第4話
気がつくと俺は椅子に固定されていた。
そして。
「気がついた?佐久間君」
「……なにやってるんだ?とゆうか、ここはどこだ?西宮」
俺が低い声で訊くとなにが面白かったかのかわからないが笑い、そして。
「佐久間君。あの女に誑かされたんだよね?だから私が救わないと。救ってあげないと。ね?」
光を失った目で俺を見ながら言う。
「まずは——そうだ!あの女の匂いを取らないとだね!冷たいけど我慢してね?風邪ひいても私が面倒見るから大丈夫だよ!あ、目と口は閉じてね?それ!」
なんかフローラルな香りが……。もしかして柔軟剤をかけたのか?!
「次は——お腹を殴らないとだね!痛いけど我慢してね?本当はしたくないんだけどね?あの女と同じことをしないと私の気がすまないの。ごめんね?後から私のこと好きなだけ思いっきり殴ってもいいからさ!」
「うっ!」
痛い。早宮は加減してくれてたのか?
「なんで他の女のことを思い出してんのかなぁぁぁぁ?!お仕置きだよ!もう一発!」
「おえっ」
苦しい!!呼吸できない。鳩尾に入ったか。
「ごめんね?でも、佐久間君が悪いんだよ?」
「な、なあ?」
「なに?」
「なんでこんなことするんだ?俺ら、付き合ってないだろ?」
俺がそう言うともう一発腹を殴られた。
痛い!苦しい!!呼吸ができない!!!
「付き合ってるでしょ?だって私に優しくしてくれたし!私のこと好きだから親切にしてくれたんだよね?私も好きだから付き合ってるよね?!」
……狂ってる。
「もういいや。ねえ?既成事実、作ろっか?安心してよ。お金だけは沢山あるからさ!子供できても大丈夫だよ?うん!絶対に!」
「……ふざけるな」
「ふざけてないよ?私は冷静だよ?好きな物を奪われないためにやるの。ね?ふざけてないでしょ?」
誰か……助けてくれ……。
そんなことを思っている間にも西宮は椅子の拘束を解いていく。
そして最後の拘束を外そうとした瞬間。
「警察だ!動くな!」
「佐久間!大丈夫か!?」
その言葉を聞いた途端、安心したのか俺は気を失った。
※※※※
俺が目を覚ますと早宮の顔が目の前にあった。
「なにしてるんだ?」
「こうすると早く目を覚ますってネットに書いてあったからな!」
自信満々に言うがそれ、多分嘘だぞ。
その後。早宮が看護師を呼びに行き、俺は退院となった。
そして帰り道。俺の右隣を早宮が歩く。
「そういえば佐久間。お前一人暮らしだったよな?」
「そうだね。それが?」
「西宮が警察にいるとはいえ、出所後また何か危害を加える可能性が非常に高い。だから私と一緒に暮らさないか?」
「いや、別にいいよ」
俺が断ると早宮は俺の前に立つ。
「佐久間。この前あんなことがあったんだからひとりで暮らすのは不安だろ?特に佐久間が住むアパートはセキュリティ対策が甘いんだから。それに比べて私の住むマンションは防犯対策がしっかりしてるから安心して暮らせるぞ?な?いいだろ?」
「でも、早宮の家族に迷惑が……」
「安心しろ!もう許可は取ってある!」
「……わかった。ならお世話になるよ。今週の土日に引っ越し作業をするから手伝ってくれると嬉しい」
「了解!あっ、引っ越しするまでの間、寝る時は通話しながら寝ること!なにかあったらダメだからな」
「わかった」
俺がそう言うと俺の右隣に戻り歩き始める。
〜side早宮奏〜
私は佐久間を送った後、マンションに急いで帰り、隠し部屋に行く。
そこには中学生の頃から隠し撮りした佐久間の写真が沢山貼られ、部屋の天井には佐久間のポスターが貼られている。
「えへへっ。これで邪魔者はいなくなって、晴れて佐久間は私のもの。一生離さない……。私の王子様♡」
「早く一緒に暮らしたいなぁ……。あっ、そうだ!慣れてもらうためお泊まり会でも開こう!そうしよう!」
私は私の王子様に『今日お泊まり会しない?』というメッセージを送り、電話をかけた——。
ヤンデレと隠れヤンデレ 猫と犬が好き @nikuoisi
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