3 Cパート




 【喪霜もしもモール1F/アキス】



 空から降ってきた巨大な手のひら――まき散らされた手首が人々を襲い、間もなくその場は混乱の坩堝と化した。


 怪人は怪物だった。お姉さんすら怪物だった。助けようとした人質に、ただのヒーローは打ち殺された。


 凄惨なショータイムによって、がら空きになった一階イベントホール――そこにいた人々は出口へ殺到するもシャッターに阻まれ、問い詰めようとした店員が変貌して恐慌、散り散りになって逃げ惑う。シャッターに阻まれていないエスカレーターを駆け上がり、二階通路に出る者もいた。しかしそこにも既に怪人が徘徊している。エスカレーターは連続しておらず、三階へ逃れようにもシャッターがそれを阻む――そして、追いつめられる。


 銃声も鳴っていた。しかしそれも四階からのものを除いてすぐに聞こえなくなった。


「な、何がどうなってんの……!?」


 アキスは春原はるはらを抱きかかえ、一階のイベントホールへと飛び降りた。舞台周囲には首を絞められたまま動かなくなった人々が倒れている。二階から白貌の怪人が見下ろしていた。


「分からん。分からんが――」


 周囲から悲鳴や怒号が上がる中――嵐が過ぎ去った後、あるいは台風の目の中にいるかのように、この場所は静まり返っている。人々を追い、怪人たちもどこかへと消えていったのだ。


(なんとかしてシャッターを壊せば逃げられる――変身しなくても、やれるか?)


 その後は――警察を呼ぼう。あの鉄腕ワンパン刑事なら、この状況も――



 ――ドスン――



「!?」


 頭上から、人間が降ってきた。白濁色の人型、そして、スーツ姿の――



「くっくっく、ここで会ったがなんとやらですねェ――」



 暗がりから、一人の男が姿を現した。


 拳銃を手にしたそいつは、無数の白貌の怪人を引き連れている――


「こいつ、は――くっ!?」


「あ、アキス……!?」


 ――頭が痛む――



前野まえの――!』


 ――銃声。痛み。


『――人類を新生アップデートさせましょう! マスター・クローズがもたらす変革を、この世界に!』


 ――哄笑。叫び。


『――だい、じょうぶだ。これで、命だけは――君は、私を知らないだろう。私は、君の叔父――君が、君の××を止めるんだ。君なら――』


 ――覚醒。願い。


『よもや――黒宇頭くろうず亜郎つぐろう! とんでもない置き土産を残してくれたものだ。遺跡で発掘された〝ベータリアン試料〟――まさか、人間に埋め込むなんて!』


 ――驚嘆。狂い。


『――おれは、かえる――家に――必ず……』


 ――雨音。そして。


『博士! 全裸の変質者が倒れてる!』



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