5 傷だらけのエルフ

朝日が窓から差し込み、俺は眩しさで目が覚める。

俺はベットの方に視線を向けると、まだエアリアは起きていない様だった。


「……なっ!」


ベットで寝ていたエアリアはおへそを丸出しにして、ズボンからは下着がはみ出し気持ちよさそうに寝ていた。


「……なんで人間の女性はこんなに無防備なんだろうか……」


俺はそんなことを呟きながら、お風呂の洗面台で顔を洗い目を覚ます。

部屋に戻ると、エアリアも起きたようでベットの上に座り込みウトウトしていた。


「エアリアおはよう。起きたみたいだね」

「あぅ……おはようございます……アモンさん」


どうやらエアリアは朝に弱いようだ。


「目が覚めたら村から出発するから準備お願いね。俺は村長さんに馬車の場所を聞いてくるよ」

「ふぁ~い……」


俺は眠気眼のエアリアを部屋に残し、村長の家へと向かった。




村長の家に移動してドアをノックすると、中から村長が顔をだす。


「おはようございます」

「おぉ、おはよう。昨日はお楽しみいただけたかな?」

「はい、お陰様で。……それで、馬車なんですがどこに置いてあるんですか?」

「ふむ、付いてくるといい」


それから俺は村長さんに付いていく。


「これじゃ」


案内された馬車小屋には6人ぐらいは乗れる大きな馬車の荷台が置かれており、馬車を引く馬も用意されていた。


「こんなに大きいな馬車を頂いていいんですか?」

「あぁ、2人だと少し広いだろうからそのスペースに食料と飲み物、あと少しだがお金も置いてある。冒険には何かとお金も必要じゃろう。気にせずに使ってくれ」

「何から何までありがとうございます!」

「お礼を言うのはワシのほうじゃ、魔物から村を守ってくれてありがとう」


俺は村長とお別れを済ませると、宿屋に戻る。


「ただいま」

「お帰りなさいアモンさん」


すっかり目を覚ましたエアリアは魔導士の服に着替えていた。


「エアリア、馬車も貰った事だし、早速出かけようと思うけどいいかな?」

「はい! 準備できています。行きましょうか」


それから俺達は宿屋から出ると、馬車の所まで移動する。


「うわぁ! いい感じの馬車じゃないですか!」

「エアリアもそう思う? 村長さんがいろいろ手配してくれたようで、食料もお金も荷台に置いてくれているんだ」

「え、そうなんですか!?」


エアリアはそう言うと馬車の荷台を確認する。


「すごい量の食料ですね! それにこんなにお金も用意してくれるなんて……!」

「そんなに驚く量なの?」


俺は人間界のお金にあまり詳しくないので、いまいちしっくりこなかった。


「これだけあればしばらく暮らしていくだけはありますよ!!」

「へぇ……そうなんだ。それじゃ安心してメルトリアに向かう事ができるね」

「はい! それじゃ早速出発しましょうか」


俺達は馬車に乗り込み、エアリアが手綱を掴むと馬は歩き始める。

村を出ようとすると、出口付近に多くの村人が集まっていた。


「皆さん、何故集まっているんですか?」


集まっていた中の神父が返事を返す。


「この村を守ってくれた冒険者の旅立ちだからな! みんなで見送ろうと村長がおっしゃっていたのだ」

「そうでしたか」


俺は村長に視線を向ける。


「短い間でしたが、お世話になりました」

「あぁ、また何かあったらこのポイネ村に寄ってくれ!」

「はい! それでは皆さん」

「お邪魔しました!」


俺とエアリアは見送ってくれる村人たちに手を振りながら村を後にした。




村からしばらく馬車で移動していると、徐々に山道へと入っていく。

馬の手綱を引いているエアリアは荷台にいる俺の方に視線を向ける。


「アモンさん、これから山道を登っていきます。……メルトリアに向かうには山を一つ越える必要があるんですよね」


俺は荷台から顔を出し、辺りを見渡す。


「……なんか、魔物が襲ってきそうな道だね」


そんなことを話していると、道端の茂みから複数の影が馬車の前に姿を現した。


「止まりなさい!!!!」


茂みからはエルフ族の女性が飛び出してきた。


「な、なんですかあなたは!」


白髪に黄金色の瞳をしたエルフ族の女性は、シーフのような動きやすそうな軽装をしていた。

だが、軽装は所々破けて傷が痛々しく覗いており疲弊ひへいしている事が見て分かるほどだった。


「荷台に置いてあるものを全て置いていって貰うよ!」


俺が飛び出してきた傷だらけのエルフに気が取られている内に襲い掛かってくる。


「……っ! させない!」


俺は瞬時に馬車の周りを空気の壁で守る。


――バンッ!

襲い掛かってきた相手は全て馬車に触れることなく、見えない壁にぶつかっていた。


「いたた……」


エルフ族の女性は見えない壁を何度か叩く。


「何よこれ……これ以上進めないじゃない!!」


エルフ族の女性はそう言いながら俺達の方に視線を向けてくる。


「……あの、何かあったんですか? 見たところ傷だらけのようですが……」


俺は襲ってきたエルフが傷だらけなのが気になり、思わず尋ねてしまった。


「アモンさん、何を聞いているんですか!」

「何故そんなことを貴様に言わないといけないんだ!」


当然ながらエルフの女性は俺に向かって言い放つ。


「それなら先に進むだけですが……エアリア、先に進もうか」

「は、はい!」

「……ま、待ってくれ!」


先を進もうとしたところ、エルフの女性は慌てて声をかけてくる。


「事情を説明してくれる気になったか?」

「あぁ。……あたしはこの森の先にある山岳に集落を作って生活していたんだけど……ここ最近、魔物が活発化した影響で集落が魔物の集団に襲われたんだ。……それで、ケガ人も大勢いて、薬草や食べるものも不足しているんだよ」


エルフの女性は俯きながら今までの経緯を説明してくれた。

恐らく、魔族が人間界に攻め込んだ影響で魔物が狂暴化しているのが原因だろう。


「……そんなことが」

「ひどいですね……」


魔族である俺は少し責任を感じてしまい、エルフの女性にある提案をする。


「……もしよかったらその集落に俺達を案内して貰えますか?」

「え、アモンさん!? 何を……」

「まぁまぁ……この子も大変そうだし、それに食料だったら村長から貰ったものが沢山あるからね」

「……い、いいのか?」


エルフの女性は驚きながら聞き返してくる。


「はい、でも乱暴はなしでお願いしますよ」

「わ、わかった! それじゃ集落に案内するから付いてきてくれ」


俺達はそれからエルフの女性から集落へと案内してもらう事になった。

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