旅費が負担される=お菓子沢山食べれる

「では僕はこれにて――」

「待ちたまえライト」


 そそくさと退散しようとしたら、腕を掴まれてしまった。


「ま、まだ何か……」

「ライト、不自然だと思わないか?」

「ヒッ……。ナ、ナニガ、デスカ?」


 勘付かれているのだろうか……。

 僕は内心ドキドキしながら知らんぷりをした。


「わからないか……。最近の魔物の出現だよ」

「ほっ。そっちですか〜」

「え、何がだ?」

「いや、大丈夫です、なんでもないです」

「そうか。話を戻すが、最近高ランクの魔物がこの辺りで出現しているのだよ。君が出会ったブラッディオーガや、今日君が持ち帰ったワイバーンなど、他にもいたがな」


 椅子にもたれ、ギシギシと音を鳴らしている。


「高ランクの魔物の出現……高確率であり得るのがあるのだよ」

「もしかして……〝ダンジョンの出現〟ですか?」


 確かにそれなら、最近の魔物の出現について辻褄が合う。


「ライト、ダンジョンってなんだっけ?」


 小首を傾げながら質問してくるミア。


「ダンジョンは地中とかにごく稀に出現する〝迷宮石めいきゅうせき〟っていうのが一定以上の魔力を持つと、地中に空洞を作って建築物を作るものだよ。

 建物を作り終えたら、迷宮石はダンジョンコアってのに姿を変えて、そこから魔物とかを発生させるんだ。そのコアを破壊すれば魔物の発生は収まるよ」

「はへぇ〜」

「そのダンジョンコアの所有者になると、ダンジョンマスターってのになって、ダンジョンの内装を変えれたりするんだ」

「うむ、勉強しているな、ライト」


 ギルドマスターは満足げに頷く。


「わかっているなら話が早い。実はな、高ランク冒険者たちが遠征から帰って来たら、そこに向かわせるつもりなのだ。

 Cランク以上を向かわせるつもりだが……ライト、お前にも行ってもらう」

「ふぁっ!?」


 変な声を出して驚いてしまった。

 それもそうだ。僕はまだEランク冒険者だし、Cランクに上がるとしても、高ランク冒険者さんに推薦される必要があるからだ。


「ライト、お前は今日からDランクにする」

「えっ!? で、でもDランクになるには三日以上の討伐依頼と実力テストを受けないと……」

「さっきのワイバーンで実力はついているし、常識もライトならば問題ないだろう。お前は真面目で優秀だし」

「えへへ〜、お褒めに預かり光栄です〜……じゃなくて! 仮にDランクになっても推薦人がいないんじゃ……」

「王都に行け」

「んっ!?」


 と、突然の左遷!? いや、王都に行くんだったらそうじゃない……?


「王都に俺の知り合いのAランク冒険者がいる。ギルドマスターからの推薦は認められんからな。しかも今このギルドにいるのはC、Dランクぐらいしかいない」

「なるほどぉ」

「別に断ってくれても構わない。が、王都に行くための費用は、全て俺が負担しよう」

「本当ですかっ!?」


 実は前々から王都に行ってみたかった……! あんなお菓子やこ〜んなお菓子がいっぱいあるらしいし……。


「どうだ? 行くか?」

「行きます! ぜひ行かせてください!!」


 お菓子につられた僕だった。

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