10 ギルドでの争い
しばらく山道を進んでいくと森から徐々に平地の草原が広がる場所へと風景が変わっていく。
「お、向こうの大きな街があるけど、あれがメルトリアなのかエアリア?」
荷台から顔を出したエアリアは街の方を見る。
「はい! あれがメルトリアです。あそこまで向かいましょう!」
「わかった!」
俺は手綱をしっかりと持ち、俺達はメルトリアまで向かった。
メルトリアへ入る事が出来る門を通り抜けると、賑やかな街並みが広がっていた。
「……すごい人の数だな」
「ポイネ村と比べると全然人の多さが違いますからね!」
俺達が話しているとエレナが意外そうな顔をして尋ねてくる。
「あら、あなた達ポイネ村にも寄っていたのね」
「はい! 確か、村を襲ってくる魔物に対して子供を生贄に捧げる儀式をしていたので、私たちが魔物を退治したんです」
「へぇ……ポイネ村でもアモン達は村の為に動いていたのね」
「そうです! それに、私もポイネ村でアモンさんに助けて貰いましたから、そのお礼にメルトリアへ案内していたんです」
「助けた……え? 2人はまだ出会って間もないんだ。あたしはてっきりずっと一緒にいるもんだと思ってたわ」
「そう見えますか? でも、アモンさんにお会いできてとても良かったです! ね、アモンさん?」
「だね。俺もエアリアからもいろいろ空気操作の応用技も教えてもらったからね。とても助かっているよ」
「なるほどねぇ。……それはそうと、この人込みを馬車で移動するのも一苦労ね。早く宿屋にでも預けましょう」
「そうですね! まずは、宿屋を探しましょうか」
「わかった。エレナ、宿屋の場所って分かるかな?」
「まかせて、案内するわ」
それから俺達はエレナの案内で宿屋に到着し、部屋を借りて馬車を預けることが出来た。
「ん~っと、……それでメルトリアで着いたら何をするんだったっけ?」
宿屋から出た後、エレナは思いっきり背伸びをして思い出したかのように俺達に尋ねてくる。
「まずはアモンさんの妹さんについての情報収集ですね」
「そうだね。スティングから聞いた勇者一行のいるエクリエル王国の場所についても詳しく聞きたいし」
「メルトリアならギルド本部もありますから、いろんな冒険者が集まっているはずです。そこで何か情報があるかもしれません」
「ギルド本部って何をするところなの?」
俺は素朴な疑問をエアリアに投げかける。
「ギルド本部では、クエストという仕事以来の斡旋とクエストを受ける為のギルト登録を行う事が出来ますね。ギルト登録には4名以上が条件で作る事が出来まして、様々なクエストをこなし、報酬を貰う事が出来る施設です。……なので、いろんな方のお悩みが集まっている場所でもあるんです」
「へぇ、何か物騒な場所だね……。でも確かに何か情報がありそうな感じはするね。エレナ、千里眼でそのギルドって場所は分かる?」
俺はエレナにギルド本部の場所について尋ねてみる。
「まかせて! ……って言いたいところなんだけど。私もこの街には親父と何回か偵察で来た事あるんだけど、ギルド本部には行った事ないんだよね。建物が見えたとしてもその建物がギルド本部なのか分からないから難しいかも」
「……なるほど、一度も言っていない場所を探すのは難しいのか……」
「それでは、誰かに聞いてみましょうか」
エアリアはそう言うと、荷物を持って歩いていた猫耳のある亜人族の可愛い女の子に声をかける。
「あの、すみません。私たち、この街に来たばかりでよく道が分からなくて……ギルド本部ってどこにあるかわかりますか?」
エアリアが声をかけた亜人族の少女は立ち止まり、灰色の布切れを着ており肩まで伸びた茶色の髪をなびかせていた。
「……にゃ? ギルド本部ですか? 知ってるにゃ! よかったら案内しましょうか?」
「いいんですか! 是非お願いしたいです」
エアリアは笑顔で俺達の元に戻ってくる。
「アモンさん、エレナさん! ギルド本部に案内してくれるみたいです!」
「すごいなエアリアは、すぐに案内してくれる人を見つけるなんて」
「本当ね」
俺達は案内してくれる少女に近づいてお礼を伝える。
「君が道案内してくれるんだね。助かりよ、ありがとう」
「いえいえ、これぐらいお安い御用にゃ!」
俺は独特なしゃべり方をする少女が持っている荷物に視線を向ける。
「……でもいいの? 何か運ぶ途中だったみたいだけど」
「これはいいにゃ。後で持っていけばいいだけだから……」
少女は笑って誤魔化すように話す。
手を口元に添えて笑う少女の手には見慣れない模様が刻まれていた。
「そっか。えっと、自己紹介がまだだったね。俺はアモンっていうんだ。よろしくね」
「私はエアリア・アランテルです! よろしくお願いします!」
「あたしはエレナ・ノーランよ。道案内助かるわ」
それぞれが自己紹介をすると、少女も自己紹介をする。
「アモンさんにエアリアさんにエレナさんですね。私はキャスティ・ライトって言うにゃ、よろしくにゃ!」
それから俺達はキャスティと言う名の少女の案内でギルド本部へと向かう。
「ここにゃ!」
ギルド本部に到着すると、キャスティが元気よく振り返ってくる。
俺達は目の前に立つ大きな建物を見上げた後、剣と鎧が形取られている模様が刻まれている入り口の扉に視線を移す。
「ありがとうキャスティ! このお礼は必ずするね」
「そんな……別にいいにゃ、それじゃ私は仕事があるからもう行くにゃ!」
「キャスティさん、どうもありがとうございます!」
「助かったわ、ありがとね」
俺達は軽くお別れを済ませると、キャスティは荷物を抱えて走り去っていく。
「……さて、入るか」
俺はギルドの入り口に視線を向けながら言う。
「はい!」
「そうね」
返事を返した2人と共に俺はギルドの扉を開け放った。
中に入ると、ギルド本部内は
「すごい賑わいだな」
「そうですね……」
「へぇ、いろんな種族の冒険者がいるのね!」
俺ははしゃぐエレナを横目に奥へと足を進ませた。
奥に進むと受付に立っていたエルフ族の女性と視線が合い、話をすることにした。
「あの、すみません。ちょっといいでしょうか」
「いらっしゃいませ! クエスト達成報告ですか? それともギルド結成の申請でしょうか?」
「あ、いえ。ちょっと情報収集をしたいと思っていまして……勇者がいるって言われているエクリエル王国についての情報なんですけど……」
「……申し訳ありません。情報収集でしたらギルド結成を行い、ご自身でそこにあるクエスト表から関連情報を探して頂くしかご案内できません」
受付の女性は木で作られた掲示板に数多く張り出されたクエスト表の方を指差して答える。
「そうでしたか……あの、そこにあるクエスト表を見る事はできないんですか?」
「……申し訳ありません。情報提供するには、ギルド結成した者たちだけにしか許されていません」
受付の女性は申し訳ない表情をする。
「確か、ギルドを結成するには4人必要だと聞きましたが、足りない場合はどうすればいいでしょうか?」
「その場合であれば、だれかお知り合いでギルドに加入して頂ける人を探すしかないですね」
「……そうですか……わかりました。一度出直しますね」
受付の女性とのやり取りを終えた俺はエアリア達に体を向ける。
「どうやらギルドを結成しない限り情報収集はできないみたいだ。一度出直そう」
「……そうでしたか、わかりました」
「そうね。それじゃ仕方ないわよね」
俺達はギルト本部から出ようとしたその時、ガタイがデカい赤髪の人間族の男が俺達の前に立ちはだかる。
「お前、女を連れて良い御身分だな」
「……何か、御用でしょうか?」
俺は立ちはだかる男性に問いかける。
「どうやらギルドを作れなかったみたいだが……どうだ、俺達のギルドに入る気はないか?」
「え、いいんですか?」
俺は情報を手に入れる事が出来ればよかったので、赤髪の男性の提案に食いついてしまう。
「あぁ。……だがお前は別だ。ツレの魔導士とシーフの嬢ちゃんに聞いている」
男性はエアリアとエレナの方に視線を向けながら話す。
「え、私たちですか? あはは……せっかくの誘いですが、アモンさんと一緒じゃないのなら遠慮しておきますね」
「あたしもよ。それに、見ず知らずのあんたとギルドを組む訳ないでしょ、バカなんじゃないの?」
エアリアは丁重に断るが、エレナが相手を軽く挑発する。
「こいつ……せっかく人が好意で誘っているっていうのに、何だその態度は!」
赤髪の男性はエレナに掴みかかろうとするが、俺がそれよりも早く俺達と赤髪との間に空気の壁を展開する。
――バキっ!
赤髪の男は空気の壁に思いっきり手をぶつけて指先が変な方向を向いていた。
「痛で!!!」
男は手を抱えながら俺達に視線を向ける。
「く、何をした!」
「……いや別に、それでは俺達はこれで」
勝手に自滅している相手を横目に俺は赤髪の隣を通り過ぎる。
「……お邪魔しました」
「べーっだ!」
俺に続いてエアリアは小さく赤髪に
「クソ! 覚えてろよ!」
捨てセリフを吐く相手を残し、俺達はギルド本部から出る。
「さて、ギルド本部から情報収集するにはあと1人必要って事だけど……どうしようか?」
「う~ん、誰か協力してくれそうな人がいればいいんですけど」
「ま、悩んでても仕方ないよ。一度宿屋に戻ってそこで考えましょう」
エレナの提案で俺達は一先ず宿屋に戻る事にした。
しばらく歩いていると、見覚えのある少女の手を大人の男性が掴み、なにやら問いただしていた。
「おい! 聞いているのか!! お前が遅れたせいで俺に苦情が入ったんだぞ!」
――ゲシッ!
ギルド本部に案内してくれた少女を男が蹴飛ばす。
「あうぅっ!」
キャスティはその衝撃で地面に座り込んでしまう。
「……あの、すみません。どうかしたんですか?」
俺はすかさず2人に割り込み、地面に座り込むキャスティを背にして男に問いかけていた。
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