天紋

 洞穴に戻ると、盗賊団らしい人たち以外は目を覚まして怯えていた。


「あ、も、もう大丈夫ですから!」


 なんやかんや説明をして、全員に落ち着いてもらった。盗賊団たちは、ジェストくんかさらに縛り上げて芋虫のようになっている。


「いやはや助かった。ライトくん……と言ったかな? 儂は紋章師をしとるものじゃが、何かお礼ができないものかね?」


 白いおヒゲを蓄えたおじいさんが僕に話しかけてくる。

 この人がこの前アーリャさんが言っていた紋章師だったんだ。


「いや、僕は……」


 その時、あの魔王軍幹部が言っていたことを脳によぎる。


『左手に新しい〝天紋〟というのを刻んでもらえ。相殺して、あの暴走は免れるだろう』


 ……信用しない方がいいのか、それとも信用した方がいいのか……。


「ミア、さっきの魔王軍幹部の言葉、どう思う?」

「……悔しいけど、悪意を込めて放った言葉じゃなかった。だから言う通りにした方がいいかも」

「じゃあ刻んでもらった方がいいのかもね……」


 おじいさんに話しかけ、その紋章について質問してみる。


「あのー、天紋っていう天授紋は刻めたりしますか?」

「天紋じゃと!? その紋は数千年間刻む器を持つ者が現れていないものなんじゃよ。だからみるだけみるとしかできないと思うぞ」

「そうなんですね……」

「可能性はある。どれ、見せてみなさい」


 左手をおじいさんに差し出すと、まじまじと見つめ始めるおじいさん。そして一気に顔驚愕色に染まってゆく。


「なっ!? う、器じゃ……! こんなところに器がおったとはッ!!!」


 興奮した様子で息が荒くなっていた。


「刻めるってことですか?」

「ああそうじゃ、こんな機会滅多にない! こんな老いぼれの儂が刻んでも良いのか!?」

「もちろんですよ! お願いします!」

「わかった。では行くぞ」


 ブツブツと詠唱をし、左手の甲に人差し指で優しく撫で始める。カッと目を開けると同時に、僕の左手は輝き始めた。

 真っ白になった視界が開け、僕の手の甲を確認すると、白色の輪っかのやうな模様が現れていた。


《新しいスキルを多数獲得しました》

「ん?」


 多数獲得できたんだ。ちょっと【鑑定】で確認しておこう。


《New!》

・【浄化じょうか

・【治癒ヒール

・【ホーリー・ヴァースト(現在使用不可)】

・【◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎(現在使用不可)】


 …………うーん。やばそうなスキルがまたあるよ。ってか、また四角がある……。

 このスキルたちは人に見せちゃダメだよねー……。


 自分のスキルを見て、一人で真顔になる僕であった。

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