紋章

「今戻りましたー……」


 顔を真っ赤にしながらも無事に僕はが泊まっている宿屋まで辿り着いた。


「ライトくんお帰り〜……って、ありゃりゃ? その子は誰かな?」


 この人が宿屋を経営している女性アーリャさんだ。鮮やかな茶髪で天真爛漫な人だ。


「信じられないと思いますけど――」

「もしかしてミアちゃん!? や〜ん、可愛くなったね〜!」


 シュバッとミアな横まで移動し、『よ〜しよしよし』と言いながら撫で回しているアーリャさん。

 目の良さが僕より高いんじゃないか?


「まあミアなんですけど、宿のお金って追加でいりますよね?」

「え? いーよ、いらないよ。私は朝からショタと美少女が見れて満足……うへへへ……」

「ショタ言うな。僕気にしてるんですから」


 ……ん? でも待てよ。そうなるとミアとは一緒の部屋で寝ることになるのか。

 僕が泊まっている部屋はベッド一つしかない……。でもミアはミアだっ! 片時も離れたことないし、たかが人間になったくらいで部屋を別々にするなど……ッ!


「うーん……うーん……」


 僕は唸りながは考え込み始めた。


「ライト、どうしたんだろう?」

「さぁ? あっ、てかライトくん。近々〝紋章師もんしょうし〟がこの街に来るらしいから見てもらっと方がいいんじゃない?」

「本当ですか? 確かにそうですね……」


 アーリャさんに言われたそれがある右手の甲を見つめる。そこには、黒い鉤爪のような五本の縦の線が入っている。


「ライトー、それってなんだったっけ?」

「これは〝天授紋てんじゅもん〟って呼ばれるもので、紋章師って人に刻んでもらうことができる紋章だよ。

 これをつけることによって、新しいスキルが取得できたり、自分に合ったスキルが成長しやすくなるんだ。……まあ、僕は固有スキル以外何もないんだけどねぇ……」


 僕は遠い目をする。アーリャさんは僕の紋章を眺めながら、


「ライトくんさぁ、その天授紋どこでつけてもらったか覚えてないんしょ?」

「すっぽり忘れてますね」

「怪しさマックスだよね。絶対変えてもらった方がいいよ、それ」

「今までで何回も変えてもらおうとしてきましたけど、みんななぜか血相変えて逃げちゃうんですよねぇ」

「おほ〜、怖い怖い」

「半笑いじゃないですか……」


 今回の紋章師の人は逃げずに変えてくれる人がいいなぁ。

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