第五話:バトル大好き! マジバトヘヴィ大暴れ!
キミをロックオン
「逃げましたわね」
「逃げたエルな」
突然やってきて引っかき回したかと思えば急にどこかへいってしまう。背丈のミニさ通り、
「あのヘヴィという子、気になりますわね」
アキュートも同意見らしい。喧嘩を売られたのもあるだろうが、なにより力を求めて勝負を仕掛ける行動自体が問題だ。ゾスの眷属と戦うという本分そっちのけで、無駄に内輪もめしている場合ではない。
まずはあの子がどこの誰で、なにを目的に
「手分けしてヘヴィを探しましょう。ああいう手合いはキチンと教育してさしあげないといけませんもの」
「そ、そうエルな」
アキュートの目が怖い。
これはガチで怒っている。本気で
それもそうだろう、散々悪口を言われたのだ。しかも貧乳とか背が高過ぎとかおぼこの高慢ちきとかまな板とか。体のコンプレックスからお嬢様いじりまで色々。同じくらい言い返していたが、それでも収まりがつかないらしい。
アキュートとヘヴィが出会えば大惨事、血祭りが開催されかねない。できる限りオレが先に見つけなくては。そして争いの火種を取り除かないと。
それが妖精としての、元一般男性がするべき役割のはず。多分ね。
※
結論から言うと、オレの方が早く発見した。
アキュートは北側、オレは南側と二手に分かれて周囲を探し始めたのだが、捜索開始してすぐヘヴィの姿が視界に飛び込んできた。まだ変身を解いておらず保護色とは真逆、派手な黄色なのでわかりやすい。小学生の通学用帽子みたいな効果だ。
オレは一定の距離を保ち、彼女に気付かれないよう尾行する。
ヘヴィはしきりに周囲をキョロキョロ。誰かが近くにいないかどうか、慎重に確認しながら裏路地の、更に人気のない場所へと歩いていく。
薄暗い場所だ。雑居ビルの間を貫く細い道は、室外機とゴミの山でむわっと不快感が催してくる。
年端もいかぬ少女がひとりでいるのはよろしくない。誰もがそう思うだろう。いくら彼女が
どこまで奥へ行くつもりなのだろうか。
すると、ヘヴィの体が音も立てず、曲がり角ですっと消えた。と同時に角の先から黄色い光が漏れ出してくる。
あの光は――変身解除の時に発生する光と同じ。
間違いない、ヘヴィが元の姿に戻ったのだ。
これは
ここはひとつ、ガツンと言って危機管理能力を高めてもらわないと。先程の戦いにおける、正義の味方にあるまじき態度の件も併せて叱らせてもらうからね。
「あれぇ、こんなところで奇遇ですね、妖精さん」
「うぉっ」
後をつけていたのに
曲がり角の先にいたのは、パーカーを羽織った金髪ツインテールの少女だ。はちきれんばかりの胸以外は幼児体型そのもの。
容姿、言動、共に一致。
彼女こそマジバトヘヴィの正体で間違いないだろう。
「き、奇遇……そ、そうエルな」
「嘘ばっかり。後をつけていたの、気付いてないと思ってましたぁ?」
「うっ、バレてたエルか」
細心の注意を払って尾行したつもりだったが甘かったようだ。
だが、取り返しはつく。重要なのは彼女が何者か知ること、そして
「まぁいいエル。実は君に話があって――」
「妖精さん、まいんと手を組みませんか!?」
オレの言葉を遮って、少女がずいと迫ってきた。ぶるんと豊満な胸元が目の前で揺れている。微かに甘い匂いもして
「手を組むって……」
思わずオウム返しだ。
仲間が欲しいのは同じらしいが、どうもニュアンスが引っ掛かる。語感のもたらすビジネスらしさのせいだろうか。
「そのまんまの意味ですよぉ。あの偉そうな先輩の元を離れて、まいんの仲間になりましょうってことです」
「えぇ……」
違和感の正体はすぐに判明した。
彼女がしたいのは引き抜き、またの名をヘッドハンティングだ。
正義の味方の娘とは思えないメンタリティである。頭を抱えたくなってきた。
「手を組むとかよりまず先にさ、君について教えてほしいんだけど、エル」
「まいんのことですかぁ? いいですよ、お話してあげますね」
マジバトヘヴィに変身する少女。彼女の名前は
身長は小学生並みだが、豊満な乳房は高校生かそれ以上。そのアンバランスさは俗に言うロリ巨乳。フィクションだけの、伝説上の存在かと思われた幻の逸材だ。しかも
と、胸の話はこの辺にしておいて。
更なる驚きをもたらしたのが、変身アイテムの入手経緯である。
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