大学1年 ④ 生理不順
冬の前触れを感じる深い秋の季節、未希はアパートの部屋でひとり泣いていた。大学に行きたくないからである。勉強についていけないということよりも、授業をさぼりまくってる自分に突き刺さる、クラスメイトからの冷ややかな眼差しに耐えられなかったのだ。すべて自分自身のせいだけど、大学なんて辞めてしまいたい。誰にも言えないけど自分の中で強くそう思った。
前期の単位は9だった。フル単半分にも満たない。でも未希は平気だった。単位なんてどうでもよかったからである。自分は5回生になる気でいた。親不孝者だけどそう感じていた。だけど半年も大学生をやっていたら、大学を卒業する自分の未来なんて全然想像ができなくなった。
そんな不安定な気持ちは体調へも表れるようになる。今まで毎月だいたい同じ時期にきてた生理がこなかった。逆に不正出血になり、月に三回も出血した。心配になった。こんなこと誰にも相談できない・・・。初心な未希は親にも言いづらかったのだ。
ハッとひらめいた。私にはネットがあるじゃん☆彡
いつの間にかホームと化したスカイプの掲示板へ投稿した。
『最近生理不順になってしまって不安です・・。産婦人科で働いてる方とかいらっしゃったら相談にのってくれませんか??』
ほとんどが変態からのコンタクトであったが一件、産婦人科の医者だと名乗る人がいた。
『初めまして。産婦人科の医師をしています。どのような悩みがあるのかお教えください。お答えいたしますよ。』
そしてアイコンは白衣を着たイケメンであった。すぐに許可して、生理不順だということを伝えた。そしたら、通話で詳しく話をしますよとのことだったのですぐにかけた。その医師は低くて渋くて、すごくかっこいい声をしていた。こんなかっこいい人に生理不順の悩みを聞いてもらうなんて恥ずかしい・・・と思っていたが、話していくうちにそんな感情も消え去った。
医師は「生理の血がでるところって何と言いますか?三文字で」という意味不明な質問をしてきた。未希はあのいやらしい単語だけは言うまい!と、「せいき!」と答えた。医師は「そう、ヴァギナともいいますね。」と言った。なんじゃこりゃ?と一瞬思ったが、医師はますますエスカレートしていった。急に、ビデオ通話してもいいかと聞いてきたのだ。未希はビデオ通話にしなくていいけど、プロテインを飲む姿を見てほしいとのことだったので見ることにした。相手がビデオをONにする。そこには・・・アイコンの白衣イケメンの姿はなく、髪の毛を金髪に染めた筋肉マッチョの眼鏡おじさんがいた。そしてプロテイン山盛りと生卵10個をミキサーの中に入れ、どろどろになった液体をジョッキグラスに注いてぐびぐび飲んでいた。医師・・いや金髪マッチョおじさんは、プハー!これがおいしいんです!と言っていて、未希はいきなりの情報量の多さに、え?!は?!うそやん!??ちょっとちょっと!!といいつつ、潔くプロテインジュースを飲む姿に大爆笑をしてしまった。この時未希はマッスル北村の存在を知らなかった。医師は一言。「最近しっかり笑えてないんじゃないですか?笑うときっと元気になりますよ!」と言い、プツリと電話を切った。そっか、私は最近泣いてばかりいた。心の底から笑えたのっていつぶりだろう。その医師は生理不順のことについて全然教えてくれなかったけど、未希はすごく心の中がすっきりした感覚があった。お礼のチャットを送ると、医師からURLが送られてきた。
クリックしてサイトを開く。それはニコニコ動画であった。未希は配信者に釣られたのだ。まじかぁぁぁ!とさらに爆笑。未希とビデオ通話した時、配信者はマッスル北村のプロテインを摂取する動画に、うまくアフレコで演技していたのだと知って驚いた。
新たな獲物を探すその配信を見守ることにした。ニコ生にコメントを送ると、釣られてるときの私を見てた視聴者から「みきちゃん~!」とコメントが来てなんだかうれしかった。
その勢いで、母親に相談のメールを送ってみた。そしたら病院に行くべき!と言われたので行くことにした。初めての産婦人科。両足がゆっくりと開いていく。初めて見せた処女のヴァギナは産婦人科の男性医師だった。よくわかんないけど、月経のリズムがずれているとのことだったので、女性ホルモンの注射をしましょうと提案された。しかし未希はもう少しでインカレに出場しなければならない。授業には出てなかったが、しっかりと部活には参加していたのだ。スポーツ推薦ということもあり、選手として出ることになっていた。「あの、それってドーピングに引っ掛かりますか?」と質問したら、引っ掛かってしまうとのことだったので、大会が終わった後にもう一度訪れると言い病院を後にした。
不安な気持ちが一気に晴れていくのが分かった。変な病気とかでなくてよかった。やっぱり早期発見は大切だな!そういえば・・・私の体に昔からある黒子、メラノーマじゃないか心配になってきた。背中と胸のところと鼻の下、年々大きくなっているような気もするし・・・今度皮膚科で一応見てもらおう。と決めた。
後日、さっそく皮膚科へ診察しに行った。医師はおじいさんだった。
「あの・・・メラノーマかどうか見てほしいんですけど。」と言い、まずは鼻の下の黒子を見てもらった。医師は「全然違う!!」という。じゃあこれは?と、背中の黒子を見せる。「これも全然違う!」そして最後、胸の横の黒子を見せる。「これもちがう!」診察は約15秒で終わった。メラノーマでなかったことの安心感よりも、あまりの診察の短さと恥ずかしさで未希は苦笑いをしていた。そしてしっかり、請求された診察代680円を支払った。心配しすぎもあかんな!と未希は勉強したのである。
インカレは微妙な順位で幕を閉じた。普通に生理がきた。体調が悪いところはすべてなくなった。。大学の授業へのストレス以外は。。
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