第30話 パーティゲーム
日曜、僕は早朝に起きた。
「とってもいい朝!」
僕はたっぷりの睡眠を確保してお蔭で、とっても元気だ!
「「……」」
そして二人はまだ寝ていた。スヤスヤと寝ている。幸せそうだ。
「……まだ起こさないで置いてあげよう」
僕は寝ている二人の頬にそっとキスを一つずつしてから、キッチンに移動する。
ということで、僕‘sキッチンの始まりだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ツユリのむずがる声が聞こえてきたので様子を見に行くと、ツユリは拘束で身動きが出来ずにもがいていた。
「んむ~っ! んむ~っ!」
「あ、ごめんごめん。僕と同じノリで縛っちゃった。そうだよね、ツユリ関節外せないもんね」
僕がツユリをぐるぐる巻きにしていた縄と猿轡を外してあげると、ツユリは睨んできた。
「……私が言えた義理じゃないけど、寝てる間に拘束って最低の行為だからね」
「まぁ君たちも僕にするし、僕の目的って勝手に起きた君たちの殺し合いの防止だから」
「分かってるけど、……分かってるけど、言いたかったの!」
ふんっ、とツユリはそっぽを向いた。ぷりぷりと怒っているらしい。可愛い。
ツユリが怒ってるのって、何か可愛いんだよなぁ。
矛先が絶妙に僕に向ききっていない感じが憎めないのだ。勝手にぷりぷりしているというか。
なのでこうやって撫でまくっても文句を言ってこない。
「ふんっっっ!」
そっぽは向いちゃうけど。可愛い。
僕はひとしきりツユリを撫でて満足してから、ユイの肩を叩いて起こす。
「ユイ、ユイ~……? 起きて、ほら。ツユリに殺されちゃうよ」
「ハッ!」
「お兄ちゃん……起こすための言葉として、そのチョイス最悪じゃない?」
流石に起こし方としてひどすぎたのか、ツユリから苦言が呈される。
一方この言葉で起こされたユイはと言うと、困惑して僕とツユリの間で視線を行ったり来たりさせている。
「え、えっ!? こ、殺され……!?」
「ああ、いいよ。朝でダルイし、殺さない殺さない」
「あ、そう……? あれ、何か美味しそうな匂い……」
ユイがすんと鼻を鳴らすのに、僕は料理中だったことを思い出す。
「ああ、朝ごはんを作ってたんだ。ちょっと待っててね。あんまり激しく殺し合わないように」
「身から出た錆だけど、『殺し合わないようにね』って言われるの何かキツイ……」
「ツユリちゃんも? 私も、何か恥ずかしくなってきてて……」
今のところ殺し合う雰囲気がないので、僕は放置してキッチンに戻った。
それから十数分料理を済ませて、僕はリビングにお皿を並べていく。
「わぁ……! おいしそう。洋風だね、アキラくん」
「ホントだ、おいしそ……うだけど、朝からこれ重くない?」
それぞれ言いながらも席についていく。僕は言った。
「ということで、今日はブリティシュブレックファストです。召し上がれ」
「ブリティシュ……? イギリス?」と首を傾げるユイ。
「イギリス!? メシマズで有名な?」と文句を言うツユリ。
僕は人差し指を揺らしながら「ちっちっち」と解説を始めた。
「イギリス料理はね、朝ごはんと、カレー、中華だけはおいしいと言われているんだよ!」
「三分の二がイギリス料理じゃないけど」
「アキラくん博識だね~。私は朝からがっつり行くの好きだから、いただきます! ……んん~! おいしい!」
ハムだったりソーセージだったりベイクドビーンズだったりをパクパク食べて、ユイは幸せそうだ。
ものすごい勢いで食べるので、寝起きの薄着な分、胸元が激しく揺れている。
そしてそれをツユリが凝視している。
「ツユリもいっぱいお食べ」
「食べる」
僕の催促に、ツユリもガツガツ食べ始めた。まるで親の仇みたいに食べている。
それに満足して、僕も一口。うん、我ながらおいしいね。
三人そろってパクパクしながら、数分。僕は「そういえば」と二人に話しかける。
「今日は日曜日だけど、どうしよっか。二人と分断デート計画は拉致されて頓挫しちゃったし、もう三人で遊ぼうよ」
「お兄ちゃん、そんな計画練ってたの……?」
「道理でツユリちゃんいないなって思ってた。そっか、あらかじめ手を打ってたんだね」
「まぁね。とはいえ徹夜続きだったから、頓挫して良かったとも思ってるけど」
「何で徹夜……? ああ、なるほど。それでずっとFPSを。お兄ちゃん変な気を遣って無理しすぎないでね……?」
ツユリの気遣いが嬉しくて、僕は「そうだね、控えるよ」と答えておく。
それにユイは、自分に分からない話をされている、とちょっと不機嫌そうだ。
僕は話を戻した。
「ということで、今日はもう面倒くさいから三人で遊ぼうと思うんだけど、みんな何か案ある?」
「お兄ちゃんと二人っきりでゲームしたい」
「アキラくんと二人っきりでおしゃべりしたい」
言うなりぎょろりと目を剥いて睨み合う二人だ。もう君たち仲いいんじゃないの?
「じゃあ間を取ってパーティゲームをしようか。ちょうどそれ用の道具はポーチの中に揃ってるんだ」
「出た、たまに見るお兄ちゃんの四次元ポーチ」
「あ、アキラくんの四次元ポーチだ」
何? 何で僕のポーチみんなに把握されてるの?
「ということで、今回は……」
ひっくり返す。中にたくさん物が詰まっているので、基本的にひっくり返しただけでは一つくらいしか物が落ちてこない。
今回は、「10ポイント」と書かれた札が出てきた。
「もう一度やり直すね」
「ちょっと待って? お兄ちゃん今の何? 何のポイント? 何のポイントが10ポイント加算されるの?」
「アキラくんの10ポイント私も欲しいな……」
「ユイさんそういう言い方だと隠語にしか聞こえないからやめて」
僕はもう一回ひっくり返す。
鼻眼鏡が落ちてきた。「変装用」とタグが付いている。
「良いのがなかなか出ないね。もう一度」
「ねぇお兄ちゃん。今の鼻眼鏡はまぁ小道具として分かるんだけど、何『変装用』って。仮装じゃないの? 鼻眼鏡で変装が成立するの?」
「……いや、アキラくんなら、あるいは……」
「ほら、お兄ちゃん全肯定botのユイさんですら疑惑の判定だよ? 鼻眼鏡で変装は無理があるよ。仮装用に変えよう?」
僕はもう一回ひっくり返す。三度目の正直だ。
果たして、出てきたのは大量の割りばしだった。
「そろそろ物理法則超越してないそのポーチ? その量の割りばしは絶対入らないでしょ。っていうか何で割りばし携帯してるの?」
「……待って、ツユリちゃん。この割りばし、番号と……王様って書いてある!」
「!?」
二人は戦慄する。僕は宣言した。
「ということでこれから王様ゲームをします」
「え? パーティゲームってそういうこと? ポーチひっくり返すのってこれから始まるパーティゲームを決めるガチャだったの?」
「ツユリちゃん、もういいじゃない。……王様ゲームしよ?」
「ダメだユイさんが欲望にとらわれた目をしてる」
僕らは王様ゲームをすることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます