11 亜人族の少女
男はキャスティの前に割り込む俺を睨んでくる。
「なんだ、お前は?」
「俺はアモン、先ほどキャスティに道案内して貰った者です」
「……道案内だと? おいキャスティ、仕事中にそんなことをしていたのか!?」
男は背中で怯えるキャスティに怒鳴りつける。
「ご、ごめんにゃさい!」
キャスティは頭を抱えながら条件反射で謝罪する。
「キャスティさん、大丈夫ですか?」
エアリアもそんなキャスティに駆け寄る。
エレナもキャスティの傍に移動して男の方へ視線を向ける。
「……なんなのこいつ。何様のつもりよ」
エレナは男を睨み返す。
「ふん、俺のモノに何をしようがお前たちに関係ないだろ!」
キャスティをモノ呼ばわりする男に俺は尋ねる。
「……あの、お2人はどういった関係なんでしょうか?」
「あ? こいつは俺の所有物なのさ」
「……所有物とは、一体なんですか?」
「なんだお前、そんなことも知らないのか? 所有物っていったら奴隷に決まってるだろ! こいつは俺の奴隷だって言ってるんだよ!」
奴隷……たしか、父さんから人間界では人間同士で人間を売買する事があると聞いた事がある。
あまり良くないモノだと記憶していた俺は男に尋ねる。
「……すみません。この子を解放しては貰えませんか?」
「は? 解放なんてする訳ないだろ。……だが、どうしても解放してほしいのなら当然だが金が必要だ。お前にそれが用意できるのか?」
俺は丁度ポイネ村からお金をたくさん貰っていた事を思い出し男に尋ねる。
「……おいくらなんですか?」
「ざっと金貨10枚は欲しいところだな」
「……これで、足りるでしょうか?」
俺は
「……どれどれ、……おぉ、結構持ってるじゃないか。そうだな……よし! いいだろう。あとでやっぱりやめた! とか言い出すなよ」
そう言い残して男は俺が渡したお金の入った袋を持って立ち去ろうとする。
「……待ってください! 奴隷
立ち去ろうとする男にエアリアは、
「ちっ! ……わ、分かってるさ」
すると、男は
――パキッ!
男はすぐに棒状のモノを折ると瞬時に棒状のモノは消えていった。
「うぅ!」
その途端、キャスティの腕に刻まれていた奴隷紋が綺麗に消え去る。
「これでいいだろ? じゃあな!」
男はそう言い残して走り去っていった。
男の姿が見えなくなるのを確認した俺は、キャスティに視線を向ける。
「大丈夫? でも、これでキャスティは自由の身だよ」
「……あ、ありがとうにゃ……でも、よかったの?」
「ん? あぁ、お金の事? 全然いいよ。持っててもあまり使わないからね」
頭を抱えていたエアリアが俺に話しかけてくる。
「はぁ……アモンさんが貰ったお金だったので止めませんでしたが、あの男性の方……相当な額をアモンさんに要求していたんですよ?」
「え、そうなの?」
「はい。それにアモンさんはその額以上のお金を渡しちゃうし、突然の事だったので止める間もなかったです……」
「……ごめん。俺も深く考えずに渡していたよ」
「いいですよ、アモンさんはお優しい方ですからね。……それは良かったんですが、さすがに奴隷紋の解除をせずに去ろうとしていたので、私も
「……って事は、あの男は俺からお金だけ貰っただけだったって事か?」
「そうです。私もキャスティさんに声をかけた時から腕にある模様に気付いていました。あれが奴隷であることの証明なんです。あの模様が消えない限り、主の命じる事には逆らう事が出来ません」
「そうだったんだ。……ありがとう、エアリアのお陰でキャスティの解放が出来たよ」
「いえいえ! ……でもキャスティさん、これからどうしましょう」
エアリアはキャスティに視線を移す。
「えと、私は……」
キャスティは考えがまとまらないようで言葉に詰まる。
そんなキャスティにエアリアは優しく話す。
「キャスティさん、ひとまず深呼吸しましょう!」
「う、うん!」
それからキャスティはエアリアと一緒に深呼吸をして落ち着かせる。
「すぅ……ふぅぅぅ…………うん、落ち着いたかにゃ」
「……それでキャスティさん、何故奴隷なんかに?」
「うん……少し前、魔族が襲ってきた時、近くにあった私の故郷の村が襲われたの」
「……魔族……か」
俺はそう呟きながら申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「それから私も含めて少数は村から避難できたのはいいけど、食べ物がない状態で歩き続けて……路頭に迷っていたところを奴隷商人に拾われたのにゃ」
「……それで先ほどの男性の方に買われた。という事でしょうか?」
エアリアは神妙な表情をしながら話す。
「……そうにゃ」
「そうだったのか……大変だったんだね。他に村から逃げた人たちは無事なのか?」
俺は俯くキャスティに尋ねる。
「……わからないにゃ。奴隷商人に拾われた後、様々な人に買われて皆とは離れ離れににゃってしまったから」
「……ごめんね。嫌な事思い出させちゃって。……それで、キャスティはこれからどうしていくつもりなの?」
「私……故郷の皆を探して助け出したいにゃ!」
キャスティは力強く俺の目を見て叫ぶ。
俺はそんなキャスティに対して微笑み返す。
「……キャスティは優しいんだね。村の皆の事を考えて行動しようとするなんて」
「そうですよ! ……あの、よかったら私たちも協力しましょうか?」
「……えっ! いいの?」
「はい! アモンさんにエレナさん、よろしいでしょうか?」
「そうだね。俺達に協力できることがあったら何でも言ってよ」
「……2人は相変わらずみたいね。……わかったわ。私も協力する」
猫耳の少女は目を潤ませながらお礼を言う。
「あ……ありがとうにゃ! 私も何でも言って! 出来る限りの事は協力するにゃ!」
「ありがとうキャスティ! ……あ、そうだ。丁度今キャスティに1つお願いしたい事があるんだけど、いいかな?」
「何かにゃ?」
「実は俺達ギルドを作りたい思っていたんだけど、定員が4名以上じゃないと作れないみたいなんだよ。その1人としてキャスティの名前を貸してくれないかな?」
「それぐらいお安い御用にゃ!」
「いいの? ありがとう!」
「アモンさん、そうと決まったら早速ギルド本部に戻りましょう!」
「うん!」
頷いた後、俺達はすぐさまギルド本部へと引き返すのだった。
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