3 Cパート




 【休日:喪霜もしもモール2F】



 一方、その頃――暇を持て余したアキスは、春原はるはらの付き添いで近隣でも最大規模のショッピングモールを訪れていた。


「クソ、なんだよ手ぶらかよ。人を散々待たせておいて……」


「手ブラ? 何アキスくん、そういうシュミ?」


「は?」


 下着専門店から出てきた春原との意思の疎通に失敗し、やはり人間とは分かり合えない生き物なのだと哀愁を覚えながら、アキスはそれまで目を向けていた階下のホールに視線を戻した。


 このモールは吹き抜けになっており、吹き抜けを挟んで両端に通路があり、壁際に店舗が並んでいる。アキスが見ていたのは一階中央にあるイベントホールで、その舞台上では現在、ヒーローショーが行われていた。


「何あれ」


 隣から覗き込んだ春原が顔をしかめたのは、舞台にいる怪人――白くて、キモくて、どこかで見た事のある――白貌の怪人そのものだった。

 その怪人が、司会のお姉さんを人質にヒーローと対峙している。


「今どきのヒーローショーってのはヤバいな、なんかもう子ども防犯教室って感じだ」


「時世じゃない?」


 人質にされた時は慌てず騒がず、大人しくしていましょう。どこかで警察のスナイパーがあなたを助けようと銃を構えています。下手に動くと、弾に当たってしまいますので――


 パンっ! ――と、リアルな銃声が響く。つい最近本物の警官による発砲を耳にしたアキスからしても「リアル」と感じさせる銃声だった。


 続いて――


 ドゴォン――ぱりーん――実にリアルな効果音である。


「あ?」


 空からガラスの破片が降ってきた。


 白い塊が落ちてきた。それは巨大な手のひらのようだった。


 ――怪人の残骸だった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る