12 ギルド結成

俺達は再びギルド本部の前まで到着する。

中に入ると先ほどと同じように賑やかなギルド本部内を進む。


「おい待て!!」


すると、先ほど俺達に絡んできた赤髪の男が俺達の前に立ちはだかる。


「……またあなたですか。……今度は何の用ですか?」

「さっきはよくも俺に恥をかかせてくれたな。この落とし前はつけてくれるんだろうな?」

「……すみません。俺達、早くギルト登録を済ませたいんですが……」

「ごちゃごちゃとうるせぇ!」


相手は話を聞いてくれないようなので、俺は仕方なくいつも魔物に使っていた呼吸を阻害する技を赤髪の男に使う事にした。

俺は赤髪の男に手をかざす。


「……カハッ!」


すると、急に赤髪の男は苦しそうな表情を浮かべて膝を地面に着く。


「……体調がすぐれないようですね。それでは先を急ぎます」


俺はそう言って、俺は赤髪の男の隣を通り過ぎる。


――バタンッ!

次の瞬間、赤髪の男は地面に倒れ込む。


「……アモンさん」

「うん、わかってる」


俺は死なれては困るのですぐさま赤髪に使った技を解除しておく。


「「ボス!」」


仲間であろう人たちが赤髪に近づくのを横目に俺は受付のエルフ族の女性に声をかける。


「あの、すみません。ギルド結成をしたいのですが」

「先ほどいらっしゃった方ですね。わかりました! それではこちらの紙にギルドメンバーの名前をご記入ください」


受付の女性はペンと紙を取り出し、俺に渡してくる。


「わかりました」


俺は言われた通り、俺と皆の名前を紙に書き込む。


「はい、書きました」

「ありがとうございます。それでギルド名は何になさいますか?」

「ギルド名?」

「はい。これから活動していくあなた達のチーム名となります」

「ギルド名か……エアリア、何かいい名前ってあるかな?」


俺は特に思いつかなかったのでエアリアに尋ねる。


「そうですね……セイヴァーなんてどうでしょうか?」

「セイヴァー? ……ってどういう意味なの?」

「はい。異国の言語で救済者という意味です」

「救済者か……いいね! エレナ達もそれでいいかな?」

「あたしは異論はないわ。アモン達にピッタリな名前だと思うし」

「はい! 私もそう思うにゃ!」


特に異論はないようなので、ギルド名をエアリアが考えたセイヴァーにする事にした。


「はい、ギルド名も書きました」

「ありがとうございます。それでは少々おまちください」


受付の女性は紙を受け取ると奥に消えていった。

しばらくすると、1枚のカードを持って戻ってくる。


「お待たせいたしました。こちらがギルドカードとなります。ギルドである事を証明するカードですので無くさないようにお願いします」

「分かりました」


俺は受付の女性からギルドカードを受け取る。


「これで、クエスト情報を確認することも出来るようになります。お求めの情報があるか、実際にご確認をお願い致します」

「ありがとうございます。それでは俺達はこれで」

「また何かありましたらお尋ねくださいませ」


受付の女性は丁寧にお辞儀をする。


「それじゃ、早速何か情報があるか確認しようか」

「そうですね!」


俺達は早速張り出されているクエストの一覧を確認する。

ギルドカードを照らすことで確認が出来る仕組みになっているようだ。


「これで見れるようになるのか……どれどれ、何かエクリエル王国の情報はあるかな?」


それから張り出されているクエストの一覧を確認したが、残念な事に殆どがメルトリア周辺に関するクエストばかりでエクリエル王国に関連するクエストは見当たらなかった。


「う~ん……ないみたいだ」

「そうみたいですね……それじゃアモンさん! せっかくですし、一先ず資金を集める為にクエストを受けてはみませんか?」

「あ、そうか。もうギルドを作ったからクエストも受けることができるんだっけ?」

「はい! 先ほどアモンさんが男性の方に持っている資金のほとんどを渡しちゃったので何か受けた方がいいと思います!」

「うぅ……ごめんにゃ」


キャスティはすかさず謝ってくる。


「あぁ、キャスティさん気にしないでください! 大丈夫ですよ、すぐにクエストで稼いでみせますから!」

「……それはそうと、どんなクエストを受けるの?」


エレナがクエスト一覧を見渡しながら俺達に尋ねてくる。


「そうだな……どうせなら一番高い報酬のクエストにしたいな」


俺はクエスト一覧の中から一番報酬額が高いクエストの紙を壁からはがす。


「……これにしよう!」

「アモンさん、見せてもらえますか?」


俺はエアリア達に剥がしたクエスト依頼が書かれている紙を手渡す。


「……アモンさん、これ……本当に受けるんですか?」

「うん。すごい報酬額だよね」

「……邪竜討伐って書かれているんですが、確か竜族はこの世に4頭しかいない希少な種族だと聞いていいます。……おそらくその1頭の事だと思いますが……当然ながら、非常に難しいクエストだと思いますよアモンさん」

「……そ、そうなんだ。まぁでも何とかなるよ。受付に持って行ってみよう」


エアリアからクエスト依頼の紙を受け取ると俺達は受付の所まで移動する。


「あの、すみません。このクエスト受けたいんですけど」

「早速クエストをお受けするんですね。かりこまりました。拝見させて頂きます」


先ほどと同じエルフ族の受付の女性は俺からクエスト依頼の紙を受け取る。


「……あ、あの。このクエストでお間違えないでしょうか?」

「はい」

「1点、クエストを受ける際に注意事項があります。クエストを受ける際には保険適用クエストと適用外のクエストがあります。保険が適用しているクエストはクエスト受注時に起きた怪我などに対してギルド本部が責任を持って治療をするのですが、適用外になる場合はギルド本部側は何も関与しないクエストになります。その分、報酬額は高くなりますが、とても危険なクエストになります」

「……なるほど」

「このクエストは保険適用外……すなわち、クエスト受注時に何が起きてもギルド本部は何も責任を取ることがない依頼になります。それでもお受け致しますか?」

「はい。お願いします」

「……え? 本当に受けるんですか? このクエストには数多くの冒険者が挑戦しているのですが、誰も帰ってくる事はありませんでした。……それでもお受けになるんですか?」

「はい」


エルフ族の女性は呆気に取られた表情をしていたが、特に問題ないと思った俺は即決する。


「……わ、わかりました。それでは手続きをさせて頂きますね」


困惑する受付の女性は奥へ消えていき、すぐさま小さな石と持って戻ってくる。


「今回は討伐クエストなので、対象のモンスターの一部を証拠としてクエスト達成時に提出を求められますので、よろしくお願い致します」

「はい! それで、問題の邪竜はどこにいるんですか?」

「場所なのですが、この石が邪竜が生息している場所まで案内してくれます」


受付の女性は持ってきた小さい石を俺に手渡す。


「……この石をどうすればいいんですか?」

「はい。自身のマナを石に流し込んでください」

「わかりました」


俺は言われた通り、自身のマナを石に流しこむ。

すると、石から青白い線が1本放射される。


「この青い線の先に対象のモンスターが生息しています。メルトリアからそんなに離れていない山奥の洞窟に生息していますので、そこまで時間はかからないと思います」

「なるほど……この石が放つ青白い線を元に邪竜の所へと向かうんですね」

「はい。それでは無事を祈っております」


受付の女性と話が終わり、エアリア達に視線を向けると若干不安そうな表情を浮かべていた。


「……あの、アモンさん。本当にこのクエスト大丈夫なんでしょうか?」

「多分大丈夫だよ。エアリアから教えて貰った技もあるし、何とかなるよ」


俺は笑顔でそう語り掛けると、エアリアの不安な表情も多少は軽減される。


「……わかりました。それじゃ向かう前に少し作戦会議をしましょうか」

「そうだね。丁度座れそうなテーブルもあるし、座って話そうか」

「そうね。……また変な奴に絡まれないといいけど」

「あ、あの! 私もその作戦会議というものにお邪魔してもいいの?」


キャスティは遠慮しつつも確認してくる。


「もちろんです! キャスティさんも私たちセイヴァーの一員ですからね!」

「ありがとうエアリアさん!」


俺達はそれからギルド本部内にある机に着き、作戦会議を行う事にした。

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