ミア、邪竜だった

「お、目が覚めたようだな、ライト」

「あ、ギルドマスター!」


 ウンウンと唸りながら考え込んでいると、このギルドのギルドマスターことライオットさんがやってきた。

 赤髪に赤い目、さっきのブラッディオーガとまではいかないけれど、だいぶムキムキな体をしている頼りになる男性だ。


「あのー、僕は一体どうなっていたんでしょうか?」


 気になっていたことを聞くことにした。


「急に轟音が聞こえたと思って外に冒険者を派遣したところ、倒れた君と、君に寄り添う素っ裸のその子と、倒れたオーガと割れた地面があったよ」

「色々突っ込みどころ満載ですね」

「だよな。それでまあ、置いていくわけにもいかないから、君らをここに連れてきたということだ」

「ありがとうございます」

「うむ……それでだが、あの割れた大地とオーガについては、どう説明してくれんだ?」


 真剣な表情で質問をしてくるギルドマスター。まあ、そりゃ聞かれるに決まっているか。


「あー……。実はそれ、ミアがやったんですよ」

「みあ? ああ、君が釣れていたあのトカゲか。……あのトカゲがやったのか!?!? 信じられんぞ!!」

「むむぅ! 失礼な! ちゃんと私がやったんだよぉ!」


 プンプンと怒りながら抗議するミア。


「……ところでライトくん。この子は誰だ」

「あー……。ミアです」

「???」

「『頭いかれてんのかコイツ』みたいな顔しないでください、ギルドマスター。さっきまで僕も疑ってましたけど、何年もの付き添いだからミアってわかりました」


 嬉しそうにぐるぐると喉を鳴らしながら僕の腕に抱きついてくるミア。


「う、う〜む……まだ信じられんなぁ……」

「確かにそうですよねぇ」


 今のミアはただの美少女だ。トカゲ要素など皆無だし。

 ……というか、人間になれるドラゴンは超レアなドラゴンか、他の種類の竜しかできなかった気がする。例えば……邪竜とか。


 ……ん? もしかしてミアって本当に……。


「どうしたライト、顔色が悪いぞ?」

「あー……いや、なんでもないです」


 邪竜は破壊をし尽くす恐怖の権化のような存在だし、バラすわけにはいかないな……。


「擬人化のスキルを持つトカゲなど前代未聞だがなぁ」

「違う! 私はトカゲじゃなくて竜なの!」


 ――ぶふぁっ。

 思わず少し吹き出した。


「何? 本当なのか? じゃあツノとか翼は出されるのか?」

「もちろん! ほらっ!」


 み、ミア――ッ!! やめてくれぇ!!

 心臓をバクバクと鳴らしながら、ギルドマスターの反応を見る。


「おお、本当っぽいな。ガッハッハ! よかったじゃあないかライト! お前もランク上げれるかもしれないなァ!」

「は、はいぃ……」

「一応回復のスキルをお前にかけてもらってるからもう動けるだろうが、辛そうだったらもう少し休んでおけよ。このことは後々報告するから、ゆっくり休んでおくといい」

「……はい」


 スタスタとこの場から立ち去るギルドマスター。


「み、ミア。ミアって……邪竜、とかだったりする?」

「ん? そうみたいだよー!」


 朗報? 悲報?? よくわからないが、とりあえずミアは邪竜だった。

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