん、どんまい!」


 シルキーに一切悪意が無いのが逆に辛い。胸を押さえるピーターの肩をブラウニーが優しく叩く。

 彼の気持ちは想い人に伝わらないようだ。


「で、今日は何を買いに来たんだ?」

「お塩とか調味料だけど、ピタおじさん立ち直り早っ!?」

「おうおう、ブラウちゃん。シルと何年の付き合いだと思ってやがる? これくらいで落ち込んでたらやっていけねぇよ! ほらよ。いつもの塩だ。おまけして三割引きな」

「さっすがおじさん! 大好きー!」

「そういうのは本当に好きな男に言ってやれ。って、ほらそれ。今回の仕入れで手に入ったカリー粉だぞ。結構人気で残りはそれだけだ」

「確保っ!」

「毎度あり」


 父と娘のようなやり取りをシルキーは一歩離れてのほほんと微笑みながら見つめている。


「仲がいいわねぇ。でもピーター? 私の可愛いブラウちゃんはあげませんからね!」

「お、おう。怖い顔で睨むなよ、シル。ブラウちゃんは恋愛対象外だっつーの」

「……なるほど。ピタおじさんは巨乳派か。滅べ」

「ちょい待ち、ブラウちゃん! その目は俺に効く! 物凄く効くからやめてっ!?」


 娘のように思っている子からの軽蔑と嫌悪と憎悪の眼差しに、マフィアのボスは膝から崩れ落ちたいほどのダメージを負う。いい年をしたおじさんが涙目である。


「そんなにおっぱいが好きならママと喋ってれば!? 私、お買い得品を見てくるから!」


 ベーっと舌を出して、茶目っ気たっぷりに翠の瞳をウィンク。ブラウニーなりのお膳立てというやつらしい。大人二人を残し、彼女は店の前に並べられたお買い得品コーナーを物色し始める。


「ピーター……あなたも大人になったのね」

「おぉいっ!? なんだその慈愛の眼差しは!?」

「あの小っちゃかったピーターが女性の胸に興味を抱くようになったなんて、感慨深いなぁって」

「……シルの中の俺はいくつで止まってるんだ? いい年した大人だぞ、俺たち」

「そうね」

「シルはティンの奴と結婚して、ブラウちゃんが生まれて、あの馬鹿が死んで……」

「……いろいろあったわね」


 ティンことティンカーというのは二人の幼馴染で、シルキーの亡き夫でありブラウニーの実の父親である。

 ティンカー、シルキー、ピーターの三人は、この町で生まれ育ち、一緒にヤンチャし、大人になった。

 もともとピーターはシルキーには惚れておらず、想い合っていたティンカーとシルキーは結ばれた時には泣いて喜んだものだ。すぐにブラウニーが生まれ、幸せいっぱいなベル家を守るために奮闘していたら、いつの間にかピーターは西区を支配するマフィアのボスにまで上り詰めていた。

 事故でティンカーが死亡し、悲しみに暮れながらも子育てを頑張るシルキーを亡き親友の代わりにピーターが支えているうちに、彼女の凛々しい母親の姿に彼は惚れたのだ。


「ピーターは結婚しないの?」

「……俺なんかよりもシルはどうなんだ? ブラウちゃんもそろそろ成人だろう?」

「そうねぇ。でも私、おばさんだし」

「おいおい。長命種が何を言っている? 平均寿命が800歳じゃなかったか?」

「そうね。750歳くらいまで子供も産めるわね。それから50年くらいかけてゆっくり老化していくの。長いなぁ」

「再婚するのもありじゃないか? ティンの馬鹿にはあの世で会ったとき、お前が早く死んだのが悪いって言ってやれ」


 ブラウニーが成長して手にかからなくなったことで、ようやく余裕ができてきた。シルキーも自分の未来についてそろそろ考え始めても良いだろう。このまま数百年一人で過ごすのか、それとも再婚して新たな家庭を築き上げるのか――


「ブラウちゃんが結婚したら考えようかしら。人生長いし」

「そうか。ブラウちゃんが結婚したら、か。ブラウちゃんは誰と結婚するんだろうなぁ……」


 ふとウェディングドレス姿のブラウニーと彼女の隣に立つ男の姿を妄想して、思わず父親のような嫉妬心が湧き出してきてピーターは顔をしかめる。

 もし彼女が彼氏を紹介しに来たら『お前なんかにはやらんっ! 結婚したいなら俺を倒してからにしろ!』と決闘を挑んでしまいそうだ。

 そんな彼を巨乳未亡人の灰色の瞳が訝しそうにじっと見上げていた。


「……嫉妬してるの、ピーター? 他の男に取られるならいっそのこと俺が、とか考えてないわよね? ブラウちゃんはあげないわよ?」

「シル!? 思ってねぇよ! 単に娘を嫁にやる父親の心境になってたんだよ!」

「ふーん?」

「信じてくれって! 頼むから!」


 ここでシルキーに想いを伝えられるような男ではない。ピーターは今日も今日とてヘタレる。

 疑って警戒するシルキーと必死に誤解を解こうとするピーターの二人のやり取りを少し遠くからブラウニーは眺めていた。

 せっかく二人きりにしてあげたというのに無意味に終わってしまったらしい。いつも通りの結果に彼女は軽く嘆息する。


「ピタおじさん……そんなアプローチじゃいつまで経ってもママは気づかないって。誰かに取られてもいいの?」


 昔から父親のように思ってきた彼が母と結婚することに反対はしない。むしろ応援してもいる。

 でも、最終的に選ぶのはシルキーだ。

 幼馴染という関係から一歩進まないと、シルキーがピーターのことを異性として見ることはないだろう。弟のように思っている節があるし。

 恋というのはいつ落ちるのか誰にも、自分でさえも、わからないのである。

 もう少し様子を見ているべきか、それとも会話に混ざってお膳立てしてあげるべきか――ブラウニーは悩んでいると、ふと日光が遮られた。




「お前がブラウニー・ベルか?」




「は、はい。そうですけど……」


 尋ねられたので反射的に答えながら振り返ると、背後には逆光の中立ち塞がる大男が音もなく出現していた。

 身長は軽く2メートルを超えるだろう。彼が目の前に立っているだけで強烈な威圧感を感じる。フードと逆光で顔は良く見えないが、苛立ちでぎらつく瞳だけははっきりと見えた。

 恐怖で立ち竦む彼女に大男は巨大な手を伸ばし、


「そうか。なら眠れ」


 ――バチッ!


「っ!?」


 傲岸不遜な声で告げて何かの魔法を発動。小さな電流のような衝撃がブラウニーの体を駆け抜け、悲鳴をあげる前に意識が消失する。

 ぐったりと脱力した彼女を男は軽々と肩に担ぎ上げた。


「ブラウちゃん!?」


 偶然気づいたシルキーの悲鳴が店内から迸った時には、男は跳び上がって建物の屋根を伝って逃走を開始していた。

 一瞬遅れてブラウニーの誘拐を把握したピーターは、店員をしていた組織の人間に声を荒げて命令する。


「追え! 何としてもブラウちゃんを救い出せ!」


 部下たちは即座に行動を開始。数名が追跡を開始する。


「ブラウちゃん! ブラウちゃん!? なんで!? どうしてっ!?」


 半狂乱で娘を追いかけようとするシルキーを、ピーターが抱きしめるように引き留める。


「落ち着け、シル! 落ち着くんだ!」

「退いて! 離して、ピーター! 助けなきゃ! ブラウちゃんを助けなきゃ!?」

「わかってるが、周りを見ろ! 囲まれている!」

「っ!?」


 気づけば店の周りを顔を隠した者たちが包囲していた。状況を理解して顔面蒼白なシルキーをピーターが背中に庇い、さらには残った【邪妖精の眷属スプリガン・ファミリア】のメンバーが前に出る。

 何の合図も無しに始まる戦闘。飛び交う魔法。武器と武器がぶつかる甲高い金属音。ピーターはシルキーを店内に避難させることしかできない。


「チクショウ! 俺も腕っぷしが強ければ……! なんで頭脳あたま担当なんだよ!」


 何もできない自分が歯がゆい。焦りが募るが、戦闘力がないに等しい彼は仲間を信じて待つしかない。

 時間は刻一刻と過ぎていく。

 始まりと同じように、店前の戦闘は何の前触れもなく終了する。敵は一斉に逃走したのだ。


「チッ! 時間稼ぎが目的か! ウチの店の前だからどこも事を起こさないと思って油断した!」


 そこにちょうど誘拐犯を追跡をしていた一人が戻って来た。


「すいません、兄貴! 見失いました。南風ノトスの縄張りに入ったのは確実なんですが、そこで撒かれました」

「ピーターの兄貴! 時間稼ぎをしていた連中の中に、南と東のシンボルを付けた奴らがいやした! 赤い風と黄金の果実の紋章っす!」

「【豊穣の南風ノトス・アウステル】と【東の果実フォビドゥン・フルーツ】が手を組んだのか?」

「お嬢を誘拐したのもウチに対する人質かもしれませんぜ!」

「……そうだな。ブラウちゃんは最も効果的だ。ウチの宝だからな」


 古参メンバーにとっては自分の娘や孫のような存在だ。他の者にとっても姉や妹ポジションである。もはやブラウニーは家族の一員。

 そんな彼女を目の前で誘拐されて、【邪妖精の眷属スプリガン・ファミリア】の者たちはかつてないほど激怒していた。

 ピーターはシルキーを安心させるため無理やり笑顔を作って微笑みかける。


「シルは家に戻っていてくれ」

「ピーター!?」

「俺たちが必ずブラウちゃんを助け出す。だからシルは家でブラウちゃんを待っていてくれ」

「で、でも!?」

「――シル、俺たちを信じろ」


 今までに見たことのないピーターの真剣で強い眼差しに気圧されて、半ばパニックになっていたシルキーは冷静さを取り戻し、自分が行動しても役に立たないことを自覚して、幼馴染の言うことに従う。


「……お願い、ピーター。私の可愛い娘を助けて!」

「ああ。もちろんだ!」


 力強く頷き、ピーターは数名の部下に彼女を任せる。


「シルを家に必ず送り届けてくれ。家ならシルは安全だ」

「わかりやした、兄貴!」

「さあ女将さん。俺たちが命を懸けてお守りするっす!」


 ピーターは彼女を見送り、姿が見えなくなったところで、シルキーとブラウニーには決して見せない冷酷なマフィアのボスの表情を浮かべる。

 裏組織のボスに相応しい風格を纏う彼の瞳は憤怒の炎で冷たく燃えていた。


「【豊穣の南風ノトス・アウステル】と【東の果実フォビドゥン・フルーツ】は手を出しちゃいけないモノに手を出したみたいだな」


 怒りを押し殺した震える低い声で彼は述べる。


「ちょうど邪魔だと思い始めたところだったんだ……お前ら、全員に告げろ――」


邪妖精の眷属スプリガン・ファミリア】のボスは、付き従う部下たちに傲然と号令を放つ。


「――【豊穣の南風ノトス・アウステル】と【東の果実フォビドゥン・フルーツ】を潰すぞ!」








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