時の流れはおんぶと共に

御厨カイト

時の流れはおんぶと共に


「う、うわぁぁぁん!い、痛いよぉぉぉ!うあぁぁぁぁん!」


「あぁ、もうまったく。男の子が転んだぐらいで泣くんじゃないよ。」


「し、し、師匠ぉぉぉぉぉぉ!」


「……はぁ、仕方がない子だね、まったく……。ほら、おいで。」



そう言いながら、師匠は僕の事を優しくおんぶする。



「まったく、君という奴は。そんなことでピーピー泣いてたら、私の修行についてこれなくなるぞ。」


「そ、そんな事言ったって、い、痛いんだもん!」


「……はぁー、ホントにもう、仕方がない子だ。と言うかいつまでも私の耳元で泣くんじゃないよ。五月蠅くて仕方がない。」


「う、うぅう、だって、だって……」


「あぁ、もう、家に帰ったらちゃんと治癒魔法掛けてあげるからそれまで我慢しな!じゃないと夜ご飯抜きにするよ!」


「うぅう、ひどい……、……この鬼ババア……。」


「……何か言ったかい?」


「……何でもない。」


「うん、なら良いんだ。じゃあ、さっさと帰るよ。」



そうして、僕は師匠の大きな背中に背負われながら、家へと向かうのだった。









********








「お師匠様ー!そろそろお茶にいたしませんかー?」



僕はそう、森の中で魔法の鍛錬をしている師匠に声を掛ける。



「うん?あぁ、今行くよ。」


そう言い、師匠がこちらに来ようとした、その時






バタッ







「お、お師匠様!?」



いきなり師匠が倒れた。



「お師匠様!大丈夫ですか!?」


「あ、あぁ、大丈夫だ……。どうも魔力切れを起こしてしまったようだ。」


「はぁー、なんだ良かった……。もうまったく、気を付けてくださいよ!」


「う、うん、すまなかった。そうだ、ちょっと肩を貸してくれ。家まで歩く。」


「何を言っているんですか。そんな魔力切れでヘロヘロな人を歩かせるわけにはいきませんよ。ほら、僕の背中に乗ってください。」


「え、い、いや、そこまでしてもらわなくて、歩けるよ。」


「いいから、早く。」


「はい……」



そうして、僕は師匠をおんぶする。



「まったく……、君という奴は……。そこまでしなくても良いと言うのに。」


「弟子が師匠のことを心配して何が悪いんですか?いいから黙って、魔力切れを起こしたおっちょこちょいさんは背負われてください。」


「……むぅ、なんか悔しいな……。」


頬を膨らませながら、そう師匠は言う。


「……それにしても、君の背中は大きくなったな。」


「そりゃあ、人間ですからね。年々成長してるんですよ。……そう考えたらお師匠様は出会った頃から変わらず小さいままですね。」


「……小さいは余計だよ。まぁ、確かに私たち魔女は体の成長が人間で言う大体18歳ぐらいで止まる。だから、それからは体が成長しないんだ。」


「それはなんだか羨ましいですね。ずっと美しい姿でいることが出来るなんて。」


「そうとは一概には言えないぞ。確かにずっと若い姿でいることが出来るというのは良い事かもしれないが、逆に言えば愛した人と一緒に老いることが出来ないんだ。」


「あっ……、そうか……。」


「それに私たちは長生きだというのもあって尚更な。中々難しいよ……」


顔を少し背中にうずめながら、師匠はそう言う。



「……帰りましょうか。お茶冷えてしまいます。」


「そうだな、……おんぶしてくれてありがとう。」


「いえいえ、お師匠様のためならこれぐらい。」



そんな事を言いながら、僕らは家へと向かうのだった。




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時の流れはおんぶと共に 御厨カイト @mikuriya777

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