邪竜をテイム

 僕らは自分の部屋に戻ってミアとは話を始めた。


「ねぇライト、そういえばだけど私とライトって契約してないよね?」

「ん? あー、そういばしてないな。普通魔物とかは契約しないと逃げたりしちゃうらしいから、必要ないな〜って思っててすっかり忘れてたよ」

「じゃあ……今からしちゃう?」

「え」


 僕は人間の固有スキル以外のスキルを持っていない。が、その人間の固有スキルの中に【テイム】というスキルがあるからできないことはないが……。


(ミアは邪竜なんだろ……? テイムした途端に僕の四肢がもげて爆散するとか……ありえない話ではない?)

「ライト……いや?」


 ウルウルとした瞳を僕に向けながらそう問いかけて来るミア。

 断れないじゃんかッ!


「嫌じゃない! すぐしよう!」

「わ〜〜い!」


 ミアの前に座り、自分の人差し指を噛み切って血を出す。ミアにも、手の甲を差し出してもらった。


「よし、行くよ? 〝魔なる者、汝、我と共に行かんと欲するなら、誓いを守り給え。ミア、ここに誓へ〟」


 ポタッと僕の血液をミアの手の甲に垂らす。


「どうするの?」

「『誓います』って言えばオッケー」

「誓いまーす!」


 すると、僕の紋章がポゥっと不気味に光り出し、ピカーンと部屋が真っ白になった。


「な、何が起きたんだ?」

「よくわからない……あ、ライトそれ見て!」

「それ? あっ」


 僕の右手の甲にある紋章が変化していた。黒い縦の棒は横につながって、王冠のような形に変化していたのだ。


「テイムによって紋章が変わるとか聞いたことがないなぁ……」


 まあ、例外中の例外だろうしな。邪竜をテイムした人間なんて今までで聞いたことないし。


「見て見てライト!」


 目を輝かせながら、自分の手の甲を見せてくるミア。そこには、鎖のような柄が浮かび上がっていた。

 これが、テイムされたという証になるものだ。


「わ〜い!」


 そんなに嬉しかったのだろうか?

 何はともあれ、ミアが嬉しそうで何よりだ。


『ちょっとライトくーーん!? めっちゃピカッたんだけど何してんのーーっ!!』

「す、すみませーん!」


 アーリャさんにドア越しから怒られてしまった。


 明日も冒険者として働いて金を稼ぐため、早めに寝ることにした。

 ドキドキするのかと思いきや、ミアはちっちゃいドラゴンの姿になり、いつも通りに眠った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る