6 魔物に襲われた集落
森の小道を進んでいくと、大きく開けた集落へと到着した。
周りには見上げるほどの高い岩壁で覆われており、酷く荒らされた集落の人たちは驚いた表情で俺達を出迎えてくる。
「待ってて、あたしが説明してくる」
エルフの女性は俺達にそう伝えると、集落の人たちに状況を説明する。
すると、
「お待たせ、この人がこの集落のボスさ」
「あぁ、俺はこの集落のボスをしているスティング・ノーランだ」
スティングと名乗る男性はたくましい体をしており、短い黒髪と額に赤い布を巻いていた。
「初めまして、俺はアモンと申します」
「私はエアリア・アランテルです!」
スティングに付き添っていたエルフの女性も自己紹介をする。
「あたしも自己紹介がまだだったわね。私はエレナ・ノーランよ。ボスの娘で偵察部隊のリーダーをしているの」
「娘……ですか? でも、エレナさんはエルフ族ですよね?」
スティングは見るからに人間族だった為、疑問に思ったエアリアは2人に尋ねる。
「あぁ、エレナは幼い頃に山に捨てられていたところを俺が保護し、この集落で俺の娘として育てているんだ」
「……そうだったのですか。……でも確か、エルフ族は魔法に適した種族と聞いていますが……」
エレナは見るからに近接戦闘向きな軽装をしている。
「ふん、魔法なんて知らないわよ。私はボスに武器を使った戦闘を教え込まれて育ってきたの」
「あぁ、俺には魔法を使う事が出来なかったからな……」
スティングは昔を思い出しながら答える。
「そうだったんですね。……あっ! ……ええと、話を
エアリアは慌てて話を本題に戻す。
「……エレナから聞いたが、魔物に襲われた俺達に食料を恵んでくれるらしいな」
「はい。少し前に丁度よく沢山食料を貰ったところなので、なにか役に立てたらいいなと思いまして」
「……不思議なやつだな。いいだろう、付いてきてくれ」
それから俺達はスティングとエレナについていく。
「エレナから聞いたのですが、魔物の集団にこの集落が襲われたんですよね」
「あぁ、やつらは群れをなして俺達の集落を襲ってきたんだ。……ケガ人も大勢で薬も食料も足りなくてな」
「……あの、もしよかったらそのケガ人の所に案内して貰えませんか?」
エアリアは心配そうにスティングに問いかける。
「あぁ、分かった。後で案内しよう」
それから俺達は馬車を食料保管室の前まで案内してもらった。
「結構食料があるので、半分ぐらいはあげますよ」
「そ、そんなにくれるのか?」
エレナは驚きながら聞き返してくる。
「うん、俺達じゃ食べきれないからね」
それから俺達は荷台に置いてある食材を食料保管場所に移動されていく。
「アモンだったか? 食料の提供とても助かるよ、ありがとう」
「いえいえ、困った時はお互い様です」
それからしばらくして食料の運搬が終わると、エアリアはスティングに尋ねていた。
「……それではスティングさん、ケガ人の方たちに案内して貰えますか?」
「あぁ、こっちだ。ついてきてくれ」
馬車をその場に置いたまま、俺達はスティングから治療所へと案内してもらう。
治療所には布で傷口を巻いて赤く滲んで酷く痛々しい人たちが大勢苦しそうな表情をして横になっていた。
「……これはひどいですね」
「……魔物の奴らは何も抵抗できない集落の女性や子供を無造作に襲ってきたんだ」
エレナは歯を食いしばりながら吐き捨てる。
ケガ人を眺めていたエアリアが俺に視線を向けて問いかける。
「アモンさん! 私たちで怪我の治療をしていきましょう!」
「で、出来るのか? 二人とも!」
エレナは驚きながら尋ねてくる。
「うん、エアリアは回復魔導士だからね。それに俺も回復させる術を持ってるんだ」
「……スティングさん! ケガ人の方たちの治療をさせて貰ってもいいでしょうか?」
エアリアは念のため、スティングに確認を取る。
「……食料も譲ってくれた上に、ケガ人の治療まで……なんでそこまで良くしてくれるんだ?」
困惑した表情を浮かべるスティングは俺に尋ねてくる。
「……え? う~ん……理由なんてないですよ。当たり前の事をしているまでです」
「そ、そうなのか」
スティングはとても驚いた表情をしていたが、俺はケガ人たちに視線を移す。
「それじゃ、始めようかエアリア」
「はい!」
それから俺とエアリアでケガ人の治療を始まった。
俺はエアリアと以前試したように傷口に空気のまとわりつけることで、傷口はみるみると治っていく。
エアリアも同様に光魔法を使ってケガ人を次々と治療していく。
「……アモンさん! 全員の治療終わりました!」
2人がかりだったのでケガ人を全て治療するにはそんなに時間はかからなかった。
ケガが治った人たちは俺達にお礼を伝えてくる。
「ありがとう、すごく助かったよ」
「もう、ダメかとおもったけど、とても助かりました!」
「いえいえ、どういたしまして!」
エアリアは照れながらも笑顔で返事を返していた。
スティングは次々と治っていくケガ人たちを終始驚きながら眺めていた。
「ありがとう2人とも。……せっかく直して貰ったのは有難いが……おそらく魔物のやつらはまた襲ってくるだろう」
「……あの、前に襲ってきた魔物たちは討伐しなかったんですか?」
エアリアはスティングに尋ねる。
すると、エレナが変わりに話始める。
「奴らは空を飛んで来たんだ。あたし達の攻撃が届かなかったんだよ」
「あぁ、だが何とか飛び道具を駆使して集落からは追い払う事が出来たが……討伐とは言い難く、いずれまたこの集落を襲ってくるだろう」
すると、エレナは慌てた表情を浮かべ岩壁の方に視線を向ける。
「……っ!! ボスッ! 言ってる傍から奴ら、またこの集落に来たわ!」
「なんだと!!」
――カンカンカンカンッ!
エレナがそう言い放ってからすぐ集落内に甲高い音が鳴り響く。
すると、集落の高台に待機していた人が俺達に向かって大声で知らせてくる。
「ボス!!!! また魔物の奴らがこの集落に向かってきています!」
「……なんという事だ。客人もいると言うのに……」
俺はエアリアに視線を向けると、エアリアも俺の意図をくみ取ったのか元気よく頷く。
「エアリア、迎え撃つぞ!」
「はい!」
「……ふ、2人とも……手伝ってくれるのか!?」
スティングは驚きつつも尋ねてくる。
「はい! 俺達もこの集落を守る為に協力させて頂きます」
「助かる! ……エレナ、アモン達と共に魔物を討伐するんだ!」
「わかったわボス!」
エレナは俺達に視線を向ける。
「2人とも、ついてきて!」
「わかりました!」
「はい!」
エレナは走り出し、俺達は追いかけるように駆け出した。
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